セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

ユーグレナ・第18期株主総会

3年ぶりにユーグレナの総会にオンライン参加しました。

出雲社長による事業報告のほか、3代目CFO(最高未来責任者)渡部翠さんの話、そして商品開発担当者による新ブランド紹介など盛りだくさんの内容でした。事業報告と質疑の模様についてメモです。

事業報告

冒頭、出雲社長から、上場後10年を振り返り、この間売上高は28倍、調整後EBITDAは8倍に成長、「仲間」(社員数)は36人から1,070人にまで増えた、株主に支えられてきたお陰と感謝の言葉がありました。

売上の大半は「からだにユーグレナ」を初めとしたヘルスケア事業ですが、今回の総会では、株主の多くが関心を持っているバイオ燃料事業の展望の説明に重きが置かれました。

昨年暮れに発表した、社運のかかったペトロナス、Eniとのマレーシアのバイオ燃料商業プラントについては、出雲社長曰く「人生最大のチャレンジ」ということで、改めて2025年の稼働開始を目指すと力強く宣言されていました。

現在は、鶴見の実証プラントで年間125kリットルの生産に留まっていますが、マレーシアプラントが実現すれば、725,000kリットルという桁違いの生産能力を持ち、ビジネスとして商業化するフェーズにようやく入ることになります。何としても成功させて欲しいと思います。

一方で、祖業のヘルスケア事業は、キューサイの買収による非連続な成長があり、2022年12月期の過去最高売上高(444億)と調整後EBITDA(26.5億)に貢献しました。ただ、決算説明資料にもある通り、ヘルスケアセグメントの調整後EBITDAマージンは前々期の13%から2022年は10%に低下しており、直販の定期購入顧客数も下落傾向であるなど、心配な状況が続いています。

この点については、新ブランドの創出や、ロイヤルティ向上、チャネル強化、キューサイとのコストシナジーという4つの施策の説明がありましたが、当面は広告単価の高止まりなどで収益は厳しいようです。

中期目標として以下が示されました。2本柱で1,000億円ですが、それほど甘くないのではと思っています。
・ヘルスケア事業 売上500億、EBITDAマージン10%台半ばの安定成長
・バイオ燃料事業 売上500億、EBITDAマージン100億のロケット成長

(2022年12月期本決算説明資料)


主な質疑応答

(私の意訳あります)

Q)ユーグレナのバイオ燃料の競争優位性は? 

A)バイオ燃料市場は2030年に6.5兆の成長市場だが、それを全部取ろうとは到底思っていない。競争相手はカーボンニュートラルを実現するための同じ志をもった仲間である、というのが前提。
その上で、ユーグレナは、すでに日本国内で70社のパートナーと実証事業をしており実績がある。プレイヤーが増えているので、業界団体をつくる等の面でもリーダーシップを発揮したい。廃食油など原材料調達コストの勝負になるが、微細藻類なども活用したコスト低減でも優位性が発揮できると考えている。

→ 私も事前にこの質問を送っていました。おそらく同じ質問をした株主が多かったのでしょう。1番目に採用されました。ただし、回答は明確とは言い切れないものでした。バイオ燃料やSAFは成長市場であるが故に、多くの企業グループが参入してきています。市場が成長することと、持続的に利益が出せることは別問題なので、かりにマレーシアのプラントが実現したとしても、原料調達コストの問題も含め、ユーグレナがどう優位なポジションを獲得できるのか、見極めが必要だと思います。

Q)風通しのよい社風づくりについて教えてほしい。

A)ユーグレナは社員を「仲間」と呼ぶ。「新入仲間」「中途仲間」など。2代目CFO川崎さんの提言を受けて、先輩社員2名がメンターとなる仕組み(ペアレンツ制度)も作った。そのほか、社内の交流イベントや部活動、朝会などさまざまな活動でコミュニケ―ションを深めている。

Q)配当開始時期の目標は?

A)毎年出る一番多い質問。(要はいつ「黒字化」するのかということ。) 
 当面はキューサイの連結化に伴う会計処理で赤字継続するが、ヘルスケア500億、バイオ燃料500億の売上を実現できれば、いつとは明言できないが期待に応えたい。

Q)ヘルスケア、バイオ燃料に次ぐ「第3の柱」(新規事業)については。

A)代表的なものがサステナブル・アグリテック事業。農水省の「みどりの食料システム戦略」でも、輸入肥料の高騰への対処と、肥料のオーガニック転換が謳われている。両方に対応できるように、ユーグレナ入りの有機肥料を生産する。この分野に強い大協肥糧がユーグレナグループ入りしている。

Q)EVが普及したらバイオ燃料は要らないのでは?

A)これも多い質問。まず、EVはCO2を出さないが、EVを動かす電気をつくる過程でCO2が発生する。また、EVは新たに買う必要があるが、バイオ燃料は今乗っている車でそのまま使える。
EVとバイオ燃料はそれぞれの持ち場があり、カーボンニュートラルを実現するためにそれぞれが頑張っていくということだと思う。バイオ燃料の敵はEVではない。二酸化炭素。

 

終了後には、3代目CFOの渡部翠さんと出雲社長の対談があったり、開発担当者さんの商品へのこだわりを聞くコーナーもあったりと、会社の今を知れる総会だったと思います。新スキンケアブランド「NEcCO」(ネッコ)は、製品の全てにユーグレナのサステナビリティの考え方が詰まっていていいブランドだと感じました。

出雲さんだけでなく、役員さん全員が緑のネクタイまたは緑色の服で統一していたのはさすがでした。CFOも渡部翠(みどり)さんです(たまたま)。

ユーグレナは、鎌倉投信を通じて知り、2019年から保有しています。4年で株価パフォーマンスはほんのちょっとプラスという程度で、とにかく辛抱強く待ち続けることが求められる会社ですが、乗りかかった船なので、Sustainability firstの実現に向けて引き続き応援していきます。