セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

ソーシャル・イノベーションを考える(京都産業大学教授・大室悦賀さんとの対話)

ビジネスの「経済性」と「社会性」を考える面白いイベントに参加しました。
但馬武さんのコミュニティ「home」のイベントです。

ソーシャルイノベーション7.0:経済性と社会性という2項対立からの脱却

ゲストは京都産業大学経営学部教授で、「京都市ソーシャルイノベーション研究所」所長の、大室悦賀さん。もともとソーシャルビジネスやNPO論が専門で、最近は「ソーシャルイノベーション」をテーマに、地域で民間と行政の橋渡しをされています。



●「経済性」と「社会性」の二項対立

80年代以降、資本主義限界論とともに、CSR、CSV、シェアエコノミー、公益資本主義などの概念が次々登場した。
しかし、これらは全て「株主利益最大化=経済性」と「社会貢献=社会性」のどちらにどの程度軸足を置くかのバランス論にすぎず、「経済性と社会性は両立できない」という二項対立から脱却できなかった。

●社会性は経営のあり方そのもの

経済性と社会性の二項対立を乗り越え、ステークホルダーを統合したビジネスとしては「パタゴニア」や「ホールフーズマーケット」やが代表的。
これらの企業はなにも「社会的課題を解決するために」ビジネスをしているわけではない。ビジネスのあり方として、社会性の要素が組み込まれている。

最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する。

パタゴニアのミッションステートメント
はじめに「最高の製品をつくる」と言っているのがポイント。

ビジネスは、そもそも社会性を持たなければうまくいかない。
例えばLGBTやマイノリティーの雇用問題も、企業倫理やマーケティング論からとらえていてはダメ。多様な人材はイノベーションに不可欠で、むしろビジネスの価値を高める要素になる。「社会性」は、戦略やマーケティングなどの経営手法ではなく、経営のあり方そのもの。

※ホールフーズマーケットは以前ブログで取り上げました。

●ソーシャルイノベーションには誰でも参加できる

社会課題を解決するのは、行政でもNPOでもなく、一義的にはビジネス=企業。だからと言って誰もが起業しろと言っているのではない。基本はビジネスへの「参加」。

政治参加(選挙)と違って、ビジネスであれば、日々の消費を通じていつでも誰でも参加できる。例えばフェアトレードでもオーガニックであっても、商品を「選ぶ」行為が、企業行動を変え、社会課題の解決に向けて大きな力になる。

●自立した多様な「個」がイノベーションを生む

個の力がなければいくらチームを作っても何も生まれない。個々が「自分の生き方」を確立することが大事。社会課題を生まないためには、「協働」が必ず必要になるが、その時にもまずは強い個が必要。
「私という生き方」と「欲しい未来」が定まれば、その間をつなぐ道具としてのビジネスモデルは自然に生まれる。ビジネスモデルは作るものではない。

以上はお話の一部で、断片的ですが、最近考えていることが結構腑に落ちました。
「社会課題」というと大げさですが、別にNPOやソーシャルビジネスを立ち上げなくても、例えば日々のお金の使い方(消費、投資、寄付・・・)を意識することは誰でもできます。仕事を通じてできることも多いでしょう。

どんな立場であっても、個々人が自分の生き方とフィットするやり方でアプローチしていけるはずだという話には勇気をもらいました。
メンバー間のディスカッションも面白かったです。

大室先生のソーシャルイノベーション論は、7.0というようにモデルが進化中で、全部を理解するには時間が短すぎました。他にも西洋思想(キリスト教)と東洋思想(仏教・儒教)の話、地方創生の話など整理しきれていない部分もあります。機会があればより詳しく聞いてみたいです。