5月に開催されたひふみ投信の2018年半期運用報告会(2017/10~2018/4)。
レオスの成長を象徴するかのように、全国のイオンシネマで中継されて話題でした。参加できなかったのですが、遅ればせながら動画でチェックしました。
2017年2月の「カンブリア宮殿」でレオスと藤野英人さんが特集されて以降、ひふみ投信と、特にひふみプラスの資産残高が急激に伸び、新規の受益者も大幅に増えたので、今回も、レオスの運用の考え方をしっかり伝える姿勢が感じられました。
※以下、数字は2018年4月末までの半期のものです。ご注意ください。
投資環境(2017/10~2018/4)
・半期のリターンは+13.1%。同期間のTOPIX配当込(+7.3%)を大きく上回る。
・前半(10~12月)は衆院選後の大型株主導の相場に当初は置いていかれたが、上げ一服後はTOPIXを上回った。
・後半(1~3月)は適温相場の終了&米長期金利上昇懸念から、ボラティリティが上昇しマーケットも急落。全て売り込まれる局面では、ひふみもマーケット同様に下がるが、下げが落ち着いた後の回復局面ではひふみは強い。銘柄選択効果が発揮され、マーケットを上回る上昇。
→ ひふみ投信「らしさ」が現れた半年でした。特に、年明け以降の急落後の回復の強さが好パフォーマンスの主な要因です。
・ひふみの基準価額が1日に5%以上落ちたのは設定来約10年で11回。大きな下落は十分起きうると同時に、逆にそれほど起こらないということも知ってもらいたい。そして、急落時は売らない方がいいというのが過去の経験からは分かる。
→ 投資経験の浅い人も念頭に、ひふみ投信のリスクの度合いや、急落時の心構えについて分かりやすく伝えていた印象です。
・保有銘柄分類の4象限
ひふみでは、投資対象企業群を「グロース/バリュー」、「外需/内需」の軸で4つにグルーピングし、景気とマーケット動向にあわせてバランスを変えている。個別企業の選定だけでなく、この比率がリターンに大きく影響するのでとても大事な考え方。
例)世界の景気が悪いときは「内需・グロース」を高め、景気が改善してきたら「外需・グロース」を高める。マーケット全体が厳しい局面ではバリューの比率を高める。
※ひふみ投信の基本は成長企業への投資(グロース)です。
(参考)2017年9月末(45,533円)→ 2018年4月末(51,509円)の+5,976円の基準価額上昇のうち、内需・グロースが+3,888円と最も寄与。
→ ひふみ投信は銘柄選びがうまいと評価されますが、実際には、個別企業の評価だけでなく、外部環境に合わせた柔軟なポートフォリオマネジメントに長けたファンドです(現金比率や大・中・小型株比率のコントロールも)。
それが言い換えればシャープレシオを高める=「守りながらふやす」運用です。
パフォーマンス寄与企業
半期のリターンにポジティブ、ネガティブに寄与した上位、下位企業が紹介されました。上位は共立メンテナンス、Amazon、東京センチュリーなど。下位は日本ケミコン、スミダコーポレーション、ジャフコなど。
ただし、どういう企業が上位で、どういう企業が下位だったかはあまり重要ではありません。
運用部の渡邉さん、栗岡さんの大事な発言をメモしておきます。
・ひふみ投信は、例えば「AIが伸びそうだから関連企業を買おう!」という仮説に基づいてではなく、たくさんの会社を訪問し、足で稼いだ生の情報に基づいて見つけたいい会社に投資する。
・短期的な値動きに左右されず、企業をしっかりみて、人間の成長に投資する。
・株価は結果にすぎない。半期の業績や株価が悪かったからすぐ売る、という行動は取らない。会社と経営者の方向性に賛同できれば、株価が下がっても投資を続ける。
今後の運用方針
藤野さんより当面の着眼点と、ひふみ投信の企業選び(これはずっと変わっていません)について再確認。
・投資ポイント
- 人手不足は今後も続く。人を採用できる会社か、長く勤めてもらえる会社かどうか。工夫して生産性を上げられる会社かどうか。
- 通信業界における4Gから5Gへの移行による建設・工事関連需要。すでにかなり投資している。
- 海外の成長企業に対する投資は今後も増やしていく。成長性、経営者・人材の質が高いため。また、外国企業の調査を通じて日本企業の強みも再発見できる。
・コンスタントな収益
株価=EPS × PER。「安定的に利益が出ていること」が一番大事。増収増益続きの会社と減収減益の会社であれば前者の方が今後も利益が出る確率が明らかに高い。
さらに実際に訪問し、経営者と会社をしっかり見て、成長している理由を確認した上で投資する。
・経営者に成長へのインセンティブがあるか
サラリーマン社長の会社と創業経営者がいる会社では、業績も株価も明らかに後者が優る。サラリーマン社長は社長になったことが成功。創業経営者とは、会社を成長させようという動機づけが全く異なる。経営者の株式保有割合が高い場合と低い場合も同様で、株価のパフォーマンスの差は歴然としている。必死に成長しようとする人に投資をする。
・運用残高が増えて運用はどうなる?
過去の実績を見ると、運用残高とパフォーマンスには相関がほとんどない。なぜなら、設定時(1.5億円)から今まで、ずっと同じやり方を続けているから。
また、大型株の割合が増えたのは運用残高が増えたからではない。中小型株が上げ過ぎているためウェイトを減らし「成長している」(サラリーマン社長ではない)大型株に資金を移したため。
→ ファンド規模が大きくなりすぎでは?とよく言われます。最新の月次レポートでは、船の舵にたとえて、船が大きくなれば舵を切ってから方向転換までに小さい船よりも時間がかかる=機動力は弱まる一方で、個別銘柄の株価変動の影響低減や、情報収集面での規模のメリットもあるとのことです。
また、6月末時点のひふみ投信マザーファンドのアクティブシェア(TOPIXとの差異の度合)は90.3%と非常に高いです。よく、規模が大きくなるとインデックスに近づくという短絡的な指摘がありますが、ひふみには当てはまりません。
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規模が急拡大して運用の質が変わった、受益者の質が変わった・・などいろんな意見があります。確かに、昨年以降、結構な規模の投信1つ分ぐらいのお金が毎月入ってきているので、運用の仕方はいろいろ工夫が必要でしょうが、レオスとひふみ投信の根っこの部分は全く変わっていないと思います。
過去に一度ひふみプラスを売却してブランクがあったので、個人ポートフォリオの中でのひふみ投信の保有比率は低めですが、従来通り毎月積立をしていきます。
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