前回の記事の続きです。
「朝日ライフ SRI社会貢献ファンド」は、2000年9月に設定された公募投信で、SRIファンドの中では古株です。
(運用会社HP)
朝日ライフ SRI 社会貢献ファンド(愛称:あすのはね)|ファンド情報|朝日ライフ アセットマネジメント株式会社
運用理念・方針
運用報告書から抜粋します。
○ビジネスを通じて社会的課題に取り組み、社会に貢献する企業の株式に投資
○中長期的な視点から、財務的要素に加えて、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)といった非財務的要素を統合した分析を行い、企業の本質的価値とサステナビリティを見極める
○銘柄を厳選し、安い株価で集中度を高めて買い、企業価値の成熟と株価の上昇を狙う
社会的課題に積極的に取り組んでいる企業を、割安な局面で買ってじっくり値上がりを待つ運用です。
企業の持続可能性ということを明記しているほか、企業と投資家が同じベクトルを向いているかというガバナンスの視点も重視しています。
同じ朝日ライフの私募投信(「社会貢献ファンド」)を組み入れている「ありがとう投信」の組入ファンド紹介ページで、朝日ライフの速水禎さんが次のように説明しています(2012年当時)。
ポイントは次のとおりです。
・社会的課題を「本業」を通じて解決できる企業が持続的に成長する。
・「株価」ではなく企業の「価値」=将来の収益性を買う。
・将来の収益性は「事業の魅力度」×「業界内での競争優位性」で決まる。
・環境配慮、地域との共生、従業員のモチベーション向上などの社会的な要素から、価値をシビアに見極める。
「社会貢献」という名前が付いてますが、月次レポートなどから新規組入企業の組入理由を見る限り、それほど社会性に偏っているわけではなく、投資先選定にあたって、その企業のESG要素をしっかり分析するというイメージだと思います。
(目論見書より、クリックで拡大)
銘柄選定プロセスでは、SRI専門調査機関であるヴィジオ・ベルギーによる「社会貢献度調査」も参考にして、投資先を絞り込み、さらに割安と判断した銘柄を組み入れます。
社会貢献度調査では、環境、雇用、顧客対応、市民社会貢献、企業倫理・法令順守などの要素を、各ステークホルダーの視点で分析します。CSR活動にかけたコストなど企業側の都合でなく、各ステークホルダーから実際にどう評価されているのか、という視点は大事だと思います。
ポートフォリオ
7月末時点の組入銘柄は33銘柄です。
特に何銘柄ぐらいに絞ると明記はしていないようですが、最近は30~50銘柄程度のようです。
7月末時点の組入上位10銘柄です。(7/31付月次レポートより。)
なかなか独自性のあるポートフォリオだと思います。ベンチマークも特に設定されていません。
マイルドなインフレを想定してか、直近は小売業の比率が高くなっています。
上位にいる良品計画は、環境配慮や持続可能性を重視した事業運営を行っていて、個人的にも好きな会社の一つです。
先日紹介した、日本環境設計のリサイクル事業でも、良品計画の金井会長が最初の理解者だったと、同社の岩元社長が言っていました。
(参考記事)
・日本環境設計・岩元美智彦さん講演「環境とリサイクル・100年後の未来」
直近期の売買高比率は1.01とまあまあ低めではあるものの、過去の月次レポートなどを見ると、割安と判断して組み入れた銘柄が値上がりしてきたら、売却や入替もそれなりにしているようです。
運用報告書によれば、2014年9月期は、期首に保有していたのに、期末には残高ゼロとなった全売却銘柄が15以上あります。相場状況にもよりますが、どの程度の回転となるかは見ておきたいと思います。
社会性という点でいくと、似た方向性の鎌倉投信(結い2101)にはすでに結構投資していますが、鎌倉投信は中小型株中心、朝日ライフはどちらかというと大きめの企業がメインです。
信託期間は無期限、最新の純資産総額は約40.5億です。
パフォーマンス
モーニングスターの7月末のデータから、同一カテゴリー(国内中型グロース)平均と比較した、朝日ライフSRI社会貢献ファンドの10年と3年の成績を抜粋します。
【10年(年率)】
・リターン +5.85%(カテゴリー平均 +4.84%)
36本中13位
・リスク(標準偏差)17.29(カテゴリー平均 20.30)
36本中3位
・シャープレシオ 0.33(カテゴリー平均 0.24)
36本中8位
【3年(年率)】
・リターン +27.33%(カテゴリー平均 +34.62%)
54本中49位
・リスク(標準偏差)14.18(カテゴリー平均 17.54)
54本中9位
・シャープレシオ 1.93(カテゴリー平均 2.06)
54本中39位
10年ではまずまずパフォーマンスで、過去には、R&Iファンド大賞の部門賞も受賞しています。
一方、ここ最近のパフォーマンスはさえません。
リスクだけを見るとまずまず優秀です。大幅に下がった時に積極的に買う方針なので、上げ局面に弱く、どちらかというと下げに強い特性と推測します。
信託報酬は1.9224%。日本株ファンドとしてはかなり高い!ですが、ここは自分のこだわりの対価として、また投資額も少なめの予定なので受け入れています。
主要ネット証券では販売手数料はかかりません。
NPOなどへの寄付
本ファンドは、信託報酬の中から、純資産総額の0.1%~0.2%の額を、社会的課題に取り組むNPO等に毎年寄付しています。
コモンズ投信の「コモンズSEED Cap」のように類似のプログラムは結構ありますが、朝日ライフアセットは古くから取り組んでいて、共感したポイントの一つです。
2014年は、「社会福祉法人 子どもの虐待防止センター」など5団体に寄付が行われました。
気になるところ
コスト以外にも、いくつか気になる点もあります。
・「社会貢献度調査」の内容やどう銘柄選定に反映されたのかもう少し知りたい(守秘義務等もあるのかもしれませんが)。
・投資先がどのように社会課題に取り組んでいるのか、どのような成果を上げているか、投資後の事後評価も欲しい。
・以前は投資先企業の紹介コラムなどもあったが最近は情報発信が少なめ。
・直近決算期に多額の分配金(1,500円)を出した。
などなど、、挙げればいろいろありますが、運用理念、ファンド名に「社会貢献」が入っている潔さ、銘柄構成、長期的なパフォーマンスもまずまずなので購入しました。
国内株式はすでに結い2101、コモンズ30を積立していますので、少額の積立設定にしています。
◎朝日ライフSRI社会貢献ファンドの情報源
直販・独立系以外のアクティブファンドを購入するのは初めてでした。
ネットで探したものを載せておきます。
朝日アセットのSRIファンド「あすのはね」、中長期視点での分析に定評(1)
朝日ライフアセット速水氏、「無印良品」は成熟化する先進国だけでなく新興国でも共感(1)
朝日ライフアセットSRIファンド「あすのはね」、オークマが組み入れ上位(1)
朝日ライフ アセットマネジメント株式会社「SRI 社会貢献ファンド」-Part1 - eFundEv β
社会的責任投資フォーラム(SIF-Japan) 第34回定例勉強会 | rennyの備忘録
SRI、ESG全般については、m@さんのブログも参考にさせて頂きました。
JSIF連続講座2014 三井住友信託銀行のSRI - "いい投資"探検日誌 from 新所沢