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当初設定額3,800億円のESGファンド「未来の世界(ESG)」をチェック

2020年7月20日に運用開始した、アセットマネジメントOneの「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド」(愛称:「未来の世界(ESG)」)が、当初設定額約3,800億円という大型設定で話題になっています。これは、「ノムラ日本株戦略ファンド」に次ぐ歴代2位の規模だそうです。

「未来の世界(ESG)」設定額3800億円、みずほ証券がAIも使った販売戦略でコロナ禍を吹き飛ばす| モーニングスター

7月末の投信残高、「未来の世界(ESG)」が20位圏内 :日本経済新聞

「未来の世界(ESG)」、どんな投信なのかチェックしました。

「未来の世界(ESG)」ファンド概要

グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)(未来の世界(ESG))|ファンド情報|アセットマネジメントOne

設定・運用はアセットマネジメントOne、実際の運用は、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントが行います。

日本を含む世界の企業の中から、
「持続可能な競争優位性を有し、高い利益成長が期待される企業」で、
「割安かつESG評価の観点から企業価値の向上が期待できる銘柄」を、厳選して投資します。

投資対象は20~40社とかなり絞り込まれています。長期的な成長性を、ESG評価も考慮して見極め、集中投資する世界株アクティブファンドです。ベンチマークはありません。

なお、アセマネOneでは、同じモルスタの運用する「未来の世界」シリーズを展開しています。このファンドは、2016年設定の「グローバル・ハイクオリティ成⻑株式ファンド」というファンドに、ESGの要素を付け加えたものになっています。

運用プロセスとESG評価

運用プロセスは下記のとおりです。

ESG投資とは?デメリットから考えるリターン向上のポイント|ファンド情報|アセットマネジメントOne

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投資アイデアの創出、クオリティ分析、ポートフォリオ構築の各段階で、ESG評価を考慮するESGインテグレーションを行っています。

ESG評価は、ESG格付会社のスコアリングに基づく形式的な順位付けや、トップダウンのセクター内相対評価ではなく、事業戦略とESGの整合性や、持続的な企業価値向上とESGの関連性に基づき、ボトムアップで定性的に評価します。

あくまで、長期的に成長が見込める質の高い企業を選ぶ要素の一つにESGを位置付けています。その点で、親指数をベースにESGスコアに基づき機械的にポートフォリオを決め、かつ何百社にも分散するようなESGインデックスファンドやETFとは根本的に異なります。ESG投資は本来このファンドのようなスタイルが望ましいと私も思います。

なお、環境、社会、ガバナンス的に好ましくない企業には投資しません(ネガティブスクリーニング)。6月時点の販売資料では、「酒、タバコ、ギャンブル、化石燃料の生産、武器の製造などを主な事業とする企業」や「国による保有比率が20%以上の企業」は除外する、とあり、基本的なスクリーニングは行われています。

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実際の運用者はモルガン・スタンレー

本ファンドのマザーファンドは、香港にあるモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのグローバル・オポチュニティ株式運用チームが運用します。運用哲学とプロセスはこちらに記載があります。

モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント | グローバル・オポチュニティ株式運用戦略

ファンドそのものにはベンチマークはありませんが、このページでは「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」と記載されています。

ESG投資、サステナビリティについての考え方や、エンゲージメントの実例がこちらに詳しく載っています。

ESGとサステナブル投資レポート(PDF)

ESG分析では、企業が長期的に競争優位性を維持できるかどうかに焦点を当てています。評価された分野には、環境的外部性を最小限に抑え、エネルギー、水その他の資源の消費を削減し、コストを削減し、それによって収益性を改善する業務管理、消費者向け製品の安全性、人的資本管理、サプライチェーン管理、規制による影響などの社会的要因、経営者の報酬制度、資本配分、独立した取締役会、透明性のある会計などのガバナンス関連事項が含まれます。

未来の世界(ESG)のポートフォリオ

2020年7月末現在のマザーファンドの投資先は27社です。投資先全部は見つからなかったのですが、上位10社は開示されています。1位から10位は次のとおり。

「ESG」の付かない、もともとある「未来の世界」(グローバル・ハイクオリティ成⻑株式ファンド)の月次レポートをみるとかなり似たポートフォリオになっています。同じチームで運用しているためです。

Amazon
TALエデュケーション(中国)
MasterCard
ServiceNow
Adobe
HDFC銀行(インド)
Zoom
VISA
Spotify
Alphabet

アマゾン、アルファベット、ビザ、マスターあたりはインデックスでも上位企業です。Zoom、Spotifyなどはコロナによるステイホーム関連で株価が上昇した影響でしょうか。ただし、これは7月末の一時点なので、推移を見る必要があります。

業種別、地域別の比率は次のとおりです。
地域別では、MSCI ACWIと比べるとアメリカの割合が高く、欧州の比率は小さいです。ポートフォリオを組むのにインデックスは意識していないことが分かります。

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所感

運用者のESG投資の考え方がきちんと示されている点や、持続的な成長性の観点で企業を厳選している点はなかなか面白いファンドだと思います。

ただ、投信業界のレガシー的なその売り方には疑問を感じます。

このファンドは、みずほFG(みずほ証券、みずほ銀行、みずほ信託銀行)のみで販売されています。3,800億という大きな設定額となった背景は、みずほFGの強い販売力と、姉妹ファンドの「未来の世界」シリーズの好調な実績が背景にあるとのこと。本当にESG投資の観点で投資した人がどれだけいるのかは分かりません。「ESG投資が個人にも浸透してきた!」とポジティブに評価するのは早計だと思います。

過去の傾向から言って、この手の「売れ筋」投信は、当初は販売会社(証券・銀行)の力技で大量に販売されて話題になるものの、その後パフォーマンスが悪くなったり、販売会社がもっと売りたいファンドが出ると、解約が増え、5年後、10年後には忘れられているケースが少なくありません。

これは、販売会社側の問題だけでなく、投資信託を長期の投資商品と考えていない投資家側の問題とも言えます。(今回の売れ行きから考えて、別のファンドを解約したり、株を売ったりして、まとまった金額で一括投資した顧客も多いのではないでしょうか。)

※ちなみに、過去最大の設定額だった「ノムラ日本株戦略ファンド」(2000年2月設定、設定時7,900億円)は、ピーク時は1兆円以上の残高を誇りましたが、今や約500億円にまで縮小。ファンドが残っているだけいいですが。

せっかく「ESG」の冠を付けてこれだけ大きな資金を集めたのであれば、一過性のブームや、販売手数料稼ぎのツールに終わることなく、持続性がある、真にESG投資のすそ野を広げるファンドになってほしいです。