セルフ・リライアンスという生き方

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iTrust新興国株式とはどんなファンドなのか

分散投資の一つに新興国株式も組み入れています。
先月、インデックスファンド(eMAXIS新興国株式)を解約して、ピクテ投信投資顧問のアクティブファンド「iTrust新興国株式」を購入しました。

iTrust新興国株式は、ピクテが主にネット証券向けに卸している「iTrustノーロード」シリーズのひとつで、今年の4/28に設定されたばかりのファンドです。

新興国の中でも労働人口が増えている国に特化

ファンドの運用ポリシーは明確です。

「働きざかり~労働人口増加国限定~」という愛称のとおり、新興国の中でも「労働人口の増加している国」の企業にのみ投資します。労働人口とは、生産年齢人口(15~64歳の人口)を指します。

経済の潜在成長力において労働力は重要な要素のひとつです。そのため、労働人口の拡大に注目することで、相対的に高い経済成長が期待される国を厳選します。』

既に「労働人口」が減少している、または減少が予想されている中国、韓国、ロシア等に投資を行いません。』
(交付目論見書より) 


国の成長は、人口だけでなく、資源、技術進歩、貿易、インフラ、政策・・など無数の要素に影響を受けますが、「人口ボーナス」という言葉のとおり、労働力人口の増加と経済成長の関係はある程度実証されています。

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SBI証券のファンド紹介ページより)


以前読んだこの本でも感じましたが、「新興国」とひとくくりにせず、個々の国をしっかり見ようというスタンスは大事です。

従来の新興国株式インデックスとの違い

代表的な新興国株式指数、MSCIエマージングインデックスの割合はこうなっています(3月末現在)。

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一方、労働人口増加国に限った、iTrustの投資対象国はこうなっています。
MSCIエマージングインデックスで半分以上を占めている、中国、韓国、台湾、ロシアは除外されています。

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※MSCIエマージングと並ぶ新興国株式指数として、バンガードも採用しているFTSE(フッツィー)のエマージングインデックスがあります。

FTSEエマージングは、韓国が除外されているのがMSCIとの主な違いですが、すでに成熟国化した中国、台湾が大きな割合を占めている点はMSCIと変わりません。

SBIアセットマネジメント EXE-i(エグゼアイ)|インデックス徒然 (1)新興国とは(1)

 

(参考)iTrust新興国株式の投資対象国の人口ピラミッド

以前調べた、人口ピラミッドが見られるサイト(PopulationPyramid.net)で、実際にiTrust新興国株式の投資対象国の人口構成例を見てみました。

・南アフリカ (2015年 対 2035年)

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・インド (2015年 対 2035年)

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南ア、インドはたしかに2035年時点でも、分厚い現役世代がいます。

これに対して、新興国の中でもすでに成熟化している中国のピラミッドです。上2つとは形の違いが歴然です。中国は、2030年頃をピークに、全人口自体が減少に転じると予測されています。

・中国 (2015年 対 2035年)

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投資先企業の選定プロセス

労働人口の増加に注目するのはいい視点ですが、ファンドのパフォーマンスを最終的に決めるのは、どの国に投資するかではなく、どの企業に投資するかです。

目論見書の記載だけでは、国→セクター→個別企業というプロセスのみで、企業の選定プロセスが詳しく分からないので、ここはもう少し説明がほしいです。

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(交付目論見書より)

※なお、本ファンド(FoFs)の投資対象ファンドと同一と思われるルクセンブルク籍のファンド「日興ピクテ・グローバル・グローイング・マーケット・ファンド」が、SMBC日興証券で販売されています。

そちらの目論見書には、組入企業の評価基準がもう少し詳しく記載されています。
これらの評価と、各国のマクロ経済状況からみたリスクを加味してポートフォリオを決定しているようです。

- バランス・シートの健全性
- キャッシュ(現金)を生み出す能力度合い
- 国際比較で各企業の生産能力が市場評価値でどの程度に評価されているか
- 資本力および製品の市場支配力
- 潜在価値および潜在成長力

ポートフォリオ

7月末現在で、17ヶ国の137社に投資しています。
上位10銘柄は次のとおり。IT、資源系、メーカー、金融などです。これは一時点にすぎないので、期間による変化もみる必要があります。

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運用体制

iTrsut新興国株式のファンドマネージャーは、ピクテのエマージング株式チームヘッドのジョン・モーヘッド氏です。ファンドマネージャーの経歴をきちんと開示しているのは評価できます。

7月にはモーヘッド氏のセミナーが行われたようです。

運用チームの体制は、SMBC日興証券で販売されている「日興ピクテ・グローバル・グローイング・マーケット・ファンド」の目論見書には記載がありますが、iTrustの方には書いていないので、詳しい開示を望みます。

iTrust新興国株式の基本情報

・投資形態:ファンドオブファンズ
 実質的な投資対象は、「ピクテ・グローバル・セレクション・ファンド - グローバル・グローイング・マーケット・ファンド」です。ベンチマークは特に記載がなく設定していないようです。

・決算 年1回(3/15)
・信託期間:無期限
・信託報酬:最大年率1.167%(税込)
・信託財産留保額:なし
・為替ヘッジ:なし

なお、パフォーマンスについては、まだ1期の決算未了につきデータがありません。

「日興ピクテ・グローバル・グローイング・マーケット・ファンド」のレポートによると「2017年2月にポートフォリオの見直しを行った」とあり、労働人口増加国に投資対象を絞ったのは最近のようです。来春の運用報告をみる必要があります。

 

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