最近はどの士業も、競争激化で顧問料のダンピングが進んでいるとメディアでよく取り上げられます。
典型的なのは税理士ですが、文系の最高峰資格である弁護士にもこの影響は及んでいるようです。
なぜこう感じるかというと、GoogleやFacebookなどで、安さを前面に出した弁護士事務所の広告を最近よく目にするからです。
試しに「弁護士 顧問料」で検索してみました。例えばこんな業者がヒットします。
・月額3980円の新顧問弁護士サービス「リーガルプロテクト」
・顧問料1万の顧問弁護士無料紹介 | L.A.P.中小企業顧問弁護士の会
かつては、日弁連が定めた月5万円という顧問料の下限があったのですが、平成16年に自由化されたとのこと。
上のリーガルプロテクトは別途時間課金(10分1,620円)、1万円のLAPは、2時間以上の相談で別途課金だそうですが、それにしても安いです。よくこんな料金でできるなあ、と思います。
こういったサービスが増えてきているのは、このような事務所や紹介サービスにぶら下がっている弁護士がたくさんいることを意味します。仕事や就職先がなければ、背に腹は変えられないということなのでしょう。
弁護士の顧問料も、需要と供給の自由競争で決まるべきですし、これらのサービスが、安い上に弁護士のレベルも相応であれば素晴らしいです。
しかし、もし、価格の安さだけで勝負しようとしているのであれば、短期的には売上が上がったり、規模が拡大することがあったとしても、長期的な事業の継続性や安定性という点では難しいのかな、と思います。
士業は労働集約型のサービス業なので、人件費が全てです。
値段を格安にするためには、結局安く人を使うしかなく、市場原理からいえば結果的にサービス品質は低下します。
しかも、Webなどの広告料をたくさん使っているので、実際の弁護士報酬に回される金額はいっそう低くなるはずです。
私の属する不動産鑑定業界でも、「安く早く大量処理」をうたっている事務所は、業界内では「安かろう悪かろう」というイメージが定着していますし、顧客側も、ある程度品質を犠牲にして(品質の低さを分かった上で)発注している場合も多々あります。
(安さを売りにしている某鑑定事務所の鑑定評価書が、その事務所名だけで税務署に否認されたという笑えない噂話もあります)
もちろん、このような価格設定をしているのは、既存顧客基盤のない新規参入組を中心とした一部の事務所にすぎません。しかし、じわじわと、でも着実に、業界全体の地盤沈下につながっていくと思います。
安い価格で他社から顧客を奪えているように見えて、最終的には自分の首を絞めることになるのではないでしょうか。