セルフ・リライアンスという生き方

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貧困克服への挑戦 構想 グラミン日本(菅 正広さん・著)

国内初の本格的なマイクロファイナンス機関、日本版グラミン銀行「グラミン日本」が昨年9月に事業を開始しました。設立イベントにも参加させて頂きました。

グラミン日本の設立に際して、クラウドファンディングを応援したのですが、リターンで頂いたのが理事長・菅正広さんの著書「構想 グラミン日本」です。

本書では、先進国型マイクロファイナンスの成功例といわれるグラミン・アメリカの取り組みを詳しく紹介するとともに、日本でのマイクロファイナンスの可能性を考察しています。

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人と人のつながりをつくる仕組みが組み込まれた金融

マイクロファイナンスというと途上国のものと思っていましたが、グラミン・アメリカは2008年の事業開始以降、全米に拡大し、約10年で9万人に800億円の融資実績を積み上げ、低所得の人たちのビジネスを通じた生計向上に貢献しました。

グラミン日本の事業構想は、そのグラミン・アメリカがモデルになっているので、グラミン日本を理解するには、グラミン・アメリカを理解するのが早道です。

過去に、グラミン日本のイベントに何度か参加しましたが、この本で、グラミンのマイクロファイナンスの仕組み、オペレーションの流れ、借り手のストーリーがより詳しく理解できました。

特に大事と感じたのは、マイクロファイナンスは、単に低所得の人に少額の資金を融資するという金融サービスではなく、信頼に基づき人と人をつなぎ、コミュニティをつくる仕組みであるということです。

グラミンのマイクロファイナンスは、本家バングラデシュのグラミン銀行でも、アメリカでも、日本でも、借り手5人一組のグループによる連帯責任制(≠連帯保証)と、毎週のセンター・ミーティングへの参加による継続的な関わり&週次返済が基本になっています。


「グラミン・ローン」の申込から融資までの流れ

融資の事前段階から返済までの一連の流れの中に、グループ内の借り手同士での相互チェックや動機付けなどの働きかけ、貸し手であるグラミン側との信頼関係を構築する仕組みが組み込まれています。詳しくは省きますが、あるメンバーの返済状況が他のメンバーの融資条件に影響したりもするので、いい意味での相互支援とプレッシャーが働きます。

与信が低い低所得の人たちに、無担保で融資でき、かつ回収率も高く、持続可能な事業になっているのは、人と人との信頼関係が自然に生まれ、それが担保になる仕組みになっているからです。グラミンのマイクロファイナンスがよくできたビジネスモデルであることが改めて分かりました。

グラミン日本の可能性

また、グラミン・アメリカの実際の借り手のストーリーもたくさん紹介されています。
グラミン・アメリカの借り手は、シングルマザーの人たちが多いそうです。資金の使い道は、物販(衣料品、化粧品、アクセサリー、雑貨等)、サービス(美容、ネイリストなど)などのビジネスが中心で、他の仕事やパートタイムを持ちながら、次のステップを目指すために融資を受ける人もいます。グラミン日本も、当初は主にシングルマザーの人たちを対象にしますが、こういった小商いやプチ起業的なものを想定しています。

格差の拡大、特にひとり親家庭の相対的貧困率の高さが指摘されて久しいですが、国や自治体では予算や人の限界もあり、生活保護制度にしても必要な人を十分捕捉できていません。

障害などで働くことが難しい人は、社会福祉として公的な予算で手厚く保障する一方、働ける能力や意欲がある人には、マイクロファイナンスを活用して好きなビジネスで所得を生み出してもらうことが、サステナブルな貧困解決につながるはず、という菅さんの提言は現実的な解のひとつだと思います。

もちろん、マイクロファイナンスは万能ではありませんが、社会のつながりや地域のコミュニティが希薄化した今の日本でこそ、信頼と共助に根差したマイクロファインナンスのような金融がその可能性を発揮できるのかもしれません。

途上国、アメリカ、日本、どこであれマイクロファイナンスが成功するかどうかは人間を信頼できるかどうかにかかっている。

(中略)

すなわち、「人間はすべて、本来、ビジネス(仕事)をする創造性と技能を持っており、所得を生み出すことができる」「機会さえ与えられれば、貧しい人でも貧困から脱却してよりよい生活を創り出すことができる」という信念である。
「第五章 日本への応用可能性 (p220)より」