海外ETFを使った投資一任運用サービス「ETFラップ」を手がける、株式会社お金のデザインのセミナーに参加しました。
第三回資産運用セミナー~米国に学ぶ投資一任運用の最前線~
テーマは「米国に学ぶ投資一任運用の最前線」。
宣伝のための無料セミナーでしたが、内藤忍さん、和泉昭子さん、竹川美奈子さん、カン・チュンドさんなど豪華な登壇者でした。
全体的に、インデックスファンドやETFの知識がある人にはしっくりくる内容だったと思います。
パネリストも内容も短い時間に盛り込み過ぎの感はありましたが。。
セミナーの内容を前半に、「ETFラップ」のサービスそのものについては後半で書きます。
●プレゼンテーション:「任せる運用の必要性」
【廣瀬朋由氏(株式会社お金のデザイン代表取締役)】
・米国では、全世帯の1/4にあたる400万世帯が、外部の専門家に運用を任せている。
・円安、低成長、財政、年金というリスク要因を考えると、日本以外への投資が重要。具体的な手段は保有コストが安く(平均0.25%)、投信と違って購入時手数料も不要なETFがベストと考える。
・ただし、海外ETFは5,000銘柄以上あり、忙しい現役世代が自分で選ぶのは大変。ここを担うのが「お金のデザイン」社。
●パネルディスカッション:「任せる運用とファイナンシャルプランナーの日本における相互の活用~米国に学ぶ成功事例~」
内藤忍氏を進行役に、海外での「任せる運用」の現状と、外部専門家たるFPの役割についてのディスカッション。
【参加者:内藤忍氏、FP和泉昭子氏、ブラックロック・ジャパン渡邊雅史氏、京大加藤康之教授】
<ブラックロック渡邉さん>
・個人投資家に対する金融商品の販売形態は日本と欧米で異なる。
日本は販売手数料(コミッション)ベースの「非フィー型」なのに対して、アメリカや最近のイギリスなどは、資産残高応じて運用報酬をもらう「フィー型」。フィー型の国の方が、ETFのような低コスト商品が普及している。
・フィー型の場合、残高が増えれば業者の報酬も増えるので、顧客の資産を育てるインセンティブが働く。一方、日本はコミッション主体なので、投信の回転売買のようなことが起こる。
・米国では、顧客がETFを自由に組み合わせてポートフォリオを作るサービス(ETFマネージドポートフォリオ)の残高が、ファンドオブファンズよりも大きく伸びている。
投信主体の日本が今後どうなるのか、既存の証券会社、IFA、FP、銀行などのどんなプレイヤーが個人向けのアドバイザーの立場を担うのか注目される。
<和泉昭子さん>
・最近は金融庁の規制強化もあって、FPが、運用についての具体的な助言をどこまで行うかは(金商法上の投資助言・代理業との関係で)難しい問題。
・FPの役割は、運用だけでなく、保険、不動産、相続などマネー全体を包括的に、生涯にわたってアドバイスすることなので、運用の部分は、例えばETFラップのようなサービスを顧客に提案するのも一つの考え方。
・運用というと、リスク資産のアセットアロケーションにばかり目がいきがちだが、実は無リスク資産とリスク資産の配分をどうするかもとても大事。FPはこの分野でも役割を発揮できるはず。
内藤さんは、久々に生で見ました。
のっけから「資産には大きく金融資産と実物資産の2つがある」と飛ばし気味でしたが、個人向けイベントでの場慣れ感はさすがで、主催者のサービスの宣伝も盛り込みつつ、短時間で参加者の発言をまとめるあたりは上手でした。
最近は、“海外不動産”と“ワイン”の人になっていますが、金融資産については昔と同様、「インデックス運用だけでよい、アクティブ運用はやってはダメ」と断言していました。
(あくまで、「実物資産」=「不動産・コモディティー」にもお金を配分しそちらはアクティブにやる、という文脈の中での話です。)
●パネルディスカッション:「長期分散投資の必要性」
竹川さん、カンさんなどお馴染みのメンバーが、長期分散投資の大切さと心がまえについてコメント。
【参加者:北澤直氏(お金のデザインCOO)、竹川美奈子氏、カン・チュンド氏、小松原宰明氏(イボットソン・アソシエイツ・ジャパン)、佐々木康平氏(三菱UFJ投信)】
<小松原宰明さん>
・かつては、「インフレ<預金<債券<株式」という式が当てはまっていた。預金だけでもそこそこインフレヘッジになっていた。
しかし、最近のデータを見ると、「預金<債券<インフレ<株式」となりつつある。
・タイミング投資は長期的に見ると定期預金よりもパフォーマンスが悪いというデータもある。市場に居続けることが大切。
<カン・チュンドさん>
・恋愛はひとりにしぼらないといけない。しかし、投資は恋愛とは違って、好きでないモノも入れないといけない。二股、三股しないといけない。
・投資はリターンではなくリスクから考えること。
自分のセミナーでは、「リスク許容度」ではなく「損失許容額」という言葉を使っている。個人の心理的な側面と、収入、家族構成、負債の状況、といった経済的側面の両方から、どのくらいの損失を負担できるのか考えていく。
・リバランスは言うのはたやすいが、人間の感情と逆の行動(上がっているものを売り、下がっているものを買う)なので、実行しようとすると意外に難しい。
<竹川美奈子さん>
・リターンから考えると、どんどんハイリスクになりがち。どこまで資産が減っても安心していられるか?という観点でポートフォリオを考える。
・個々のパーツ(商品)を自分で組み合わせて、メンテし続けるのは時間も手間もかかる。
自分でルール化、システム化するか、無理なら多少コストがかかってもバランスファンドを利用したり、今回のETFラップのように他人に任せる、という方法もある。
・市場に居続けるために、続けられないようなベストな運用方法よりも、続けられるベターな運用方法を選ぶことが重要。
みなさん「市場に居続けること」の重要性を強調していました。自分は一度市場から離れてしまったので、耳が痛かったです。
それと、いつもながらカンさんの喩えが冴えていました。
小松原さんは、長期分散投資の有用性に関するデータをたくさん紹介していましたが、なんせ時間が足りなかったです。
なお、最後の質疑応答で、「ETFラップサービスのアルゴリズム(デジタルアナライザー)のベースとなっている『ポートフォリオ理論』は本当に正しいのか?」という根本的な質問がありました。
これに対して、デジタルアナライザーの監修に携わっている、京大の加藤教授の回答です。
当たり前ですが重要だと思いました。
・ポートフォリオ理論は、数学的(理論的)には正しいが、例えば『株式のリターンは正規分布に従う』といったような、たくさんの前提条件の上で初めて成り立つ。
・リーマン・ショック後に、ポートフォリオ理論に基づいて開発された商品が次々破綻したことからも分かるように、現実の市場にそのまま当てはまるものではない。今でも精緻化に向けた取り組みが行われている。
セミナーの内容は以上です。
長期分散投資に関する内容自体は真新しいものではなかったですが、海外(アメリカ、イギリスなど)と、日本の運用環境の違いは参考になりました。
「ETFラップ」の具体的なサービス内容については、今回はそれほど詳しい説明がありませんでした。
現在は、セミナー参加者を中心にクローズドに募集されていますが、サイトの内容と今回の資料、概略説明で分かったことを別記事で書きます。
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「お金のデザイン」社主催の資産運用セミナー(その2)