セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

コモンズ投信・コモンズ30塾「女性の活躍セミナー」(資生堂執行役員・副島三記子さん)

11/10に、コモンズ投信のコモンズ30塾に参加しました。
コモンズ30塾は、コモンズ30ファンドの投資先企業との対話を通じて、投資先企業の「見えない価値」を知るセミナーです。

今回は、「女性の活躍」をテーマに、資生堂の執行役員・副島三記子さんをゲストに迎えました。



資生堂は、国内グループ社員約24,000人のうち、約2万人(8割以上)が女性で、女性割合はトップクラスです。さらに、顧客の9割が女性なので、まさに女性とともに歩んできた会社です。

創業以来「美意識」「美しい生活文化の創造」を理念に掲げています。1959年には、店舗で美容のアドバイスを行う「美容部員」が生まれ、1990年に「ビューティーコンサルタント」(BC)となりました。
副島さんは、美容本部長として、全国のBCを束ねるトップの立場にあり、まさに女性活躍の取り組みを社内でリードしてきました。

ただ、女性活躍のモデル企業と言われる資生堂でも、今までには様々な苦労があったと、3つのステージで説明してくれました。

第1ステージは、「女性が結婚・出産を機に退職してしまう」段階
80年代頃までの資生堂は典型的な昭和の日本企業状態でした。

第2ステージは、「女性に仕事と子育てを両立してもらえる」段階
90年以降、育児休業や時短など制度整備に力を入れました。時短勤務のBCを、契約社員がバックアップする「カンガルースタッフ」や、事業所内保育所なども整備。
この結果、出産や育児のために退職する女性は大幅に減少し、たしかに「両立」は定着しました。

一般的には、このレベルで留まっている会社が多いと思います。
しかし、「マミー・トラック」という言葉が示すとおり、この状態では、女性が仕事をかりに継続できても、それは「辞めずにすんだ」だけに過ぎず、長期的に男性と同じようにキャリア形成することは難しいです。




副島さんは、女性に本当に活躍してもらうには、「育児や介護との両立支援」と「キャリア形成の推進」が車の両輪だと言います。そこで、資生堂は一段階上の第3ステージを目指しました。

第3ステージは、「男女ともに」しっかりキャリアアップできる段階です。
少子高齢化や独身世帯の増加などで、もはや、男女関係なく、育児や介護と仕事を両立しなければいけない時代です。

そこで、資生堂では、2014年から、子育て中ののBCに対しても、それまでの平日昼間の時短勤務だけでなく、来客の多い夕方以降や土日勤務への対応を求めました。生活とのバランスを取りながらも、多くの顧客に接し、やりがいのある仕事を通じて成長していくことが、本当の意味でキャリアにつながるからです。

この働き方改革は、子育て社員に厳しい「資生堂ショック」として伝えられましたが、育児中のBC 1,200人のうち、実際に退職した人は少なく、大半は受け入れたそうです。その過程では、ひとりひとりの事情やキャリアに対する考え方について、会社が丁寧に耳を傾けたのはもちろん、社員の家庭側でも、夫の仕事の仕方の変化や、親の協力などいろいろな変化があったと思います。

今までの女性活用論は、「女性が育児・家事」という暗黙の前提のもとで、どうやって両立してもらうか?の議論に終始していました。実は、資生堂の取り組みは、そのレベルから脱して、男性も女性も平等に働きがいがある会社をつくるプロセスだと分かりました。

(参考)ショックなんかじゃない、「資生堂」働き方改革の本質 : 深読みチャンネル : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

キャリアアップというと、一般的に出世・昇進と考えられています。
しかし、副島さんは、キャリアとは「貢献」であって、キャリアアップとは、「仕事の経験を通して知識・技術、人間性を磨いて、顧客や社会への貢献度を高めること」だと言います。とても共感しました。

現在は、男女ともに真に「チャンスは均等、評価は公正」な50:50風土の醸成を掲げています。「働きやすい会社」から「誰もが働きがいのある会社」にシフトする資生堂のチャレンジは進行中です。

企業の人と直接接すると、CSRレポートなどでは分からないリアルな部分が見えてきますし、ESG的な観点でも参考になります。こういった対話は、ぜひいろんなテーマで続けてほしいです。

セミナーの模様は、コモンズ投信のブログで、詳しく紹介されるのでご覧ください。
コモンズ30塾 『女性の活躍セミナー』 コモンズ30ファンド投資先企業【株式会社 資生堂】から学ぶ