セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

ピジョン・第66期株主総会

今年は株主総会に積極的に出たいと思っています。3月はユーグレナ、荏原ときて最後はピジョン(7956)の総会でした。

ピジョンに投資したのは1年少し前です。なじみのある方も多い会社ではないでしょうか。

・育児用品の最大手。国内はベビーケア・女性ケア用品の製造販売、子育て支援、ヘルスケア・介護の各分野。
・主要製品は哺乳びん・乳首、さく乳器、おむつ、ベビーカー、介護用品「ハビナース」など、ベビー向け哺乳用品とスキンケアは業界トップ。
・海外(売上約60%)は中国・シンガポール中心、欧米・中国では「LANSINO」ブランド、ASEANは「ピジョン」ブランドで母乳関連商品を販売。
(マネックス証券 銘柄スカウターより抜粋)

設立は1957年。2022年12月期:売上高949億円、営業利益122億円。社員数は約4,000名です。

事業報告

事業報告では、「日本」「中国」「シンガポール」「ランシノ」の各セグメントについて、2022年12月期の業績概略がスライドで説明されました。※ランシノ(LANSINO)は2004年に買収した米国のブランド。)

前期は、売上構成比でそれぞれ4割近くを占める主力である日本、中国がともに低迷しました。特に、コロナ禍以降、稼ぎ頭である中国事業の不振が業績の足を引っ張っています。一方、シンガポール事業(ASEANやインド)とランシノは堅調です。

今期は、日本では、商品構成の見直しによる粗利率改善効果が見え始めており、さらなる新商品投入や営業強化を進める、中国では「自然実感」シリーズ(日本の商品名「母乳実感」)の定着が進んでおり、さらに病院産院へのアプローチ、商品ラインアップ拡充、Eコマース強化などを進めるとのことでした。

北沢社長からは、今後の展望について以下のプレゼンがありました。

・中国の出生数低下はしているが、巨大市場であることに変わりはない。

・世界の出生数1.3億人中、既進出市場の赤ちゃんは7,300万人、その中でもピジョンのカバー率は3,000万人(約3割)。まだ成長余地は大きい。

・企業理念(Pigeon Way)を更新。「存在意義」を中心に据えた。「赤ちゃんにやさしい未来像」に向けて、第8次中計策定に際し5つの重要課題(マテリアリティ)も更新。
・第8次中計では、「ブランド」「商品」「地域」のそれぞれにおいてビジネス構造を再構築していく。

ピジョンに投資した理由の一つが、企業理念を中心に据えた経営を行っていることです。総会でも、「この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」とのパーパスを中核とした新しい理念体系について時間を取って説明がありました。株主とも理念を共有するという意味で大事だと感じました。

「赤ちゃんにやさしい未来像」も素晴らしいと思います。

 

2019年2月に、鎌倉投信のイベントで当時の山下社長の講演をお聞きしました。その時のテーマも「理念」でした。

なお、第8次中計での財務目標は次のとおりです。
・3カ年CAGR 売上高:+6.2%、営業利益:+9.5% 
・最終年の2025年12月期で、売上高1,138億円、営業利益1,600億円(営業利益率14.1%)。EPSは72円(FY2022実績)→ 87円(FY2025)
・財務指標はROE14%以上、ROIC15%以上、PVA(※ピジョン版のEVA)70億円以上。(FY2022の実績ROEは11.4%)

質疑応答

参考になった質疑応答の抜粋です。(私の意訳あります)

Q)介護用品はあまり目立たないが。
A) 子会社のピジョンタヒラで扱っている。実はベビーよりも成長率を高く設定しており、今後も新商品を出していくので期待頂きたい。

Q)取締役の構成が「赤ちゃんに寄り添った」ものではないのでは?(保育士さんなどはいない)
A)まずは女性の管理職、役員登用を進めていきたい。ゆくゆくは女性の社員割合5割を目指したい。⇒ これはあまり回答になっていませんでした。

Q)日本と中国の売上規模がほぼ同じなのに、セグメント利益がかなり違う(日本<中国)のはなぜか。
A)商品構成が異なるため。利益率の高い商品(哺乳器やスキンケア)の売上構成が日本は3割程度だが、中国は7割以上なので結果的に利益率が高い。

Q)新たな国や地域への展開は?
A)北米には(従来のランシノブランドとは別に)ピジョンブランドで哺乳器を展開し始めている。将来的にはアフリカにも進出をしたい。ただし時間はかかる(10年単位)。

Q)業績や株価は同業他社より下落が大きい。店頭でもピジョンの商品が減っている気がするがシェアが奪われているのでは?
A)株価下落は、期待が大きかった中国事業の成長鈍化とコロナ禍でのマイナスが原因。日本では哺乳器は高シェアだが、ベビーフードなどは競合メーカーが強いのは指摘のとおり。注力していく。

 

質問にもあるとおり、ここ数年の業績、株価は低迷しています。どうやって営業利益の大半を占める中国の事業を回復軌道に乗せるか、少子化の進む日本で商品力をどう強化して利益率を高めていくか、東南アジアやインドなどでの成長戦略をどうするか、時間の関係もありますが、ありきたりな説明が多く、会社の危機感や巻き返しへの気概のようなものが私にはあまり明確には伝わってきませんでした。中計もやや具体性に欠ける印象です。

哺乳器はじめベビー用品のトップメーカーとしてのブランド力や商品力は揺るがないと思いますし、理念経営の深化も素晴らしいですが、持続的な成長シナリオの確信度という意味では「△」です。目先は中国次第なのでしょうが、継続保有してフォローします。