海外向けソーシャルレンディングの、クラウドクレジットの運用報告会に参加しました。
同社のファンドの中では、ペルー小口債務者支援プロジェクト、カメルーンの中小企業支援や農業支援ファンド、そして最近開始したペルーのマイクロファイナンスファンドに出資しています。
2017年1年間の、各ファンドの運用状況と、事業者としての運営体制と今後の展望をお聞きしました。
クラウドクレジットの運営近況
同社は開業後3年半を迎えます。ローンファンドの残高は累計約58億円に達しました。
2018年末までに、ユーザー登録2万人、単月黒字化を目指します。先日の「ガイアの夜明け」で特集されて以降、ユーザー登録が急増。去年末に1万人だったのが一気に15,000人近くにまで増えており、目標達成は現実的です。
一人当たりの平均投資額は約90万円です。ユーザー登録したうち半分ぐらいが実際にファンドを購入しています。
先般、フェムトからの4億円の出資受入れ、電通子会社との提携を発表するなど、本格的な事業拡大ステージに入ってきました。スタッフも37人と大きく増えています。
2018年は、「営業」「組成・運用」「態勢整備」「IR」の4本柱で機能強化を掲げています。杉山社長からは、コンプラも含めて規模や残高に応じた体制をしっかり整えていくとのコメントがありました。
過去には、法的に問題ないものの、運用上の手違いや細かいミスも起こっています。今後TVの影響で資金がどんどん入ってくると思いますが、急がずじっくり進んでほしいです。
各ファンドの運用状況
クラウドクレジットのローンファンドは様々なスキームがあり種類も多いです。今回はタイプ別に分けて説明頂いたので分かりやすかったです。
【事業者貸付型】
:現地の消費者ローン事業会社への貸付を行うもの
-東欧金融事業者支援ファンド、マイクロローン事業者ファンドなど
【プラットフォーム型】
:現地パートナー企業が運営するP2Pレンディングプラットフォームでローン債権を購入し運用するもの
-欧州3ヵ国個人向けローンファンド、リトアニア個人向けローンファンド、バルト三国自動車リースファンドなど
【不良債権購入型】
:現地金融機関の中小零細事業者向け不良債権を簿価より大幅に安く買い取り回収
-ペルー小口債務者支援プロジェクト
【トレードファイナンス型】
:現地中小企業向けトレードファイナンス事業への参画
-カメルーン中小企業支援プロジェクト、農業支援ファンド
予定通り返済や償還がされているファンドも多い一方、そうでない案件も生じています。
「欧州3ヵ国個人向けローンファンド」では、一部で借り手の延滞や貸倒が発生しており、ファンドのリターンが当初見込みを確保できなくなっています。最もハイリスクな「ハイイールド型」では、元本割れの可能性も高いとのこと。
また、カメルーンファンドの一部でも、与信先企業の債務不履行が発生し、担保在庫を売却して回収を図るため運用期間を延長する対応を取っています。
一本のファンドに複数のトレードファイナンス債権を組み込み、債権額も分散してリスク低減を図っていますが、フロンティア国ということで想定通り進まないことも多いようです。現地パートナーのOvamba社とは、週1のSkypeミーティングなど意思疎通を図っていて、運用体制は以前より改善されているとのこと。
各ファンドの運用状況はHP上で「期待リターンマップ」として感覚的に分かるように開示されています。
(2017年12月末時点の期待リターンマップ|クラウドクレジットより転載)
ペルーのファンドは順調ですが、購入した債権の回収ペースが当初の頃よりもやや落ちてきているため、今は新たなファンドの組成はストップし、様子を見ている状態です。一方、既存ファンドに組み込んでいる中では、回収開始から3年以上経過しても回収が進み、購入額に対する回収率が200%を超えるなど堅調な債権ポートフォリオもあります。
ソーシャルレンディングも分散投資は重要
遅延や貸倒れ、と言われると敏感に反応する人もいますが、そもそも海外のハイイールドなローン債権への投資なので、相応のリスクがあります。ファンド組成上も一定のデフォルト率を見込んでいます。
質疑では、各ファンドについて、当初の期待リターンと実績の乖離、その原因をもっと分かりやすく伝えるべきだ、との厳しめな意見も出ました。そこは同意します。
ただ、杉山さんも言っていたとおり、融資型クラウドファンディングも、複数のファンドに時期を分けて分散投資しリスクを低減することが重要です。例として10万円ずつ10本、という話がありましたが、そうすれば(急激な円高などの為替リスクは置いておいて)投資したファンドが全部元本割れするような事態は避けられるのではないでしょうか。
実際に、クラウドクレジットの投資家全体の平均リターンは、今のところ大半が7%~12%程度に分布しているとのグラフも示されました(為替レートを現況のまま固定した場合の推定値)。
一方で、自分の場合は「先進国の余っているお金を、成長力はあるのに資金が足りない新興国・途上国に供給する」という社会的意義を重視してクラウドクレジットのファンドに投資しています。
ですので、個別のファンドで延滞や元本割れが発生したとしてもあまり気にならないし、投資したもの全体である程度プラスになればいい、程度のつもりです。(逆に言うと、ガッツリ投資するということはしません)
(参考)現在、クラウドクレジットでの投資は、リスク資産への投資のうち3~4%程度です。
今後の動きで注目しているのは、最近投資したマイクロファイナンスファンドの展開です。同ファンドは、従来のハイリスク・ハイリターンのローンファンドとは一線を画し、社会的投資の性格を前面に出しています。今後、社会的リターンの測定やインパクト評価などについても検討していくとのこと。
2018年は、このマイクロファイナンスファンドと、アフリカのリニューアブル事業者(オフグリッド電力など)向けファンドを主力に新規組成していくそうです。期待しています。
※セゾン投信の中野社長のPodcast「中野晴啓のはるラジ」(Vol.43)で、クラウドクレジットの杉山さんとの対談が配信されています。
【過去記事】
昨年の運用報告会の模様です。