ひさびさにいい書籍に出会いました。大津広一さんの「企業価値向上のための経営指標大全」です。
最近「企業価値の向上」という言葉が広まっていますが、企業価値の向上、という言葉は抽象的です。それを具体化するには客観的な数字で目標設定し、判断する必要があります。その基準となるのが各種の経営・財務指標です。
本書は、次の10個の代表的な経営指標について、事例を挙げて解説しています。
ROE、ROA、ROIC 、EVA、売上高営業利益率、EBITDAマージン、売上高成長率、EPS成長率、フリーキャッシュフロー、DEレシオ
本書のおススメポイントです。
・経営指標の表面的な知識ではなく、深い見方が分かる。
・ひとつひとつの経営指標だけでなく、それぞれの違いや関連性が体系的に理解できる。
・具体的な上場企業の事例、ビジネスモデルと関連づけて説明しているので理解が進むし読み物として面白い。
ROEやROICをとっても、それぞれの式の意味するところは奥深いです。例えば同じROE8%の会社があったととしても、デュポン分解などブレイクダウンしていくと、ビジネスモデルや競争力の源泉、資本配分の考え方が分かっていきます。
また、同じ指標でも、分母、分子に使う数字(例えば分子の利益の内容)は業種や企業により違います。その違いや理由まで考えることで、業界特性や企業が指標に込めた意図を読み解くことができます。
何回か繰り返し読めば、「企業価値の向上」を数字の裏付けをもって理解できるようになると思います。
企業の財務やIR担当者向けに書かれていますが、個人投資家にもとても役立つ参考書です。「あれ、この指標はどういう意味だっけ」と思った時に見返せます。投資先や候補企業を分析する際、中計や統合レポートを読み解く際、いろんな場面で使えるのではないでしょうか。