セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門(竹川美奈子さん・著)

ファイナンシャル・ジャーナリスト竹川美奈子さんの新刊です。
最近、確定拠出年金に関する本がたくさん出ています。本書は、確定拠出年金のうち、私も加入している個人型確定拠出年金(個人型DC、愛称:iDeCo)に的を絞った本です。

確定拠出年金の制度改正により、来年(2017年)から、60歳未満のほぼ全ての人が個人型確定拠出年金を利用できるようになります。節税効果はじめ多くのメリットがあるため、「何それ?」という方はこの機会にぜひ知って頂きたいです。



この本のいいところを3つ。

- 個人型DCについて知っておくべきことをまんべんなくカバー
- 年金の受け取り方(給付)について詳しい
- 図表や具体例が多くわかりやすい

個人型DCについて知っておくべきことをまんべんなくカバー

本の構成です。

第1章 個人型確定拠出年金ってなに?
第2章 個人型確定拠出年金のおトクな税制メリットを賢く使う!
第3章 金融機関はどう選べばいいの?
第4章 確定拠出年金をこう活用する
第5章 運用してきたお金をどう受け取るか
第6章 個人型確定拠出年金についてのQ&A

「すべてがこの一冊で分かります!」とある通り、個人型確定拠出年金の仕組み、メリット、手続き、活用方法までを、質・量ともに十分にカバーしています。加入検討している人は、この本の知識レベルがあれば完璧ではないでしょうか。

1章で個人型DCの仕組みの全体像、2章では、制度の大きなポイントとなる税制メリットを解説した後、3章以降は、加入~毎月の掛金拠出~運用~60歳以降の給付、という流れにそって構成されているので、すんなり頭に入ってきます。

年金の受け取り方(給付)について詳しい

この本の一番の特長は、個人型確定拠出年金の給付(受け取り方)について詳しく書いてあることです。

今までも、加入時の金融機関選びや商品選択、加入中の税制優遇についての解説はたくさんありました。しかし、肝心の給付時における具体的な受け取り方や課税関係についてきちんとまとめた本は少なかったと思います。

自分も、60歳以降の老齢給付金の受け取り方に、一時金と年金があること程度は知っていました。
ただ、それぞれの場合の課税や、他の退職金(会社の退職金や小規模企業共済など)がある場合の扱い、さらに、受け取り方の選択肢が加入する金融機関によって異なることなど、初めて知ることばかりでした。

個人型DCはあくまで「年金」です。自分で運用したものを60歳以降どのように受け取れるのか?はとても大事です。自分もつい、「どの金融機関がいいか」「どの商品を積み立てるか」にばかり頭が行きがちでした。この5章は、既に加入している人にもとても役立ちます。


図表や具体例が多くわかりやすい


制度改正により、個人型DCの利用可能対象者が大きく拡大した一方で、その人の属性(自営業者、会社員、公務員、専業主婦/主夫等)ごとに拠出できる掛金が異なるうえ、会社員の場合は会社側の年金制度次第でも加入可否が変わってくるなど、制度としては一層ややこしくなりました。また、税制メリットや受け取り時の課税もかなり複雑です。

このような複雑な仕組みは、文章だけではまず頭に入ってきません。本書では、的確な図表や具体例(数字)を使って解説しているので、とても理解が進みます。

5章の最後で、まとめとして、自営業者、会社員(企業年金/企業型DCのある人、ない人)、公務員、専業主婦/主夫、という属性ごとに使い方のアドバイスがあります。読む側としては、「自分の場合はどうなの?」というのが知りたいわけなので、読者目線で親切です。

そんな中で、あえてマイナスポイントをあげれば、3章の金融機関選びの中のコストの部分です。
運営管理機関の選び方と、商品選びが同じ章にあるため、初心者の人は、運営管理機関の「口座管理手数料」と、その中で購入する投資信託の「購入時手数料」「信託報酬」などの手数料の話がごっちゃになってしまうかな、と読んでいて少し思いました。

経験者にも重宝

自分も個人型DCに加入して3年半になります。
一通りは理解している「つもり」でしたが、5章の給付の話だけでなく、60歳未満での途中解約(脱退一時金の受取)のハードルが上がったことなど、知らないことも結構ありました。すでに運用や制度の知識がある人にも、新制度で変わっていることも多いので、キャッチアップに役立ちます。

複雑な個人型確定拠出年金をわかりやすく、かつ必要十分な知識を網羅してコンパクトにまとめたとてもクオリティーの高い本です。「個人型」については、この一冊があれば他はいらない?でしょう。