鎌倉投信の社長、鎌田恭幸さんの新著です。ご恵贈頂きました。
ありがとうございます。
私が鎌倉投信の「結い2101」の積立投資を初めて間もなく11年です。今の「投資観」を形作った原点が鎌倉投信なので、共感しながら読みました。
お金を増やすことだけが目的化した先に未来はあるか
投資はお金を増やすもの、という一見当たり前の事実に対する問題提起から、この本は始まります。
あなたが投資によって、将来見たいものは、お金「だけ」を手にしたあなたの姿なのだろうか?(はじめに)
この本が伝えたいことは、大きく3つあると思いました。
・投資とは、社会をよくし、未来をつくり、自分自身を豊かにするものである。
・自分なりの「投資観」を確立し、長く続けることが成功につながる。
・「リスク」と「リターン」だけでない「第3の軸」が求められている。
本来、投資とは社会の課題を事業で解決する企業にお金を託し、企業活動を支えることを通じて、会社に関わる人々を幸せにし、社会を豊かにし、その結果として生まれた価値の一部をリターンとして受け取るものです。
投資は、社会と経済、いまと未来をつなぎ、価値を生みだすためにある。投資した会社が社会を豊かにするなかで、人に必要とされ経済的な価値が循環しはじめたとき、あなたのお金は増えて手元に戻ってくる。それが、投資の本来の姿であり、良くも悪くも社会を形づくるものなのだ。(p98 価値の循環がリターンをつくる)
それが、なぜ「お金を増やすことだけ」が目的化してしまうのか。ひいては、度重なるバブルや、社会課題を解決するどころか環境問題や格差などの課題を増大させてしまうのか。現代の金融市場、株式市場の構造の面から解き明かしています。
そして、「いかに効率的にお金を増やすか」だけを目的化した投資は、地球環境や経済と社会の調和の面から持続的ではなく、リスクとリターンだけでは測れない新たな投資の軸が必要であると指摘しています。
「お金を増やすだけではない」投資の新たな選択肢
鎌田さんは、投資の第3の軸として3つを挙げています。
・「いい会社」への投資
・「いい未来」をつくる投資
・「自分の成長」につながる投資
この3つは、まさに自分の投資観と一致します。自分がここ10年以上、個別株や投資信託でのアクティブ投資を通じて実践してきたし、今後も続けていきたい投資のかたちです。
このような投資観のもとで長く続ければ、お金を増やしながら、投資家としても成長できると思っています。
このような「社会も自分も豊かにする投資」を実践する個人がふえたら、社会に与える投資のポジティブなインパクトはかなり大きくなるのではないでしょうか。
私もかつて投資していたインデックスファンドの問題点にも触れています。よろしくない会社にも丸ごと投資してしまうことや、個々の会社との対話が難しい点に加えて、世界の経済規模の拡大を前提としていること自体が、気候変動や資源の枯渇など地球そのものの制約を考えれば大きなリスクの先送りにすぎないとの指摘はその通りと思いました。
新NISAが盛り上がる中で、「自分も投資をしないといけないのでは?」「でも投資は少し怖い」と思っている人や、「投資は働かずして儲ける手段である」とネガティブに感じている人にこそ、手に取ってもらいたい本です。
投資がよりよい社会をつくる上で不可欠な役割を果たすものであること、私たち個人も、投資を通じて、社会をよくしながら豊かになれる可能性を理解できると思います。