SDGs(持続可能な開発目標)の17個のゴールのうち、12番目は「つくる責任、つかう責任」です。地球環境を持続可能なものとするために、責任をもって生産し、消費しよう、という考え方です。
『○○投信が**株式ファンドを新規設定』『**ファンドが繰上償還』といったニュースを日々見ている中で、本来は資源やモノの話である「つくる責任、つかう責任」を、投資信託をはじめとする金融商品にも当てはめたら?とふと思いました。
株高が続く中、作れば売れるからでしょうか、相変わらず大量の投資信託が毎年新たにつくられ、市場に投入され続けています。
作り手である投信会社は、売り手である証券会社などの意向も踏まえて、その時々のテーマにのったファンドを次々と生み出す。それを販売会社が大々的に宣伝して売り、手数料を稼ぐ。人気がなくなったらまた次のファンドを作り、売る。一方の投資家も、金融機関の売り文句に乗っかって新しいファンドを購入し、成績が悪くなったら手放して次のファンドに乗り換える。AI、DX、ロボット、ワクチン、脱炭素・・・、ネタはいくらでもあります。
「回転売買」に対する金融庁の指導や、コロナの影響もあり、新設ファンドは減少傾向にありますが、こういうサイクルによって、未だに毎年大量のファンドが生み出され、一方で消滅しています。
2021年1~6月の半年だけで、追加型の株式投信だけで170本以上が新規設定され、一方で同じく170本以上が償還されていました(投信協会、「投信資料館」さんによる)。残高が減り、ファンドが維持できず繰上償還されているものも多くあります。
投資信託は、もともと長期投資に適した金融商品のはずなのに、商品そのものが持続的でない、という矛盾した状況が続いています。これは、作り手側の金融機関の問題と同時に、私たち消費者側の問題でもあります。
投資信託は目に見えませんし、次々売り出したり、乗り換えたりしても廃棄物は出ません(目論見書やパンフレットはゴミになるかも)。しかし、ファンドの「粗製乱造」は、健全な金融環境や投資環境という、私たちの暮らしに深く関わる環境を害します。
金融業界は、ESG投資の重要性を唱えるなら、まずは自分たちの商品の作り方や売り方を長期志向に改めるべきです。「SDGsをテーマにしたファンド」を売る前に、いいモノをしっかりつくり、それを長く育てる文化に転換することが必要です。
そして、投資家側も、いいモノを自分なりの基準でしっかり選び、長く使う( =長期で投資する)こと。ひとりひとりの消費者の姿勢が、個人と家計の金融環境をよくしていくはずですし、長期での着実な資産形成にもつながると思います。