セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

農林中金バリューインベストメンツ・奥野一成さん(投資信託をもうちょっと身近に感じてみよう勉強会・第5回)

ファンドマネージャーの運用哲学を直接お聞きし、投資信託をより深く知るための「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ」のスピンオフ勉強会。

5回目は、自分も近頃積立を始めた「米国株式長期厳選投資ファンド」の運用責任者、農林中金バリューインベストメンツ(NVIC)のCIO奥野一成さんがゲストでした。

6月29日 「投資信託をもうちょっと身近に感じてみよう」勉強会・第5回(東京都)

奥野さんとは、先月NVICさん企画のブロガーミーティングでご一緒させて頂きました。こちらも合わせてご覧ください。

奥野さんは、機関投資家向けに日本株、米国株の長期厳選投資ファンド(それぞれ20~30社の集中保有)を運用してきました。(米国株式のファンドは最近公募投信として設定され、個人でも買えるようになりました。それがこちら。→ 農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンドに積立開始 )

テーマは「バフェット流永久投資のススメ」。
NVICは、「売らなくていい会社しか買わない」という、長期を超えた永久投資を掲げています。

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投資とは持続的に価値が蓄積する企業のオーナーになること

・売り買いで儲けるのが投資ではない。投資とは企業を保有すること。

・本当にいい会社は持続的に利益を積み上げていく(=価値を蓄積する)ビジネスの構造を持っている。

・価値を蓄積できるのは、その企業が社会の問題を解決し、世の中を豊かにしているから。そういういいビジネスを一生懸命選び、お金を張り付け、オーナーになるのが投資家の役割。

強い会社、いいビジネスとは

・社会にとって不可欠な財・サービスを排他的に提供できる企業。構造として当然に儲かってしまうビジネス。

・定性的には「参入障壁の高さ」「付加価値の高さ」「圧倒的なシェア&規模の経済」「長期的な潮流」・・・など。

リターン6%の永久債

・NVICの考える「長期」とはほぼ永久。株式投資=「永久債」への投資と考える発想。見立てが違い売却した会社も数社あるが、大半は投資開始以来売らずに保有し続けている。

・かりに日本の国債がデフォルトしてもつぶれないような(絶対に必要とされる)企業を選べば、そもそも売る必要がない。

・リスクフリーレートは現在ほぼゼロ。そことの比較でいくとバリュエーション上はリターン5~7%程度を目安にしている。

日本株か米国株か?はナンセンス

・グローバル化した現代、どこに上場しているか(NYか東京か)で判断するのは意味がない。どこでビジネスをしているか?が大事。

・日本企業を見るときも必ずアメリカ、世界を見ている。例えば、ユニ・チャームを見るとき、日本市場での花王との比較ではなく、グローバルにP&Gと比較する。

・人口3.3億人、今も成長しているアメリカは今後も世界の中心で有り続ける。米国市場で強いビジネスは世界70億人に訴求できる。だから日本企業を分析するときも必ず米国を見る。

パッシブかアクティブかよりも重要なこと

・パッシブかアクティブか、ではなく、価値が持続的に増えると見込めるものにお金を張り付けることが大事。

・同じインデックスでも、ダメな会社が排除されないTOPIXは指数としてNG。一方、S&P500は新陳代謝があり、経済のダイナミズムを反映しているいい指数だと思う。ただし、S&P500も全ていいわけではないので、アクティブに投資対象を絞り込むメリットはある。

・NVICのファンドは、(投資対象を厳選することで)全体が上がるときは相場にそこそこ付いていき、全体が落ちるときはそれほど下がらないというポートフォリオになっている。

第一にビジネスの構造、次いで経営者

・経営者は大事だが、より大事なのは、その会社が持続的にキャッシュフローを生む産業構造を持っているかどうか。

・ただ、会社の10年後を見て、その「儲かる構造」のタネを植えるのが経営者の役割。そういう意味で経営者は「投資家」の視点が求められる。例えば、日本電産はM&Aで大きくなったと言われるが、永守さんが先の先を見据えてずっとタネを巻き続けたからこそ今がある。

現場を見る大切さ

・企業文化は経営者ではなく「現場」で分かる。長期投資家のいいところは、毎年継続的に見るので会社がどう変化しているか分かるところ。

・ある米国企業に訪問した時、IRの担当者が当社とのミーティングの場に親と子どもを同席させたことがあった。それは、自分の仕事ぶりを家族に見せたい、自分の会社と仕事に誇りを持っている証拠。実際に現場に行くことで見えることがある。

運用会社・ファンドマネージャーの責任

・投資先企業についてはできるだけ詳しく説明している。パフォーマンスは大事だが、長く持つほど「何に投資しているのか」を知りたくなるはず。したがって、顧客と対話し、運用の考え方や企業について説明することは運用者の責任。

・公募投信の米国株ファンドも、長期目線の顧客に選んでほしいので、iDeCoか積立購入でしか買えないようにしている。証券会社にはあまり「売ってほしくない」のが本音。むしろ、NVICの考え方を分かってもらえる投資家に見つけてほしい。

NVICの運用体制について

・運用チームは約10人。農林中金からの出向者が大半だが、外部人材を採用し始めている。産業構造や競争環境を広く分析し、洞察できる人。実は銀行の営業の人は向いている。最近はコンサルファーム出身者が加わった。株価やマーケットの話ばかりするいわゆる「株屋」は当社にはいらない。

・企業文化はシンプル&フラット。銀行の子会社だが肩書きで呼ぶことはなく全て「さん」付け。メンバー全員で意見を自由に交換する。いいアイディアが思い付いたら、いつでもどこでもビジネスクラウドですぐ共有。

・海外の名だたる運用会社と戦うためには、システム、組織づくりの制約のない銀行の外に会社を作る必要があった。

 

直接、間接にお付合いしている運用会社(レオス、コモンズ、鎌倉投信、セゾン、コムジェスト・・・)の方々と、もちろん考え方はそれぞれ違いますが、ところどころ通ずる部分も多かった気がします。

企業に長期で投資することはどんな意義があるのか? 

あくまでクールに、知識と経験を駆使して様々な角度からビジネスの構造を分析し、持続的に価値を生み続けられる会社を選び、資本を半永久的に配分する。それが結果的に社会の課題を解決し、世の中を豊かにするとともに資本主義のダイナミズムを支える。

この奥野さんの考え方は、投資の本質を現しているのではないでしょうか。

そして、そういういい会社を見極めるには運用会社自身がいい会社である必要があります。奥野さんが、投資家であると同時に経営者として、「最も素晴らしい運用会社でいたい」と言い切れるのは素晴らしいと思いました。

カテゴリー:NVIC・おおぶね