NPO法人日本サステナブル投資フォーラム(JSIF、旧「社会的責任フォーラム」)が、ESG投資を含むサステナブル投資について、国内の機関投資家の投資残高をまとめたアンケート結果を公表しました。
昨年末の第1回調査に続き2回目の調査となります。
●サステナブル投資の定義
JSIFでは、以下の2つの基準を設けています。
1.地球と社会の持続可能性に配慮した投資であること
2.1.の投資プロセスや社会的な効果を資金の供給者に対して開示していること
●サステナブル投資残高は前回比2.1倍の約58兆円
昨年11月~12月に行った第1回のアンケートでは、サステナブル投資の合計額は26兆6,873億円でした。
今回は、31機関(年金基金、アセットマネジメント会社など)から回答があり、合計額は前回の約2.1倍の、56兆2,566億円となりました。
これに、個人向けの公募投信(SRIファンドなど)の残高を合計した、国内全体のサステナブル投資残高は、57兆568億円と集計されています。
●総運用資産残高に占めるサステナブル投資の割合も増加
サステナブル投資の総額が倍以上に増加しただけでなく、機関投資家の運用全体に占める割合も、前回の11.4%から16.8%に増えました。ESGをはじめとするサステナブル投資が着実に運用業界に浸透していると言えます。
最大のアセットオーナーであるGPIFがESG投資に舵を切ったことと、スチュワードシップコードの影響が大きいと思われます。
●運用手法別には「ESGインテグレーション」と「エンゲージメント・議決権行使」がメイン
(クリックで拡大、公表資料より転載)
運用手法ごとの内訳は、第1回同様、ESG要素を運用プロセスに体系的に組み込む「ESGインテグレーション」と、「エンゲージメント・議決権行使」がメインです。ESG評価を運用に取り入れつつ、対話や議決権行使を通して企業に働きかけていくのが今の主流のようです。
次いで、「国際規範に基づくスクリーニング」(国際的な取り決めに基づいて、クラスター爆弾関連企業を除外する等)、ESG評価の高い企業を積極的に組み入れる「ポジティブ(ベスト・イン・クラス)・スクリーニング」となっています。
一方で、社会的、倫理的によろしくない特定企業・業界をSRI的観点で除外する「ネガティブ・スクリーニング」は前回よりも減っています。
日本は、欧米に比べて受益者からのプレッシャーが弱かったり、ドライな排除の論理が働きにくい文化のため、ネガティブ・スクリーニングが広まりにくい面があるそうですが、それが今回の数字にも表れています。「ウチはこの会社には投資しません!」という投資家がもっと増えてもいいと思います。
より詳しいレポートは来年1月中にリリース予定とのことです。
サステナブル投資のすそ野が広がるのはいいことですが、この数字自体は機関投資家の自己申告によるので、各年金・運用会社などがどこまで深く投資先のESGを評価分析し、実質的な対話を行っているかまでは分かりません。
「なんちゃってESG」「なんちゃってインテグレーション」ではなく、本当にサステナブルな社会の実現に貢献できる、中身のある取り組みが進むよう期待します。
公表資料はこちら。(PDF)
第2回サステナブル投資残高アンケート調査
(参考)第1回の調査後のシンポジウムに参加した際の記事です。
・「日本サステナブル投資白書2015」発刊記念シンポジウム(その1)
・「日本サステナブル投資白書2015」発刊記念シンポジウム(その2)