セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

時価総額10兆円を超えたJ-REIT

J-REITの時価総額が、先月末に10兆円を超えたそうです。

Jリート時価総額10兆円到達について(PDF)

(不動産証券化協会、H26.11.28リリース)

2001年9月に2投資法人、時価総額約2,600億円で始まったJリート市場は、リーマン・ショック等の困難な局面を乗り越え、累計で1.9兆円を超える分配を安定的に行い、48投資法人、時価総額10兆285億円(11月28日終値)の市場へと成長を遂げました。

ミニバブル崩壊時には、時価は大きく減少しましたが、ここ数年の新規参入と投資口価格の上昇もあり、10兆円の節目を迎えました。

個人としては、仕事の方でも、投資家としても、REITとは長く付き合ってきました。REIT草創期から個別銘柄に投資していましたし、鑑定業界に転職してからは、REIT取得物件の評価の仕事もしました。自分が付けた価格が、プレスリリースや有報に載るのは最初はドキドキでした。

その頃はまさに不動産流動化・証券化の拡大期で、REITやファンドからの仕事でとにかく忙しかったです。

その後、REITのスポンサーもやっている某不動産ファンド会社に転職し、実際にオフィスビルや賃貸マンションなどREIT組入物件の取得や運用をやりました。

外部で評価しているだけでは分からない、売買当事者やアセットマネージャーの涙ぐましい努力を知りました。

リーマンショック後は、保有していたニューシティレジデンスが潰れたり、多くの銘柄が塩漬けになったりと苦い思い出もあります。(この辺りから投資家としてはセンスがないことをようやく自覚しました。。)

ここ数年は、個別REITへの投資はしていませんが、不動産鑑定士としては、評価とは別の業務で、REITの資産運用会社とも仕事上のお付合いがあります。

振り返ると、一念発起して鑑定士試験の勉強をして、異業種から転職したのが2002年ですので、自分の鑑定士としての仕事人生は、ある意味REITの歴史と重なる感じもあり、時価総額10兆円というのは感慨深いです。

日本のREITはまだ、東証1部の時価総額の1.5%程度と、株式市場と比べれば市場規模が小さく、投資対象としては発展途上だという声もありますが、自分から見るとわずか10年ちょっとでここまで大きくなるとは思いませんでした。

投資対象用途も、当初はほぼオフィスビルと賃貸マンションのみでしたが、商業施設、物流倉庫、ホテル、底地、最近はヘルスケア(老人ホーム等)にまで多様化しました。

今では、大都市のオフィス街の大きな交差点であたりを見渡せば、REIT所有のオフィスビルが1棟は見つかるといった感じですし、賃貸マンションも膨大な数が組み入れられています。都市部だけでなく、地方のショッピングセンターなども結構REITに入っています。

不動産としての見た目は何も変わらないので、なかなか変化には気づきませんが、このように、この10数年でREITは私たちの身近な存在になりました。自分の働いている会社のビルのオーナーが実はREIT、という人も、特に東京ではかなりいるはずです。

2006年頃からリーマンショック前後までのミニバブルは、REITに代表される不動産の金融商品化(証券化)が一因となったという指摘もありますし、REITの功罪についてはいろいろ議論がされてきました。

スポンサーとの利益相反など、スキーム自体が抱える問題点も100%解決しているとはいえません。

しかし、数十億、数百億クラスの一等地のグレードの高い物件に、維持管理の手間もなく、一般の人が少額から分散投資できる道を開いたREITという仕組みは、個人の運用の選択肢の一つとしてとても意義があると思います。

また、デベロッパー・ビルオーナー→私募ファンド→REITという収益不動産の物件流通の大きな流れから見ても、最後の買い手であるREITの成長は日本の不動産価格の安定にとって大事です。

とはいっても、アメリカに比べたらまだまだ日本のREITは小さいです。今後も、前回のミニバブルのような危機が何度も訪れるかもしれません。そのような局面も乗り切って、市場としてより成熟していってくれればと思います。

こちらで時価総額の推移が見られます。

不動産証券化協会 -ARES- J-REIT View>J-REIT市場の概況