11/19に、ARUNの新規投資記念イベントにお招き頂きました。
ARUNは、さまざまな社会的課題にビジネスで取り組むアジアの社会起業家を、寄付や援助ではなく、投資でサポートする「社会的投資」に取り組んでいます。2009年以降、カンボジア及びインドで6社に出資や融資を行ってきました。
個人的にも、ARUNの社会的投資には関心があって、「ソーシャルインベストメントスクール」に参加したり、インパクトレポート作成のためのクラウドファンディングを応援したりとフォローしています。
そのARUNが、約2年ぶりに新規投資を行いました。
新たな投資先は、インドやバングラデシュのヒ素による地下水汚染が深刻な地域で、水質浄化システムを導入し、安全な飲み水の提供を目指すソーシャルベンチャー、Drinkwell(ドリンクウェル)です。
ARUN - 途上国と私たちをつなぐ社会的投資 | 発展途上国の水問題に取り組む企業に社会的投資を開始
Drinkwellの創業者は、バングラデシュ系アメリカ人のミンハジ・チョウドリー(Minhaj Chowdhury)さん。
ジョンズ・ホプキンスで公衆衛生学を学び、親族がヒ素汚染に苦しんだ経験から、ビジネスを立ち上げました。
Forbes誌の「30歳以下の社会起業家30人」にも選ばれ、注目されています。
Drinkwellの紹介動画。最初に話しているのがCEOのミンハジ氏です。
従来、ヒ素を浄化するにはRO(逆浸透膜)によるろ過装置が一般的ですが、コストやメンテナンスの問題があり、途上国ではなかなか普及していません。
そこで、Drinkwellは、HAIXというイオン交換樹脂を使った新しい浄化システムを開発しました。この樹脂は、現地で材料調達ができ、システムのメンテナンスも簡単で、水の廃棄量も少ないメリットがあります。
さらに、Drinkwellは、この浄化システムを地域の住民から選んだフランチャイジーに販売するビジネスモデルを構築しました。地下水汚染による健康問題と環境問題を解決し、さらに現地の人達の所得拡大を可能とする一石二鳥、三鳥のビジネスです。これに目を付けて、大手の財団や援助機関などからすでに多くの資金提供を受けています。
イベントでは、ダラスにいるミンハジさんとSkypeでつなぎ、生の声を聴きました。
一旦話し出すと止まらない勢いで、バイタリティーのある若き経営者という印象でした。英語は難しくてほんの一部しか聞き取れませんでしたが、事業に対する情熱を感じました。
ミンハジさんとのSkypeの後は、参加者同士でディスカッション。
実は、現在のDrinkwellは、上記の、地元住民をフランチャイジーとして巻き込んでいくビジネスモデル(Entrepreneur型)ではなく、インドの地方政府からの水道事業の公共調達の受注(Tender Business型)が主要な収益源となっています。
この点は、現地の人達の事業機会創出にも寄与する投資という、ARUNの当初の想定とは少し異なっていて、参加者の間でも議論になりました。
ARUNとしては、公共調達であっても、安全な水を、低コストかつ小さい環境負荷で提供できるという社会的なインパクトは大きいので、引き続き事業をサポートしていく意向です。
このあたりは、途上国、しかもスタートアップ段階の社会的企業に対する投資の難しさも感じました。
一方、代表の功能さん初め、ARUNとミンハジさんのコミュニケーションはとてもスムーズかつフレンドリーで、投資にあたって重要な、投資先との信頼関係はよくできている印象を受けました。Drinkwellへの投資が成功し、成果が上がることをお祈りします。
なお、新たな取り組みとして、この11月に、NPO法人ARUN Seed主催で、さまざまな社会課題に取り組むアジア各国の社会的企業を対象に「CSI 1ST CHALLENGE プログラム」というビジネスコンペを行いました。
選定された起業家には、日本の寄付を原資に、最大50,000ドルのファイナンスが行われます。多くの応募があったそうで、近々新しい投資先を決定するそうです。こちらも注目です。