セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

平和をつくるを仕事にする(テラ・ルネッサンス 鬼丸昌也さん・著)【読了】

応援している認定NPO法人テラ・ルネッサンスの創設者、鬼丸昌也さんの新著です。

鬼丸さんの「平和」に込めた思いと、地雷、子ども兵など世界の紛争の問題に取り組むテラ・ルネッサンスの創設以来の活動、そして紛争をなくすために私たちができることについて、平易な言葉で書かれています。

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「ハチミツの奪い合い」をしているのは誰?

テラ・ルネッサンスが取り組んできた、カンボジアの地雷の問題や、アフリカの子ども兵の問題は、日本では縁遠いものと感じる人が大半だと思います。それらの国々は距離が遠いうえ、日々の生活の中で、そのような紛争や戦争を感じる機会もないですし、また、あまり報道されないせいもあるでしょう。

しかし、世界の紛争の多くは実は私たちの生活とつながっています。自分にそのことを教えてくれたのは鬼丸さんとテラ・ルネッサンスでした。

本の中で、あるコンゴのおじいさんが紛争の真実を語る部分があります。コンゴ紛争では、第二次大戦以降最悪と言われる争いによって540万人もの人が亡くなりました。子ども兵の数も数万人に上ります。

コンゴ村には伝説のハチミツがあった。それを発見した三つの村(ルワンダ、ウガンダ、ブルンジ)の村長は、コンゴ村にいる知り合いのグループを味方につけて、ハチミツを奪い取る道具(武器)と知恵(戦術)を与えた。それに反発したコンゴ村の村長は、村の他のグループや隣村の人々(アンゴラ、ナミビア、ジンバブエなど)まで呼んできて、ハチミツを奪い合った。これが、ここで起こった戦争なんだよ。

ハチミツ=アフリカに多く存在する鉱物資源(金、ダイヤモンド、レアメタル、石油・・・)の奪い合いが戦争の根本原因です。

しかし、ハチミツが欲しかったのはアフリカの村長だけではなかった。むしろ、本当にハチミツの魅力に取り付かれていたのは、多くの欧米村の村長や商人(多国籍企業)たちでした。・・・(p91)

そして、紛争当事国や武装勢力のバックには、資源の権益を求める欧米諸国やグローバル企業がおり、彼らは戦争を止めさせるどころか資金や武器を供給し続け、紛争を長期化させ、拡大してきました。植民地支配の時代と変わらない構図が続いています。

私たち日本人も大量に消費している石油や、便利な生活を支えるレアメタルなどの資源をめぐる争いが、悲惨な紛争と子ども兵を生んできた大きな一因です。このことは学校でもあまり教えてくれません。

私たちは微力かもしれないが無力ではない

戦争はやってはいけない、戦争の被害を受けた人は可哀想、と語るのは簡単ですが、そのベースには「自分とは関係ない話」という意識があります。資源を使う側がそういうスタンスでいる以上、問題はなかなか解決しません。

鬼丸さんは、こう言っています。

日常生活の中に、アフリカや世界各地の紛争の原因が存在するという事実は、僕らにささやかな「希望」をもたらしてくれるのです。なぜなら、単純な話で、原因を変えれば、そこから生じる結果も変化するからです。(p109)

日本で、石油やレアメタルを全く使わない生活は難しいです。ただ、世界の紛争と生活のつながりを知り、争いを生まない、助長しないような暮らしを日常の中でほんの少し意識することはできます。

例えば、エシカルな消費やオーガニック、フェアトレード、地産地消など、日々の消費行動を少し見直してみること、そして、預金や年金が軍需産業に使われていないかなど自分たちのお金の行き先により関心を持つことです。
本の中では、HASUNA、パタゴニア、IKEUCHI ORGANIC、鎌倉投信、コモンズ投信、西武信金といった企業も紹介されています。

テラ・ルネッサンスは、紛争の被害を受けた人たちの支援だけでなく、紛争を生む根本を解決することを目指しています。そのために「お金の流れを変える」ことは鬼丸さんの大きな課題意識の一つで、私も一投資家、一消費者としてとても共鳴する部分です。一人一人の消費やお金の量は微かでも、その積み重ねが企業や金融機関の行動を変え、結果的に大きな流れにつながります。

少子高齢化で力は衰えていくとはいっても、日本は個人金融資産1,800兆円、GDP500兆円以上の大国で、通貨も強いです。世界のお金の流れを変えるうえで貢献できる部分は大きいのではないでしょうか。


鬼丸さんの文章は分かりやすく、伝わりやすいです。地雷や子ども兵の歴史的背景もよく分かります。
解決困難のように見える世界の紛争の問題も、日本で暮らす自分たちの行動次第で少しずつ変えていける、という希望をくれる本です。

 

平和をつくるを仕事にする (ちくまプリマー新書)
鬼丸 昌也
筑摩書房
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あわせて紹介したい、末吉里花さんの本。(旧ブログより)