セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

「第3回 日経ソーシャルイニシアチブ大賞」表彰式&シンポジウムに行ってきました

5/28に、日経新聞主催の「日経ソーシャルイニシアチブ大賞」の表彰式イベントに行ってきました。
ソーシャルビジネスに取り組む優れたNPO法人や企業を選定するもので、今回で3回目です。

日経ソーシャルイニシアチブ大賞

「社会的リターン」と「経済的リターン」の関係というテーマに関心があり、イベントの副題が「社会的投資」ということもあって行ってきました。



2部構成で、前半は「ソーシャルビジネスを支える社会的投資の最前線」とのテーマでパネルディスカッションでした。

パネリストは以下の方々。
・功能 聡子さん(ARUN合同会社 代表)
・山岸 広太郎さん(グリー株式会社 取締役副会長)
・鵜尾 雅隆さん(NPO法人日本ファンドレイジング協会 代表理事)
・河口 真理子さん(大和総研主席研究員)<進行>

議論の方向性は、自分の今の意識とオーバーラップする部分が多く、うなずきながら聞いていました。
「社会的投資」のフレームワークと、課題がよく整理されていました。

特に、冒頭の河口さんのプレゼンは分かりやすかったです。

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ためる(預金)、投資、寄付は全て「必要なところにお金を融通する」という意味で同じ金融(ファイナンス)。(=自分のかわりにお金に社会で働いてもらう)

・この3つの金融の中で、投資は「社会のため」であると同時に、寄付と違って「自分のため」でもある(自分に返ってくる)。
さらに、投資は預金と違って「自分で相手を選べる」
つまり「投資」とは、「自分のため」であり「社会のため」でもあり「自分で選べる」ファイナンスと定義できる。

・ビジネスへの投資でも、収益性だけではなく社会性が求められるようになりつつある。逆に、NPOなど非営利セクターへの寄付でも、具体的な成果やインパクトが求められてきている。

その理由は、「持続可能な社会」を実現するには、収益性と社会性の両立が必要だから。この両者(収益性と社会性)の交わるところが『社会的投資』といえる。
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以上の河口さんの基調プレゼンをもとに、各パネリストから発言がありました。
いくつかメモ。

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・少子高齢化と税収減の中で、社会的課題を行政だけで全て解決するのは不可能
また、一つの組織、団体では解決できない課題が増えている。
だからこそ、NPOなど、行政でも企業でもないソーシャルセクターの役割は大きい。

・日本のソーシャルセクターでも優秀な人材が増えてきたが、資金面の問題から継続できない団体も多い。
休眠口座の活用や、社会投資減税、社会投資市場(JASDAQのような上場取引所)の創設など、制度面の整備を考えるべきステージにきている。

・グローバルな国際協力の分野でも、マイクロファイナンスに代表されるように、単なる「援助」から「投資」・「ビジネス」への流れが大きくなっている。

・「社会的投資」が「寄付」と根本的に違うのは、相手との関係。
寄付はあげたらおしまいの一方的な関係だが、投資は、投資家と投資先のいい意味での緊張関係、対等なパートナーシップがある。
また、もらいっぱなしではなく、投資はリターンを求めるので、受ける側(途上国の企業家など)の自立性が高まり、本来の能力を発揮できる。

・企業にとっても、株主への還元と社会的活動は短期的にはトレードオフであっても、長期的には社会的な投資が企業価値を高めるとの考え方が広まりつつある
機関投資家にも”Patient Capital”の思想が少しずつ生まれている。
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寄付も大事ですが、相手の自立を促し社会的により大きなインパクトを生み出すためには、個人から機関投資家まで幅広い層で、資金的にボリュームも大きい「投資家」が果たすべき役割は大きいです。




後半は、「ソーシャルイニシアチブ大賞」の各部門の表彰と受賞団体・企業のスピーチでした。

主催者もスポンサーも大企業なだけあって、竹下景子さん(特別賞)や、ゲストで黒木瞳さんが登場したり、演出も凝っていて力の入った表彰式でした。

受賞者の顔ぶれ、事業のあらましは以下です。
第3回 ファイナリスト・受賞結果|日経ソーシャルイニシアチブ大賞

大賞は、アフリカのガーナで「KOKO Plus」という離乳児向けのサプリメントを開発、販売した、味の素とケア・インターナショナル、プラン・ジャパンの共同事業「ガーナ栄養改善プロジェクト」が受賞しました。

その他、国内外で活動するさまざまなNPO法人や企業が登場しました。

「お金の地産地消」を掲げるNPOバンク「コミュニティ・ユース・バンクmomo」(国内部門賞)、
カンボジアなどの企業家に投資を行っている「ARUN」(国際部門賞)、
以前「コモンズ社会起業家フォーラム」でも話を聴いた、シェアサイクル事業などでホームレスの人たちの就労支援をしている「NPO法人Homedoor」の川口加奈さんも登壇しました。

こういうイベントでいつも思うのは、短い時間でも聴取に訴えかけるみなさんの言葉の力と意志の強さですね。日経の演出もあって心打たれる場面もいくつかありました。

受賞をきっかけに、メディア露出が大幅に増え、活動が軌道に乗る団体も多いそうです。
第1回、第2回の受賞団体も、今となっては有名なところが多いですね。

「社会的投資」なんてマイナーなテーマかと思いつつ、日経ホールは600人(関係者席も多かったですが)満席でした。

私が少しですが投資している鎌倉投信(結い2101)なども、投資信託という形態をとった広い意味での社会的投資の一つだと思います。

本イベントの翌日、翌々日には、G8社会的インパクト投資タスクフォースによる「社会的インパクト投資シンポジウム」が東証で開催されました。
日本国内でも、寄付や支援とは異なる「社会的投資」の受け皿が増えていく方向にはあると思います。