セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

GPIFのESG投資と受託者責任

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資を検討する旨発表しました。
具体的には、新しいESGインデックスを公募・選定し、それに基づき国内株式のパッシブ運用を行うというものです。

GPIFは、平成26年5月に「日本版スチュワードシップ・コード」を受け入れ、昨年の9月には国連の責任投資原則(PRI)に署名しました。いよいよ本格的にESG(E:環境、S:社会:G:ガバナンス)に配慮した投資に乗り出します。

(GPIFリリース)国内株式を対象とした環境・社会・ガバナンス指数の公募(PDF)

◎ESGと受託者責任

これに対して、ネット上で「ESG投資は受託者責任に反する」という意見が、投資の専門家と言われる人からも出ていて気になりました。

「受託者責任」とは、資金を預かって運用する機関投資家が、もっぱら受益者(GPIFの場合は国民)の利益のみを追求して運用する責任です。

環境や社会、企業統治の要素を評価して銘柄を選んでも、受益者の利益を損なう=パフォーマンスにマイナスだからESG投資なんてやめろ、ということです。
本当にそうでしょうか。

◎ESGはパフォーマンスにマイナスなのか

ESG投資を定めた国連責任投資原則(PRI)では、「ESG課題を適切に考慮することはリスク調整後の優れたリターンを得る要素となり、したがって受託者責任の範囲内である」としています。
ニッセイ基礎研レポート「国連責任投資原則におけるESG投資と受託者責任」より)

また、水口剛氏の「責任ある投資」によると、ESG要素とパフォーマンスの関係は、長期的に分析する必要があるものの、ESG要素を組み込むことが少なくともパフォーマンスにマイナスではない、という実証データが積み上がってきています。

(関連記事)
【書評】責任ある投資―資金の流れで未来を変える(水口剛 著)

例えば、最近このような調査結果も出ていました。
ESGは財務リターンに好影響。ドイチェAWM、ハンブルグ大学調査 | QUICK ESG研究所

ESG考慮と財務パフォーマンスの間に正の相関関係があること、さらに、E、S、Gを統合するより、個別に適用した方がよりその相関関係が高まることが報告されています。

このような背景もあって、多くの年金基金はじめとする機関投資家や、運用を受託する運用会社が、PRIに署名し、ESGを投資プロセスに組み込んでいます。
パフォーマンスが劣るから受託者責任に反する、という考えは、世界の機関投資家の考え方の流れとは相容れないものだと思います。

◎価値規範としてのESG

一方、ここからは私見ですが、自分は、水口氏も指摘しているように、ESGをパフォーマンスを上げるための投資手法というより、一義的には投資の価値規範(価値観とルール)としてとらえています。

多額のお金を運用する機関投資家は、持続可能な環境や社会をつくるための一定の責任を果たすべきというのが、ESGの出発点だと思います。

「儲かるからESG」ではなく、そのような責任とルールに基づく投資を長期的観点で行うことが、企業の行動を変え、社会全体にプラスをもたらし、結果的に長期的な運用成果を向上させる(リスクを減らすことも含む)という順番です。

ESG投資が、明確にパフォーマンスにマイナスであると実証されない限りは、長期的に社会全体の利益につながるESGは、むしろ受託者責任を全うすることにつながるのではないでしょうか。

その意味でも(指数運用の是非は置いておくとして)世界最大規模の資産残高をもつGPIFが、PRIに署名しただけなく、ESG投資を具体的に行動に移すことには意義があると思います。