セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

鎌倉投信の第9回「結い2101」受益者総会(その2)

9/22に開催された、9回目の鎌倉投信の受益者総会。
前回記事の続き、その2は投資先企業よりコタの小田社長の講演の模様です。

<その1>⇒ こちら
・開会あいさつ(鎌倉投信・鎌田恭幸さん)
・結い2101 第9期 決算・運用報告
・基調講演(伊那食品工業 代表取締役副社長 塚越英弘さん)

<その2>⇒ 本記事
・”いい会社”の経営者講演(コタ 代表取締役社長 小田博英さん)
 パネルディスカッション

<その3>⇒ こちら
・これからの挑戦(前 鎌倉投信 資産運用部長 新井和宏さん・IKEUCHI ORGANIC 会長 池内計司さん・社長 阿部哲也さん)
・これからの鎌倉投信(鎌田さん)

「いい会社」の経営者講演・コタ 代表取締役社長 小田博英さん

投資先から、コタの小田社長が登壇されました。
コタは、1979年創業の京都の企業。美容室向けの高品質なシャンプー、トリートメント、ヘアカラーなどの専業メーカーで、美容室へのコンサルティングも行っています。
創業精神は「美容業界の近代化」。基本理念は「いい会社を目指し続ける」です。

美容室向け頭髪用化粧品製造販売を行っているコタ。
この会社の特徴は、何といっても取引先である美容室がうまく経営をしてくれることが売り上げにつながるとして、取引先を大切にし、しかも美容室経営のコンサルティングも手掛けていることです。美容室の意見をすぐに取り入れられる製販一貫体制も魅力の一つです。そんな、いい会社を目指し続けるコタを応援していきたいです。

鎌倉投信(THE COMPANY FINDER より)

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社長になるまで・鎌倉投信との出会い

・小田現社長のお父さんがコタを創業したのは、(小田社長が)大学生の時。新卒でコタに入社するつもりだったのに、大学4年の9月に先代から「お前は入社させない、別のところに行け」と言われ、急遽就職活動をして別の会社(サクラクレパス)に入社した。

・社会人になって数年後の昭和59年にコタに入社。27歳で名古屋営業所の初代所長を命じられた。名古屋のことは全く知らず、一番商売が難しい土地とも聞いていた。会社にとって、代理店販売から初めて直販に乗り出すとても大事な仕事だったが、「初めてやる仕事に難しいも簡単もない」と開き直って引き受けた。名古屋所長の3年間は休みなしで働いたが、なんとか実績を上げることもできた。
その後、いくつかの部門を経験し、44歳の時、平成16年に社長に就任。

・鎌倉投信との出会いは、コタも理念に掲げている「いい会社」という言葉にひかれたのがきっかけ。IRを通じて知り、鎌倉の本社に訪問した。機関投資家や投信会社というと、丸の内の立派なビルにオフィスを構えているのが普通なのに、迷ってたどり着けないような本当に鎌倉の古民家でびっくりした

・鎌倉で面談した新井さんは「数字のことは資料を見れば分かるので大丈夫です。」と、業績のことは一切訊こうとしなかった。訊かれたのは「社長にとって「いい会社」とはどんな会社ですか?」という問い。その後、新井さんが京都の工場を訪問し、投資してもらうことになった。

・社長就任時に考えたのは、会社は会社を取り巻く多くの人と「共有」するほど強くなるということ。共有しようと思ったのは「いい会社」という言葉。
従業員、取引先、投資家・・・誰も「いい会社」を否定する人はいないはず。だから社長になって以来「いい会社を目指し続ける」と発信し続けた。

・すると、社内から「いい会社って何?」という疑問の声が上がってきた。
いい会社とは、例えば、お客様が会社に訪問され、いろんな社員と接して帰るときに「いい会社だ」と思ってくれる会社であること。そして、「いい会社になるには?」と社員みんなが問い続けることが大切。

・「いい会社を目指す」という考え方は社内で共有されていると思っている。社員はみんなコタが大好きなので、あちことでコタのことを話してくれている。

「変えない経営」

・以前、機関投資家向け説明会で、「もっとどうやって儲けるかという話をしろ」とあるアナリストにクレームをつけられた。おそらく、株価が何倍にもなるような儲かる新規事業を考えろ、ということだと思う。コタは、そういう投資家から見たら面白い会社ではない。

・一方で、交流のある米国在住のファンドマネージャー、大竹愼一さんはこう言ってくれた。

化ける会社ばかり狙っている投資家はそのうち消える。そういう投資家の言う通りにして失敗した経営者はたくさんいる。」
「自分は、コタさんが”変わっていないこと”を確認するために、社長に会いに来ている。

・新しいことやヒット商品を狙うことばかりが経営ではない。「変わらない」経営もあっていい。今のやり方が間違っていないなら、他社に引っ張られず、それをとことん研ぎ澄ませばいい、と大竹さんの言葉を通して気づいた。コタは今までどおり、変わらずに着実な経営をやっていく。

・「共有」を進めるためのコタ独自の取り組みに「社内IR」がある。機関投資家向けのIRと同じ内容を従業員向けにやるもの。社員は、自分の会社のことは分かっているようで実はきちんと分かっていない。社内IRを通じて、コタのこと、自分たちの商品の強み、各部門の役割を社員自身が再認識することができている。実際に社内IRを初めてから業績も上がった。

・コタの価値の判断基準は「損得」ではなく「善悪」。損得を基準すると目先は得でも将来的にはどうなるか分からない。分からないことを判断の基準にはしない。

・過去に、容器の成分表示が一文字抜けているのにあるパート社員が気づいて商品回収に至った事案がある。品質自体には問題なく、気づかなければそれで済んだかもしれない。しかし、こういう小さい事象をスルーした積み重ねが大きな問題につながるので、気づいてくれたことを評価する姿勢が大切。

小田社長の話はユーモアが多く面白かったです。新卒社員さんも登壇し、風通しのよさを感じました。

最後に、「みんなコタが染みついているから、課長以上なら誰でも自分の代わりはできる」と言われました。これはすごい言葉だと思いました。

来場者にプレゼントされたシャンプーとトリートメント。

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この後、塚越さん、小田さん、鎌田さんのパネルディスカッションでした。
特に印象に残った言葉です。

(鎌倉投信・鎌田さん)
「両社の共通点は、社員を大事にするだけでなく、取引先との関係を大事にしていること。」

(伊那食品・塚越副社長)
「伊那食品は『忘己利他』の精神。自分を犠牲にする滅私奉公ではない。利他は結果として自分に返ってくる。」

(コタ・小田社長)
「いい会社には到達点はない。どこまでやっても上はある。だからいい会社であり続ける。」

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パート2はここまでです。

最後のパート記事はこちら。

鎌倉投信の第9回「結い2101」受益者総会(その3)