2月に設定されたセゾン投信の「セゾン共創日本ファンド」。4月号のレポートで、ポートフォリオや上位投資先企業が開示されました。
3月末の投資先は20社。4月上旬に1社追加し、21社で当初のポートフォリオ完成とのことです。
純資産総額は18億円。運用開始したばかりですが、今後の資金流入がどのくらいの規模、安定度になるかは気になります。
ポートフォリオマネージャー山本さんのコメントです。
利益成長率を重視しているため平均的なPERやROEは市場よりもやや高い状況です。成長大型株中心のポートフォリオです。数年先の収益が予想できるものでポートフォリオを組んでおり理論株価は現在株価の少なくとも倍以上あるものを選んでいます。
モーニングスターではグロースではなく一応「国内大型ブレンド」に分類されています。
2月末時点の投資先上位5社は次のとおり。
※ポートフォリオや個別企業の開示は1ヶ月遅れとなります。
荏原、フルヤ金属、ローム、ヤクルト、メルカリの順です。20社前後の厳選投資なので、だいたい1社5%前後の配分でしょうか。メルカリ以外は製造業ですね。フルヤ金属はグローバルニッチとしてよく聞きます。
今号では、組入1位の荏原製作所について紹介されています。抜粋します。
浅見正男社長のリーダーシップの下で、ROICを最重要KPIと位置づけ、経営陣と全社員の意識を改革してきました。安値受注を抑制し納期順守を徹底するなどの地道な活動を積み上げてきたのです。
グローバル市場ではインバータ装着率がより一層低いため、温暖化ガス削減のニーズにマッチする省エネ型のポンプやコンプレッサ等への膨大な置き換え需要が徐々に顕在化するとわたしたちは期待しました。
たとえば同社はLNGの液化工程で使用するクライオジェニックポンプでシェア世界トップです。今後普及していく水素社会においても水素液化向けでトップランナーになる潜在力があります。
ROICなど資本収益性の改善意識の浸透により利益率も上昇しており、今後も脱炭素の流れの中で競争力のある事業を持っているとの評価です。
投資先のほかには、業種別比率や市場区分別(現金比率も含む)などが開示されています。レポートは4ページであっさりしていますが、企業の説明もそれなりにあり、必要最低限はカバーしています。あまり手の内をオープンにはせず、企業分析やエンゲージメントの中身は受益者向けのセミナーなどで補っていくのだと思います。
まだ積立設定はしていませんが、私も引き続きセミナーには参加するつもりです。
荏原は「ポンプの会社」程度の知識しかないので、参考にいくつか数字を拾ってみました。
売上高、営業利益の推移。営業利益率の伸びが目を引きます。
※単位は百万円。2017.12期は9ヶ月の変則決算。2020.12期からIFRS採用により「売上収益」となります。
キャッシュフロー。本業でしっかりキャッシュを生み出しています。設備投資も着実に行ったうえでフリーキャッシュフロー(会社公表値、営業CFと投資CFの単純合計)はプラスで推移。
ROE、ROICの推移。ROICを最重要KPIとしているとのことで、資本収益性が大きく上がっています。2019.12期にROEは8%を超えました。ROEを分解してみると資本回転率、レバレッジは横ばいですが、やはり利益率の伸びが効いています。※会社公表値。細かい定義はこちら。
2030年までの長期ビジョンで、「ROIC10%以上」を目標にしていましたが、すでに到達しています。
セグメント別、地域別の売上比率です。
売上比ではポンプ、タービンなどの「風水力」が半分以上ですが、利益率は半導体向けなどの「精密・電子」事業が高いです。
海外売上比率は約6割です。
山本さんの過去の記事で荏原を取り上げていました。これを読むと組入理由も分かります。
セゾン投信は割安と判断しての投資です。今期の予想EPSは500円、昨日終値ベースのPERは約13倍です。単純計算でかりにEPSが600円まで上がれば、PER22倍ぐらいで株価2倍の水準になります。地味なイメージの会社ですが、研究したら面白そうですね。