柳下裕紀さんの「価値創造のビジネスモデル講座」を受講しました。
柳下さんの著書「真のバリュー投資のための企業価値分析」と、昨年受けた3回シリーズの「バリュー投資と企業価値分析の基礎講座」はとても有用でしたが、今回も非常に勉強になる充実の内容でした。
(以前の記事。基礎講座の3回目は記事にしていませんでした)
「フランチャイズバリュー創造企業に投資する為の基礎講座 2022」(柳下裕紀さん)を受講しました
有料講座なので、著書にも言及のあることを中心にポイントをご紹介。
前半は価値創造のビジネスモデル総論。
・ビジネスモデルは単なる「収益モデル」(誰に、何を売るか)ではない。もっと広く、競争優位確保を目的とし、競争優位を持続可能かつ強固にしていく「仕組み」。
・市場の選択や自社のポジショニングを考えるのは戦略論。ビジネスモデルは、市場を選択した後の「戦い方」の問題。
・仕組みとは規則性、汎用性があり、再現性があるもの。武術における「技」。(どんな試合展開でも勝ちパターンに持ち込めるか)
・多くの日本企業は「良い製品を作れば売れる」という発想。ビジネスモデル=「仕組み」や「戦い方」で勝負するという視点が欠落。
・戦略とビジネスモデル、ビジネスモデルと業務プロセスに整合性、一貫性があるかが重要。価値創造には、個々の業務の部分最適ではなく全体最適の視点が必須。
(ex. 「はなまるうどん」と「丸亀製麺」の比較)
・ビジネスモデルを強固にする要素:スイッチングコストup、習慣づけ、サーチコストup、顧客の「不」や「非」の解消による顧客ロイヤリティ囲い込みができているか。
・そのビジネスモデルが、7つの参入障壁(ポーター)のどの要素に関わっているか。
後半は、代表的なビジネスモデルの類型についてのケーススタディでした。
対象市場定義型、専門家モデル、アズ・ア・サービス、レイヤーマスター、SPA、エコシステム、顧客のコミュニティ化、を例示。
事例企業は、エスプール、KeePer技研、カチタス、ドーン、Veeva Systems、ニトリ、ハーレー、デイトナなど。緻密に構築されたビジネスモデルが、参入障壁を強化し、価値を創造するプロセスが分かりやすかったです。
また、KeePerやドーンのように、複数のモデルを重層的に兼ね備えている会社は競争優位性をより強固にするという点もポイントだと感じました。
企業を見る時、つい「戦略」の部分に目が行きがちですが、
- 競争優位性を持続させるビジネスモデルがあるか、それはどんなモデルなのか
- ビジネスモデルを強化するためにどんな工夫、努力がされているか
- ビジネスモデルと整合性のある業務プロセスが全体最適の観点で構築できているか
などに注目すると、強い企業を見極める眼も養えると思いました。
追記)大学のゼミのテーマが、かつて一世を風靡した「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)」でした。BPRは、業務プロセスを顧客視点でサプライチェーン全体まで含めて根本的に再設計するというもので、今回の「全体最適」に通じる部分があります。
ただ、今思えば、当時のリエンジニアリングは、結局業務効率化の話に留まり、参入障壁を持続的に高め、フランチャイズバリューを創造するというビジネスモデル構築の次元には達していませんでした。なので言葉自体が一時の流行で終わってしまったのかもしれません。