8月28日のNHK総合「サキどり↑」で、インパクト投資が特集されました。
サキどり↑「お金をもうけて 社会もよくなる!?インパクト投資って何?」
インパクト投資とは、「社会的な課題の解決を図ると共に、経済的な利益を追求する投資行動」です。(G8インパクト投資タスクフォース国内諮問委員会より)
番組では、こんな取組を紹介。SROIネットワークジャパンの代表理事で慶応大学の伊藤健さんが解説されていました。
1.ブラックロック・インパクト株式ファンド
2.KIBOWの社会投資ファンド
3.ソーシャルインパクトボンド(ロンドン市のホームレス就労支援、国内のモデル事業の紹介)
そのほか、名前は出ていませんが、セキュリテや三菱商事復興支援財団も紹介されていたようです。(ブラックロックも固有名詞なしだった?)
1.の「ブラックロック・インパクト株式ファンド」は、誰でも1万円ぐらいから投資可能な公募投資信託です。いくつかの社会的な非財務要素をもとに計量的に銘柄選定を行います。従来の株式投資の枠内にあるので、純然たるインパクト投資とは言えない面もありますが、自分も少し積み立てています。
若い人に人気?とのことでしたが、設定から約1年経っても残高は超低空飛行です。番組で少しは知名度が上がるでしょうか?
(関連記事)
・ブラックロック・インパクト株式ファンドの月次運用レポート
2.の一般財団法人KIBOWは、グロービスの堀義人さんが代表を務める団体です。従来は被災地で活動するNPO等への寄付メインでしたが、昨年に任意組合による私募の社会的投資ファンドを立ち上げ、インパクト投資を本格的に開始。
積極的に障碍者雇用を行っている宮城の弁当宅配会社に投資しています。地域に社会的なプラスのインパクトを与える投資の分かりやすい例でした。鎌倉投信の愛媛ツアーで訪問した、クック・チャムのお惣菜屋さんをふと思い出しました。
責任者の山中礼二氏が、「社会性と収益性の両立」や、「社会に必要とされる事業への投資」を語っていました。運用者が経営に関わるハンズオン投資ということを除けば、鎌倉投信などと考え方自体は近いかなと感じました。
どのくらいの期待リターンを想定しているのかも伝えてくれるとよかったです。
3.のソーシャルインパクトボンド(SIB)は、行政コスト削減と社会課題解決を両立できる手法として、国も力を入れ始めています。以前、日本財団での勉強会にも参加しました。
番組では、ロンドンのホームレス就労支援のSIBを例に、投資家は2倍近いリターン、市は社会福祉コストが減り、ホームレス増加という社会問題も解決してみんなハッピー!的な説明でした。
もちろん、事業がうまくいけばそうなのですが、当初想定した成果が出なかった場合には、投資家のお金が大きく毀損するのがSIBです。純粋な民間の投資家が、100%SIBの資金提供者の役割を担うのはリスクリターンの面からは難しいので、そのあたりの課題にも触れてもらいたかったです。
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・ソーシャルインパクトボンド(SIB)のセミナーに参加しました(その1)
いろいろ書きましたが、社会の課題解決をしながら、お金が増やせる投資のやり方もあるよ、とNHKが伝えたのは、それこそインパクトがあるでしょう。
「寄付」と「投資」の違いは、双方向性、継続性、そして金額(インパクト)の大きさだとコメントされていました。それはまさにその通りだと思います。
ただ、寄付には寄付、投資には投資それぞれのよさがあるし、寄付、投資、それぞれになじむ事業もあるはずです。何でもかんでも無理に「インパクト投資」に持っていかなくても、寄付と投資のいいところを、課題に合わせてうまく組み合わせていけばよいのかなと感じました。