セゾン共創日本ファンドの月次セミナー「共創日本会議」にひさびさに参加しました。このセミナーもはや9回目ですね。
前半はファンドマネージャー山本さんより「長期投資と決算」。後半はアナリスト大月さんより「企業分析の心得」でした。
長期投資家にとっての決算
・短期投資家にとっての決算は株価材料。短期的な利益取りのための道具にすぎない。(それがいい悪いということではない)
・長期投資家にとっての決算は企業との対話、情報共有の機会。長期的な成長に向けた現状を確認する。課題を議論し、提案し、サポートをする。
・例えるなら、将来金メダルを目指す小学生が、10年後にオリンピアンになる過程での発表会のようなもの。成長を確認し、叱咤激励してあげる。
・例えば四半期決算がいいから石油石炭に投資するか?と言えば、長期投資家としては「できない」。コモディティは差別化困難、ボラが高い。長い目で見れば衰退傾向。なので確信度が持てない。
決算は発表会という喩えは分かりやすいですね。
具体的な投資先の話で、ネガティブな3Q決算だった花王とのやり取りの内容はリアルでした。長期的な観点から、まさに投資先を叱咤激励(いい意味で)して頂いているのが分かります。
リサーチ・企業分析の心得
・本源的価値と株価のギャップがリターンの源泉。そこを探すのがリサーチ。
・リサーチとは「解像度を高める作業」。ぼやっとした企業のイメージから、「機会」「リスク」「予測不可能な要素」を明確にしていく。
・まずは、企業にとってインパクトの大きい要素を絞り込む(何が重要な変数か?)
その変数がどう変化するか、その不確実性はどの程度か。
・不確実性は3つに分類。リソースに対して負のインパクトが大きくなりがちな事象は避ける。
・企業取材の目的は端的に業績予想(5~10期分)を作るため。開示資料では読み解けないことを確認していく。
・業績予想で最も重要なことは、「どのような顧客のどのような課題を解決しているのか」の解像度を上げること。有能なアナリストはここを自分の言葉で説明できる。
・「今ある事実、情報から予想できることは何か」と、「予想できない部分はどこか、それがどのくらい不確実か」を切り分けて考えるのが大切。
・取材準備
①セグメント別の売上・利益率のグラフを作成(過去10年分以上、できるだけ長く遡る)
時系列的なトレンド、変化率を把握、大きく変化したタイミングは何があったのか?
②開示資料(決算説明会資料、事業説明会資料、統合報告書、中計・・・)のチェック
大きく変化した年度を特に確認
・業績予想
①売上高
- ボトムアップ
数量×単価で考える基本中の基本。売上の構成要素を細かく分解して積み上げる。
- トップダウン
市場規模×シェア(×成長率)
シェアは開示されていなくても面談で聞くこともできる。現状と将来の方向性をヒアリング。
- 時系列分析
セグメント別の過去の成長率を参考に予想。
②費用
固定費と変動費に分けるのが基本。ただし、どれが固定費、変動費かは開示されていないので、ざっくり、固定費=人件費+減価償却費、それ以外の営業費用=変動費とするやり方もある。セグメントごとの時系列データ(営業利益率)から推測する方法も併用。
売上予測も費用予測も絶対的な方法はないので、ミックスして様々なシナリオを検証し、面談による確認を踏まえて精度を高めていく。
企業分析や業績予想の基本として役立つ内容でした。あくまで大月さんのやり方ですが、長期で企業を見る立場であれば機関投資家、個人関わらず共通する流れは多いと思います。
「企業分析の心得」は、平日のセミナーで何度か開催したそうです。追加編として、業績予想後の企業価値算定について企画中とのこと。
最後の質疑応答の中でファンド運用についての話があったので備忘メモです。
・現金比率
基本はフルインベストメント。とはいえ解約等に備え標準で現金を2%程度持っておくことが多い。
・ポートフォリオの組入比率
社会的意義の高い会社を厳選しているので基本均等投資。ただし、各企業のベータなども見ながら、組入比率は調整している。(基準価額のボラティリティが大きくなりすぎないように)
山本潤さんのnoteです。過去の本セミナーの内容など。