セルフ・リライアンスという生き方

自分も社会も豊かにできるお金の使い方について。日々の投資や寄付の記録を綴ります。

鑑定士向けにちょうどいい不動産ファンドの解説本

REITや私募ファンドの組入不動産(証券化対象不動産)の鑑定評価は、不動産ファンドビジネスが普及した今でこそ多くの不動産鑑定士が通る道ですが、最初は誰もが苦労します。

それは、証券化の評価は、不動産や鑑定評価そのもののノウハウだけではなく、全く別の(金融サイドの)最低限の知識が必要になるからだと思います。

私も、実務修行時代(3次試験受験前)の事務所では、証券化関係の仕事が主だったのですが、依頼者であるAM会社やレンダーから、「YK-TK」(今であれば「GK-TK」)、「MLPM」「クローズ」「CMBS」「メザニン」「リファイ」・・・といった言葉がどんどん出てくるので、最初は全く意味不明でした。

本書は、タイトル、表紙だけ見ると超簡単な素人向けですが、中身は意外に実務色が濃く、不動産ファンドの仕組みが、業界サイドの立場からかなり具体的にまとめられています。

ある不動産が証券化されるまでのプロセスと、依頼者サイドである当事者(投資家、AM、レンダー、信託など)がどのように関わるのかイメージしやすく、あまり証券化に触れたことのない鑑定士向けには、ちょうどいいレベルだと思います。

また、アクイジション(DD、ドキュメン、クローズ)から、期中の運営、ディスポジションに至る一連のAMの仕事の流れの解説に結構ページを割いているので、鑑定発注者サイドの気持ちが多少なりとも分かります。 (依頼者の仕事の内容を理解するのも資格商売としては大事です)

依頼者から意味不明なカタカナ言葉が連発されたとしても、まずは本書で対応できるでしょう。

「証券化」「ファンド」関係の書籍というと、どうしても金融よりの専門実務書になってしまい、不動産のみに特化したとっつきやすい本はほとんどありません。

10年前に同じような本があればよかったな・・・と感じます。 (その頃はまだ金商法施行前で、不動産証券化自体が今ほどこなれていなかった面もありますが)

特に、金融商品取引法の施行以降は、鑑定評価基準も改正され、対象不動産がどのようなストラクチャーの中で証券化されるのか、依頼者がスキームの中のどういう立場なのか確認することが義務化され、分かったフリで「何となくこんな感じかな」と評価書に記載するのはNGとなりました。

そのような実務面の要請から考えても、この本のレベルを一通り知っておくことは鑑定士としては大事ではないでしょうか。 2010年9月の第2版では、金商法の関係もカバーされていますのでおススメです。