セルフ・リライアンスという生き方

投資信託を中心にいい会社、いい事業にコツコツ長期投資。 社会とつながるソーシャルな投資や寄付も実践中。

京都大学の経営学講義Ⅲ 経営者はいかにして、企業価値を高めているのか?(川北 英隆・奥野 一成 編)

農林中金バリューインベストメンツ(NVIC)さんが京都大学で開講している寄附講義「企業価値創造と評価」の講義録・第三集が出版されました。

「米国株式長期厳選ファンド」を通じてご縁を頂いた、同社のファンドマネージャーであり、編著者である奥野一成さんからお送り頂きました。ありがとうございます。

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投資とは、株式を売買して値動きで儲けるものではなく、企業の価値の持続的成長に長期で資本を振り向けること=企業のオーナーになることに他なりません。

そして、そのような「企業を保有する」投資家となるには、競争優位の源泉となるビジネスの構造を理解すること、ビジネスの構造をかたちづくる経営者の考え方を深く知ることが必要です。

そんな思いから始まった寄付講義も5年目となり、2018年は、任天堂、キッコーマン、丸井グループ、ディスコ、SBIホールディングス、という日本を代表する強い企業の経営者が登壇しました。

企業価値を共創する

5人の経営者の講義の中で私が一番響いたのは、丸井グループの青井浩社長です。

丸井は、金融の常識である一方的な「与信」ではなく、顧客の利用実績に応じてクレジットの信用枠が増えていく「信用共創」をコアバリューに据えることで、利益率の高さと貸倒率の低さを両立する独自のビジネスモデルを作ってきました。

青井社長のもと、この「共創」をカード以外の事業にも広げる「価値共創経営」を掲げ、商品づくりや店舗づくりなどで多様なステークホルダーとともに様々な取り組みをしています。昨年には、ファイナンシャルインクルージョンの視点から「tsumiki証券」を開始しました。

丸井にとっての企業価値の定義は、顧客、従業員、取引先、投資家、地域社会という「すべてのステークホルダーの利益の重なり合う部分」であり、その重なり合う部分を広げることが企業価値の向上と考えています。

企業価値を時価総額や数字で語るのではなく、企業をとりまく全ての人の「しあわせの拡大」とする考え方はとても本質的です。

青井さんだけでなく、5人の経営者の話に共通するのは、表現の仕方や事業における具体化の方法は違っても、企業価値の中に社会性の要素を明確に位置付けていることと感じました。

 

投資家の責任

奥野さんは投資家の立場から書いています(第6章)。

「仮説の立案と対話による検証」を回し続けながら、持続的に価値を成長させていく企業を見出していくNVICの投資プロセスが、詳しく紹介されています。

「米国株式長期厳選ファンド」を持っている、興味のある方はぜひ目を通して頂きたいです。これぞ企業を選んで長期投資するアクティブ投資家の仕事だと思います。

そして、最後の川北英隆さんのまとめ(第7章)には、自分の問題意識ととても通じる部分があったので引用します。

投資は一種の投票である。これに対してTOPIXの対象企業をそっくりそのままパッシブ運用の対象とすることは、東証第一部上場企業を無批判に購入することであり、投票権の放棄に等しい。(中略)

現在、投資家はESGに着目し、企業を選別しようと意気込んでいる。他方、その同じ投資家が単純にパッシブ運用を行うことは、投資家としての社会的責任の放棄でもある。

投資はまさに一票を投じることだと思っています。ESG投資が生まれたのも Responsible Investment という考え方からでした。企業が社会の公器であるなら、その企業を選び、企業とともに価値を創る投資家も社会的責任を果たすべき存在です。

 

日本にも強い会社、いい会社はまだまだたくさんあると再認識できる講義録でした。