セルフ・リライアンスという生き方

投資信託を中心にいい会社、いい事業にコツコツ長期投資。 社会とつながるソーシャルな投資や寄付も実践中。

新・贈与論-お金との付き合い方で社会が変わる(林 公則)【読了メモ】

林公則さんの「新・贈与論」。
ドイツの社会的金融機関、GLS銀行の取り組みを紹介しながら、お金との付き合い方、贈与の意味を問い直している本です。

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目次・構成はこちら → <新・贈与論>

GLSグループは、教育や環境、農業、福祉などの公益的な事業を、融資や出資、助成でサポートしている「社会的」な金融機関です。GLSはドイツ語で「貸すことと贈ることのための共同体」という意味。

公益性と透明性(預金者が融資する分野を選択、融資先も開示)に基づく運営は、普通の銀行と根本的に発想が違います。本書では、60年代のGLS信託財団の設立から始まり、有機農業や市民エネルギーファンドへの支援の取り組みが紹介されています。

一番印象的だったのは、GLSの理念のベースとなっている、思想家ルドルフ・シュタイナーのお金についての考え方。

シュタイナーによると、お金には「交換」「融資」「贈与」の3つの性質があります。
このうち、代償のない「贈与」は、受け手にとって経済的な制約がない分、教育や文化、芸術などの分野で自由な創造を生み、社会全体に新しい価値をもたらすと考えています。
※ここで言う「贈与」は、一切見返りのない寄付などです。おじいちゃんが孫にする贈与などとは意味合いが違います。

一方、「融資」(投資も含む)は、経済活動には不可欠であり、お金の増大という経済的リターンを生む一方、増えたお金が融資の領域に留まっている限り、「もっとお金を増やそう」という人間の利己心のループに陥り、実体と乖離して社会的なマイナスをもたらします(バブルやサブプライムがいい例)。

これを防ぐには、「融資」で増えたお金を「意図的に贈与」することで、経済的な価値を社会的・文化的な創造性や精神的な豊かさに転換することが必要だといいます。

つまり、無償の贈与は、お金や経済活動の無限な成長を追求する社会から、お金が健全に循環する社会にシフトするために大事な役割を担っています。自分も積極的に寄付しているので、その社会的な意味が確認できた気がしました。

以前聞いた枝廣淳子さんの「GDPの成長の追求から幸せの追求へ」という話や、国分寺で地域通貨にも関わっている、クルミドコーヒー影山知明さんの「ゆっくり、いそげ」と同じ文脈だと思います。意志あるお金の使い方、という意味では、河口真理子さんの「ソーシャルファイナンスの教科書」にも通じます。

最後に、日本の社会的金融として、自分も出資しているミュージックセキュリティーズ(セキュリテ)や、熊本のゆずり葉クラウドファンディングなどが紹介されています。

日本でも、格差の拡大や社会課題の多様化で、GLSのような社会的金融のニーズは確実に高まっています。日本版グラミン銀行をつくる動きもあります。形態は銀行ではなくても、市民が共感や連帯をベースにお金を出し合うファイナンスのかたちは増えていくと思っています。

ゆずり葉の代表・清水さんの言葉です。お金は、関わり方次第で「冷たいもの」「怖いもの」ではなく、人と人をつなげ、よりよい社会をつくるための「温かいもの」になります。

「自分たちの望む社会は自分たちでつくっていけるということを知ってほしいですね。自分のためではなく、誰かを喜ばせるお金の使い方を知ってほしい。誰かが喜ぶことで、心が温かくなる、そんなお金の使い方が日常になるといいですね。」