セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

「見えない価値」とESG投資

先日、ESGをテーマにしたコモンズ投信のセミナーに参加しました。

コモンズの考えるESG投資について、会長の渋澤さん、社長の伊井さんからのお話と、各アナリストさんより投資先企業のESGをどう見るかの説明がありました。

コモンズ投信は、投資先選びにおいて、売上高や利益率、ROE、ROAなどのいわゆる収益力=「見える価値」だけでなく、「見えない価値」を重視します。「見えない価値」とは、競争力、経営力、対話力、そして企業文化、の4つの柱です。

これらは、将来の財務価値=利益や株価上昇につながる可能性があるが、現時点では数字に表れていない要素であり、ESG的に言えばまさに「非財務情報」です。海面から出ている氷山の一角が「見える価値」とすると、海面の下のもっとずっと大きな、見える価値を支えている氷山が「見えない価値」です。

「見えない価値」は、現在だけでなく、それらが将来に渡ってずっと維持できるかが重要です。今は大きい氷山でも、将来溶けてなくなってしまわないかどうか。なぜなら、それが持続的な企業価値の向上につながるからです。

このように、企業のさまざまな見えない価値を長期視点で多角的に分析し、それらが財務化するプロセスに投資するという考え方は、ESG投資の考え方と重なります。コモンズ30ファンドはESGファンドを名乗ったり、企業選びにESGスコアを使っていませんが、きわめて真っ当なESG投資を実践していると考えるのはこのためです。

 

セミナーでは、この前提の上で、個人投資家がESG投資に向き合う上で大切なポイントが2つ指摘されました。
投資信託を見るときに、「そのファンドが本当にESG投資と言えるのか?」を見極めるポイントです。

1.真に長期視点で投資しているか(運用会社も受益者も)

気候変動への対応、人権への取組、ダイバーシティ・・・といったESG課題は、四半期や1年という短期で成果は出ませんし、すぐには業績につながりません(むしろ短期的にはコスト)。なので、「今年狙い目のESG銘柄」などは言葉の使い方として間違いですし、短期的な値上がりを目的に環境や社会的に注目されている企業を買うのはESG投資ではありません。

ESG投資というからには、運用会社が長期で投資していることはもちろん、長期目線の顧客の資金を集めているかも大事です。そのファンドに投資する受益者が、売れ筋ファンドだからと飛びついたり、短期的な値動きで売ったり買ったりする顧客ばかりなら、かりにいい会社を組み入れていてもESG投資とはいえません。

2.企業との対話が行われているか

ESG投資の大事な要素の一つが、建設的な対話=エンゲージメントです。長期投資家は、投資先企業に対して情報開示を求めたり、意見を述べたり、長期的な視点からESG課題についての対話を継続することで、「見えない価値」の見える化を促し、企業価値向上に貢献することが求められます。

運用会社が投資先と継続的な対話に取り組んでいるか、それが、短期的な株主還元を目的とした「モノ言う株主」としてではなく、長期的な価値向上という共通の目標に向けた、企業と投資家がともにwin-winとなるような建設的な対話になっているかどうも、ESG投資たる条件だと思います。

投資信託の世界では、個人投資家、運用会社、投資先企業が「長期・持続的な価値創造」という同じ目的を共有して初めてESG投資は実現します。

 

コモンズ30ファンドは、「ESGファンド」と銘打ってはいません。しかし、ポートフォリオのESGスコアが結果的には高い、という外部調査もありました。投資先選びにおいて、ESG評価会社のスコアなどを活用しなくても、持続的な企業価値の成長可能性を見極め、長期で投資すれば、必然的にESGを考慮した投資になることの証左だと思います。


いまや「●●ESGファンド」が次々設定されていますが、「ESGと付けた方が売れるから」という販売戦略上の動機も多いように思います。「真に長期で投資している」「建設的な対話を行っている」とい2点を満たすファンドは限られてくるでしょう。

ESG投資に関心を持ったとき、ファンド名に「ESG」が入っているかにとらわれず、しっかり運用の中身を見ること。そして、個人投資家自身が、長期視点を持てているか、自問自答することが大切です。

動画はこちらで見られます。