セルフ・リライアンスという生き方

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【鑑定小話】不動産の純収益(NOIとNCF)(その1)

収益還元法による不動産の価格の求め方を超簡単に書くと、

(対象不動産から得られる純収益)÷(還元利回り)=(対象不動産の収益価格) となります。

今回は、この中の「純収益」と「利回り」の考え方についてです。

2つの純収益:NOIとNCF

不動産の純収益の考え方には、大きく「NOI」と「NCF」の2種類あります。

NOIは”Net Operating Income”、NCFは”Net Cash Flow”の略です。

NOI(運営純収益)は、賃料・共益費などの賃貸収入から、維持管理費、水道光熱費、修繕費、固定資産税などの賃貸運営費用を控除した残りの純収益です。

一方、NCFは、文字通り、不動産から生まれるネットのキャッシュフローです。

具体的には、NOIにオーナーとして預かっている敷金などの運用益を加え、いわゆる大規模修繕費にあたる資本的支出(Capex)を控除して出します。

NOIとNCFの具体例

例えば、コンフォリア・レジデンシャル投資法人が先月末に取得した賃貸マンション「コンフォリア二番町」の取得時プレスリリースから、鑑定評価書の概要抜粋です。

NOIとNCFをどのようなプロセスで出しているかが分かります。

資産の取得に関するお知らせ(コンフォリア二番町)(PDFファイル)

運営収益から運営費用を引いて、真ん中より少し下の、「3 運営純収益 78,451千円」がこの物件の鑑定評価上のNOI、「6 純収益 75,763千円」がNCFです。

資本的支出を控除するので、通常はNCF<NOIとなります。

そして、この鑑定評価では、最終的な純収益NCFを還元利回り4.6%で割り戻して、直接還元法による収益価格(上から5行目)を、16億5000万円と評価しています。(DCF法は結論だけが書いてあるのでここでは無視してください)

なお、純収益NCFに対応する利回りがここでは4.6%ですが、NOIベースの利回りを逆算することもできます。

収益価格が16億5,000万円、査定NOIは78,451千円ですので、NOI利回りは、78,451千円÷16億5,000万円 ≒ 4.75% となります。

不動産鑑定評価で求める純収益=NCFが基本

不動産鑑定評価の世界では、上の例のとおり、純収益と言えばNCFのことを指し、NCFに対応した利回り(キャップレート)を査定して評価額を求めるのが現在のスタンダードです。

かつては、いわゆるNOI的な純収益を採用している事務所もあれば、減価償却費控除後の収益を純収益とする鑑定士もいたりして、そもそも「純収益」の内容について統一的な見解がありませんでした。

しかし、REITをはじめとする不動産証券化の普及によって、DCF法に代表される収益還元法の適用基準が確立され、今では、証券化やファンドなどの評価に関わらず、収益還元法の純収益=NCFとして評価する鑑定事務所が大半となっています。

鑑定評価基準でも、「各論第3章 第4節-?の「DCF法の収益費用項目の統一等」」において、資本的支出控除後の、いわゆるNCFにあたる純収益を求めることが定められています。

しかし、鑑定士が用いるこの「NCF」という純収益と利回りの考え方は、実は、一般の投資家や不動産マーケットでの常識とは大分ギャップがあります。

そのギャップについて、別記事に続きます。

【鑑定小話】不動産の純収益(NOIとNCF)(その2)