ファンダメンタル分析関連の書籍の紹介です。
著者は、運用会社でバイサイドアナリストをされている松下敏之さんと高田裕さん。2017年に出た本で、界隈では結構有名なのでお持ちの方も多いかもしれません。
外資系アナリストが本当に使っている ファンダメンタル分析の手法と実例 | プチ・レトル
第1部 株式分析とは
1章.なぜ株式分析をすべきなのか
2章. 株式投資とは
第2部 株式分析の理論
3章. 株式の価値とは何か
4章. DDMとPERによる株式分析
第3部 株式分析の実践
5章. 株式評価の調査プロセス
6章. 業績予想の作成
7章. 株式投資におけるバリュエーション
8章. 株式分析をしてみよう
Appendix現金/預金の取り扱い
PERを中心としたファンダメンタル分析と、DDM(配当割引モデル)によるバリュエーションが詳しく理解できる、とても実務的で質の高い本です。「今まで明かされることのなかった」と宣伝されている通り、機関投資家の分析手法を、個人向けに分かりやすく解説した本はあまりないのではないでしょうか。
運用会社のアナリストが、どのように調査分析をし、業績予想を立て、投資先を選んでいるかも、実例を交えながら分かりやすく解説されています。
個人向けのファンダメンタル本では、以前こちらを紹介しましたが、この本は決算書や四季報の読み方が中心で、まさに「個別銘柄探しをする人向け」という感じでした。
個別株よりもアクティブファンドメインで投資している自分にとっては、今回の本の方がハマりました。運用会社の仕事のプロセスが非常によく分かることと、5年10年単位の長期の投資を前提としているからです。
ケーススタディでは、実際の企業調査の活動が紹介されています。
ある企業1社の投資に至るまでに、多角的に情報を集め、訪問や取材を重ね、競合他社や川上川下の分析も含めて相当な労力をかけていることがよく分かります。そこまでして初めて、競争力の源泉や利益の持続性を把握し、中長期の業績予想や株価評価ができます。経験も求められる仕事です。
自分のように投信メインの個人投資家にとっても、ファンドの投資先について考えたり、運用者と目線を合わせ、いい運用者を見極めるために、とても役立つ本だと思います。
もう一つ、直接の感想ではありませんが、この本を読んで、運用会社に対して思ったことがあります。
それは、せっかくこれだけの仕事を日々してくれているのなら、企業の価値を見極めることの奥深さや投資先を選ぶことの醍醐味をもっと積極的に伝えてほしいということ。良いパフォーマンスは結果であり、その背景にはこういった日々の仕事の積み重ねがあるのですから。いいアクティブファンドのパフォーマンスがいいのは「たまたま」ではなく、ある程度必然性と再現性があるはずで、それが伝わる発信をしてほしいです。
そうすれば、コストだけを基準にインデックスファンドに流れることなく、いい運用会社、いいアクティブファンドをきちんと評価する個人投資家も増えていくのではないでしょうか。