コモンズ投信の社会起業家フォーラムプレイベントの最終回。
株式会社ピリカの代表取締役・小嶌不二夫さんのお話をたっぷりとお聞きしました。
過去2回の記事はこちら。
(第1回)難民支援協会・石川えりさん
(第2回)3keys・森山誉恵さん
●ピリカの理念とビジネス
ピリカは、環境問題の中でも身近な「ポイ捨てゴミ」に注目し、2011年に創業した京大発ベンチャーです。
「科学技術の力で地球上からポイ捨てゴミをなくす」「科学技術の力であらゆる環境問題を克服する」ことをビジョンに掲げます。“ピリカ”はアイヌ語で「きれい」「美しい」を意味する言葉です。
事業の柱は2つです。
・ごみ拾いSNS「ピリカ」
町中でごみを拾って写真を共有できるアプリです。2011年のリリース以来、世界中77ヵ国で4,000万以上もののごみが拾われました。
個人だけでなく、300以上の企業団体も協力しています。
(参考)福井県の清掃活動見える化ホームページ クリーンアップふくい
・ポイ捨てゴミ調査事業「タカノメ」
街の写真をAIと画像解析の力で分析して、ゴミの種類ごとの分布やひどさを測定し、マッピングするサービスです。ポイ捨てごみを減らすには、拾うだけではダメで、どこにどんなごみがどのくらい捨てられているのか、客観的なデータで把握する必要があるという問題意識から生まれました。
(参考)きれいな町へ“新兵器” スマホでゴミ捨てなくせ
●小嶌不二夫さんという人
企業や団体の事業だけでなく、ヒトにスポットを当てるのがこのイベントのいいところです。今回も、ビジネスにかける小嶌さんの想いや、創業時の苦労話など小嶌さんの人となりの部分がたくさん聞けました。
小嶌さんは1987年生まれ。子どもの頃から、「大きな問題は自分をヒーローにしてくれる!」と、地球環境問題を解決したいと思っていたそうです。
一度は、研究者として、あるいは企業で頑張ろうともしましたが、既存の組織や枠組みで収まりきるレベルの方ではなく、自分でビジネスを立ち上げる道を選びました。
既存の枠にとらわれない発想力と、「思いついたらとことんやってみる」という探求心、実行力が、おそらく普通の人とは比べものにならなくて、起業家とはこういう人だなとつくづく感じました。
さらに、圧倒されたのは、小嶌さんの「まわりの人達を巻き込む力」。
起業前にベトナムの会社で働いていた時のエピソードや、創業当初、アプリ開発の仲間を引き入れていった話からは、まわりの人の懐に入って、ビジョンに共感する人をどんどん巻き込んでいく人間力を感じました。
いろいろな経営者の話を聞いてきましたが、想いを実現するには、この「まわりを巻き込む力」が不可欠な要素だと思います。
●ピリカの事業性
「ポイ捨てごみ」は、世界中どこでも身近な環境問題で、かつマイクロプラスチックのように深刻な問題につながっているのに、誰も事業としてはきちんとやってこなかった分野です。その分野で、誰でも、気軽に楽しみながら参加できる仕組みを作ったのが革新的です。
また、定義さえ曖昧だったポイ捨てごみの実態を、きちんと測定し、データ化し、可視化した技術の力は大きいと思いました。例えば、自治体が街の美化のために対策を立てたり、効果を測るためには、現状が客観的にデータ化されていないければいけないからです。
なので、この調査事業は大きく伸びるのではと感じます。調査対象を世界に広げる計画もあります。
ポイ捨てごみにとどまらず環境問題全てを解決する!と語ってくれました。
10年後、20年後にどんな凄い会社になっているのでしょうか。
●響いた言葉
最後の方で、小嶌さんが言った言葉は響きました。
「会社は自分の子どもと同じ。成長して伸びていくのが本当にうれしい。」
一生をかける大きな目標に向かって、邁進されている小嶌さんがうらやましいなと思うほどでした。
人はそれぞれ役割があります。自分は投資や寄付、そして「PIRIKA」を使ったり、こうやってブログを書いたりして、応援していければいいと思います。
さて、小嶌さんも以前に登壇された、8回目の「コモンズ社会起業家フォーラム」が10/1に開催予定です。
運用会社を通じたこういう社会との関わり方もあると気づかせてくれたイベントです。私もこれがきっかけの一つとなって、いくつかのNPOに関わるようになりました。
おススメです。
第8回コモンズ社会起業家フォーラム