セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

いい会社の理念経営塾・第5クール最終回(株式会社えと菜園/NPO法人農スクール・小島希世子さん)

NPO法人いい会社をふやしましょう主催の、「いい会社の理念経営塾」にひさびさに参加しました。

第5クールの6回目のゲストは、熊本と藤沢を拠点に、農薬・化学肥料なしの野菜づくりに取り組んでいる野菜農家、株式会社えと菜園・代表取締役/NPO法人農スクール・代表理事の小島希世子さん。

えと菜園の主な事業は、小島さんの出身地・熊本産のオーガニック作物のオンライン販売、藤沢にある自社農園での野菜栽培&販売、そして一般の人向けの体験農園(コトモファーム)です。

一方、小島さんは、NPO法人 農スクールの代表でもあります。農スクールでは、働く意欲も能力もあるのに就労機会が得られない、ホームレスや生活保護受給者、ニートなどの人たちと、人手不足に苦しむ農家をマッチングし、農業と福祉を結びつけています。

f:id:shimo1974:20171122190848j:plain

働きたくても働けない人達と人手不足の農家を結びつける

熊本の農村で育った小島さんは、物心ついた頃から農業をやりたい、と思っていました。しかし、大学に入り出てきた東京で、駅で寝ているホームレスを見たのが、人生の転機となりました。地方には街なかで寝ている人はまず見ないので、小島さんにとっては衝撃だったそうです。

その後、そのホームレスに声をかけ、やり取りしているうちに、彼らは怠けているわけでもなく、「仕事をしたいのはやまやまだが、住所も電話もないから誰も雇ってくれない」ということを知ります。この体験が、今の農業と福祉を結びつける仕事につながっています。

「農家は人手不足」「ホームレスの人は働きたいのに働けない」、だったらお互いを結びつければみんなハッピーになるはず!と考え、当初は役所の農政課にそのアイディアを持ち込みました。しかし、役所は、「農業は農水省、福祉は厚労省、縦割りだから有りえない」という当然の反応でした。そこで、小島さんは「だったら自分でやろう」と、ホームレス支援団体に声をかけ、協力農家を探し、農園での就労支援を始めました。

小島さん本人にとっては、「誰も困らないし、やらなきゃもったいない」と、ごく自然な流れだったようですが、誰もやらないなら自分でやろう!と行動に移すのが、普通の人と起業家の違いだと思います。

大久保寛司さんが、講演後のトークで、「淡々と話しているけれど、ものすごいハードルをいくつも乗り越えてきている人」と評しましたが、同感でした。

今では、小島さんの取り組みは、新しい「農福連携」のモデルとして取り上げられるまでになりました。当初はあり得ないと言われていた、農水省と厚労省が歩調を合わせ始めたのは凄いことです。

人は野菜を育てながら自分自身を育てている

小島さんの響いた言葉。

「人は野菜を育てながら、自分自身を育てている。」

畑には、人間社会とは全く違う、多様な生き物の世界が広がっています。多くの生き物に触れながら、野菜を育てる経験をすると、人は「生きている」ことを再確認し、自信を回復していくのだそうです。感覚的にはとても分かる気がします。

「どんな人でも、その人にふさわしい環境があれば能力を発揮できる。」

ホームレスの人たちは、勤労意欲が高く、農作業のスキルも十分にある人が多いそうです。農業は、生産から加工、出荷までさまざまな種類の仕事があるので、それぞれの人の個性や得意分野を見つけてあげれば、農家のニーズときめ細かくマッチングできます。

今後は、作り手、買う人、ホームレス、障害者・・・と誰もが楽しめる農園をもっと増やしていきたいそうです。さらに、ゆくゆくは、化学肥料どころか有機肥料も使わず、土と雑草と雨水という自然の循環のみで育てる農法を、食糧難の途上国で広めたいという夢を語ってくれました。

小島さんの本。

ホームレス農園: 命をつなぐ「農」を作る! 若き女性起業家の挑戦
小島 希世子
河出書房新社
売り上げランキング: 41,239

えと菜園のオンラインショップでは、熊本の有機農産物を扱っていますが、提携している生産者の中に、先日ミュージックセキュリティーズのイベントでお話を聞いて、「熊本地震被災地応援ファンド」で出資&寄付させて頂いた、㈱ろのわの東博己社長もいらっしゃるとのことでした。

東さんと小島さんは長いお付き合いということで、こんなところでもつながりを感じました。