「ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド」は、海外の運用会社が実質的な運用を行うタイプのアクティブファンドの中では開示が充実している投信です。
長期厳選&インパクト志向の運用哲学と、レポーティングの両面から支持できるファンドなので、毎月積み立てています。
今回は四半期レポートを取り上げます。
ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド(愛称:ポジティブ・チェンジ)
レポートは「ファンド関連のお知らせ」にリンクあり。
運用レポート「エディンバラからの便り」
最新版は2021年10~12月期の四半期分です。その前は半年分(2021年4月~9月)でした。最新版のレビューです。
1.新規に投資/売却した企業の紹介
企業のビジネスモデルや競争力と投資した理由を説明しています。今四半期期はデュオリンゴ(米)、ヌー・ホールディングス(ブラジル)の2社に投資したとのこと。前期のレポートでは売却した企業の売却理由も書かれています。
2.プラス/マイナス寄与した企業の投資判断
個別企業をピックアップして、成長性や市場動向の観点から、投資を継続する根拠を詳しく解説しています。株価動向をなぞる表面的な説明ではなく、ベイリー・ギフォード(以下、BG社)としての投資の着眼点が書かれており、なるほどと思わせる内容です。今期は以下の会社について記載。
プラス寄与3社:テスラ、ASMLホールディング(オランダ)、NIBEインダストリエ(スウェーデン)
マイナス寄与3社:モデルナ、ユミコア(ベルギー)、エムスリー
例として日本のエムスリーについての記述を引用。今の株価がさえなくても、長期的観点で保有継続する理由を説明するのは大事です。
・・・・メディカルプラットフォームを強化するため、セールススタッフの採用や、スタッフのトレーニング等に多額の投資を行いました。こうした投資は、短期的な利益率の悪化につながったため、市場では評価されませんでしたが、私たちは別の見方をしており、同社のコア事業に対する大規模な投資は長期的にはプラスに働くと見ています。
3.ファンダメンタルズの考え方
BG社が、投資先の成長性をどんな指標に基づいて判断しているか説明されています。具体的には「売上高成長率」「営業キャッシュフロー成長率」「成長投資」の3つの指標について、当ポートフォリオは世界株インデックスを大きく上回っているとの解説。
前者2つは分かりやすい成長性の指標ですが、3つめの「成長投資」指標は面白いと思いました。
成長投資 ={(設備投資-減価償却)+R&D}/(配当金+自社株買い)
株主還元の額に対する、将来の成長のための設備投資や研究開発などの先行的投資の割合を示します。BG社が、目先の株価よりも長期的な企業価値の成長を重視していること、また長期的な視点でしっかり資本配分している企業を選んでいることが分かります。
※ただし、このファンドはモデルナ、イルミナはじめヘルスケアセクターの割合が高いのがR&D比率が高い一因と思われるので、割り引いて考える必要があるかもしれません。
10ページ程度なのでぜひご覧ください。欲を言えば、エンゲージメントの内容などもう一段深掘りしてほしいですが、まずまず及第点です。
外国株式の運用を、海外の運用会社に実質的に任せている日本の投信会社の方々へ。それなりのフィーを取っているのなら、最低限これぐらいの情報をまとめ、開示する労力を厭わないでほしいです。
もう一つ、このファンドの肝である、社会的インパクトを考察した「インパクト・レポート」も秀逸なのですが、それはまた別の機会に紹介したいと思います。