上場企業を投資対象とする公募投信でも、経済的リターンと社会的インパクトの両方を追求するインパクト投資の流れが出てきています。
代表的な2つのファンド、「ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド」と「世界インパクト投資ファンド」を比較してみました。
私は両方とも保有しており、ベイリー・ギフォードは積立もしています。
ファンド概要
2本とも、日本を含む世界の株式を投資対象とするアクティブファンドです。
企業活動を通じた社会課題解決の視点や社会的インパクトの分析を投資プロセスに組み込んでいる点も共通しています。
ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド
ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド(愛称:ポジティブ・チェンジ)
委託会社:三菱UFJ国際投信
※実質運用はベイリー・ギフォード・インベストメント・マネジメント
設定:2019年6月
組入企業数:32社(2020年6月末)
投資方針は次のとおり。
好ましい社会的インパクト(社会的変化)をもたらす「インパクト・テーマ」に沿って、重要な社会的課題の解決に資する事業活動を、公正かつ誠実に行う企業の中から、投資機会を発掘します。
「平等な社会・教育の実現」「環境・資源の保護」「医療・生活の質向上」「貧困層の課題解決」の4つがテーマとして設定されています。(図は交付目論見書より転載)
世界インパクト投資ファンド
世界インパクト投資ファンド(資産成長型)|Better World
委託会社:三井住友DSアセットマネジメント
※実質運用はウエリントン・マネージメント
設定:2016年8月 (資産成長型は2018年5月)
※決算が年2回と年1回(資産成長型)の2本のファンドがあります。
組入企業数:56社(2020年6月末)
投資方針は次のとおり。
世界の株式の中から社会的な課題や革新的な技術やビジネスモデルを有する企業に実質的に投資を行うことで、信託財産の成長を目指します。
「衣食住の確保」「生活の質向上」「環境問題」が3つの大テーマで、それぞれにいくつかのサブテーマがあります。
なお、両ファンドともにベンチマークはありません。参考指数としてMSCI ACWI(配当込み、円ベース)を使っています。
ポートフォリオ
2020年6月末現在のポートフォリオは次のとおりです(月次レポートより)。
ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド
投資先は計32社です。
上位はテスラ、デクスコム、ASMLホールディング(オランダ)となっています。日本のエムスリーも上位に入っています。
セクター別ではヘルスケア関連が約1/3を占めます。
テーマ別の割合は次のとおりです。(現金ポジション除く)
世界インパクト投資ファンド
投資先は計56社です。
上位はダナハー、ニュアンス・コミュニケーションズ、アジレント・テクノロジーと続きます。セクター別の比率は開示されていませんが、サブテーマでは「健康促進」が2割強と最も大きく、やはりヘルスケア関係が多いようです。
テーマ別の割合は次のとおりです。
資金流出入
2つのファンドの資金の出入りです。SBI証券のファンドページから拾っています。
ベイリー・ギフォードは、今年に入って資金が入ってきています。7月20日時点の純資産総額は約36億円。
一方、世界インパクト投資ファンドは、2018年はかなり資金が入ってきていましたが、2019年以降は流出傾向なのが気になります。(年2回決算と年1回決算の2本のファンドの合計額。2018年1月以降のみ載せています)
純資産総額は2本合計で約328億円。
パフォーマンス
設定日が新しい、ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンドの設定日(2019年6月17日)を基準日として、基準価額の推移を調べてみました。世界インパクト投資ファンドは、2019年6月17日=10,000として換算(分配金再投資)。
2019年6月17日~2020年6月30日のリターンは、以下のとおりです。
ベイリー・ギフォード +44.9%
世界インパクト投資ファンド +0.3%
参考指数:MSCI ACWI配当込・円ベース +1.9%
まだ設定後1年ですが、ベイリー・ギフォードのリターンが突出しています。
直近1年は、コロナショックによる大きな下落があり、インデックスもほぼ横ばいです。その中で+45%はすごいですが、組入比率1位でポートフォリオの1割近くを占めるテスラの値上がりも効いているようです。この勢いがずっと続くことはないと思うので、長い目で見る必要があります。
開示・レポート
月次レポートは、両者とも内容の質・量に大差なく、他の一般的な投信と同様の内容にとどまっています。
インパクト投資を掲げるファンドなので、投資先企業の事業のどこに社会的なインパクトを生む要素を見出して投資したのか、そして実際にどのようなインパクトが生まれたのか、レポートや運用報告書の中でもっと詳しい説明が欲しいところです。
ただし、ベイリー・ギフォードについては、同社の運用哲学や、サステナビリティやエンゲージメントの考え方などを日本語でもかなり詳しく開示しているほか、三菱UFJ投信のHPでも、インパクトレポートのサマリーを載せています。インパクト分析の方法や、教育、環境、医療、貧困解決などの分野別に、投資先の企業が生み出すインパクトを数字を交えて説明していて分かりやすいです。これは続けてほしいと思います。
ポジティブ・チェンジ インパクト・レポート サマリー(PDF)
ということで、トータルで言うと、開示レベルについてはベイリー・ギフォードにかなり分があります。
以上、2つのインパクト投資ファンドについて比べてみました。
運用会社の理念や方針の見える度や、開示の充実度で優っているので、今のところベイリー・ギフォードを積み立てていますが、世界インパクト投資ファンドも投資先にはなかなか特色があって面白いファンドです。今後もフォローしていきます。