セルフ・リライアンスという生き方

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スパークス・清水裕さんのESGデータ解説がわかりやすい

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スパークス・アセット・マネジメントのファンドマネージャーである清水裕さんが、noteでESGデータの活用について解説しています。竹川美奈子さんのツイートで知りました。

清水さんは、スパークスのサステナブル投資チームで、日々ESGを考慮した運用を実践しています。運用会社におけるESGインテグレーションの実際について、とても分かりやすいのでご紹介します。

重視するのは外部データよりも企業の開示する非財務情報

「ESGデータ」という場合、ESG評価会社が算出するESGスコアやESGレーティング、さらには指数会社によるESGインデックスの構成銘柄情報などを指すことが多いと思います。これらは企業以外の第三者が提供する「外部データ」です。

しかし、清水さんは、投資判断においてはこれらの外部データよりも、企業そのものが出す「ESG情報」を最も重視するとしています。ここでの「ESG情報」とは、企業が統合報告書などで開示するデータはもちろん、データ化できない企業理念や経営者のビジョンなど、投資候補先企業に関わるあらゆる非財務情報です。
※例えば、コモンズ投信ではこれらの非財務情報を「見えない価値」と表現します。

この理由は、「他と差別化された投資判断をするためには社内での独自分析が必要で、その場合は会社の開示データを使って一から分析していくことが極めて重要」だからです。企業を選別するアクティブ運用では、やはり外部データだけからでは見えてこない価値に迫る必要があります。

一方で、外部機関(サステナリティクス、ブルームバーグ、S&Pグローバルなど)が提供するESGデータも十分に活用しているとのこと。その理由として、調査業務の効率化や恣意性の排除などを挙げています。

統合報告書や各種開示基準の普及で、企業の非財務情報の開示は進んできているものの、財務情報と異なり、監査や統一基準が未整備なため、投資される企業側、投資する運用会社側、どちらにも属さない第三者の客観的判断は有意義とのことです。

ESGデータの活用の仕方

ESGデータ(企業の開示情報、外部データを含む)の具体的な活用方法として、以下を挙げています。

・投資除外(エクスクルージョン、ネガティブスクリーニングともいいます)での活用(ESGスコアの低い企業を除外する etc.)
・企業価値測定(バリュエーション)での利益予想や割引率算定におけるESG評価の反映

これはスパークス以外の運用会社でも、ESGを考慮する場合には一般的に行われていることだと思います。

ベストインクラスとベストエフォート

ESG評価も踏まえてポートフォリオを組む場合、
・ESGスコアが高い企業にのみ投資する(ベストインクラス)
・ESGスコアが低くても改善の見込みがある企業に投資する(ベストエフォート)
の大きく2通りの考え方があり、スパークスは後者を選択しています。

前者はすでに株価が割高であることが多い一方、後者は、将来の開示やESG対応の改善によって、マーケットの評価が大きく向上する可能性があるからです。

ただし、ベストエフォートで投資する場合には、隠れたいい企業を見極める選別力と、対話によって価値を高めていくエンゲージメント力が必要だとしています。アクティブマネージャーの腕の見せ所ですね。

 

外部データと、企業の開示情報、さらにはデータに表れない非財務情報をどのように組み合わせてESG評価を行い、投資判断に反映しているか、とても分かりやすかったです。

あくまで一例であり、これが全てというわけではありませんが、アクティブ運用におけるESGインテグレーションについて具体的なイメージが湧くと思います。特に運用業界以外の方に読んで頂きたいnoteでした。

 

【追記】
2016年に、「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ」のスピンオフ企画で、清水さんの話をお聞きしたことがあります。

この頃は、ESG投資という言葉もまだ今ほど一般的ではありませんでした。懇親会の席で、社会性と経済性の両立やサステナブルな投資について、いろいろお話したのを思い出しました。