積立中の投信の一つ、「スパークス・ジャパン・オープン」の2022年11月の月次レポートで、ユニクロを展開するファーストリテイリング(以下、ファストリ)を取り上げていました。
分析の着眼点が、同社の「平和への貢献活動」とのことで興味深かったです。同ファンドは、2012年からファストリを長期保有中です。
レポートの中で、ファストリが長らく平和貢献に注力しているとの紹介があります。勉強不足で知りませんでした。
・2001年から紛争地域への衣料品の寄贈
・2011年からUNHCRとパートナーシップを組み難民支援活動(アジアの企業としては初)
・2022年からは「PEACE FOR ALL」プロジェクト開始
また、ファストリの柳井会長は、決算説明会などの場で幾度となく、国家間の対立や「平和」について語っています。コロナやウクライナ戦争という状況下であっても、公の場でここまで平和な世界への思いを語る経営者は少ないかもしれません。
(2020年10月、柳井さん発言)パンデミックや国家間の対⽴の時代の次に求められるのは、世界中の⼈々が、快適で、安⼼できる、普通の暮らしを実現する時代です。今後は、⽇々の暮らしをより豊かにする、実質的な価値の伴った商品の時代です。私たちファーストリテイリングは、そのような、安⼼できる「服のインフラ」を世界の⼈々に届ける企業です。⼀つにつながった世界の⼈々の要望に応え、ビジネスを通じて、より平和な世界を実現していきたいと思います。
スパークスは、ファストリのこのような平和への姿勢を、単なる社会貢献ではなく同社のビジネスコンセプトの一部と考えています。
(11月次レポートより)キーワードは同社が掲げている「LifeWear」という製品コンセプトです。LifeWearは「究極の普段着」を意味するコンセプトですが、それが資源不⾜や格差問題といった紛争を引き起こしうる要因を緩和させる仕組みにつながっていると⾒て取れます。
⾼品質でリーズナブルな価格というのもLifeWearの特徴ですが、それによって所得や資産の多寡に関わらず誰もが⾝に着けることができる⾐服、という独⾃のポジショニングを確⽴しています。古くから⼈類は⾐服によって権⼒や経済⼒を表現してきましたが、LifeWearはそれとは対極にある概念と⾔えます。
所得の高低に関わらず、世界中の人々が平等に機能的な普段着を手に入れることができれば、格差がなくなり、平和につながる。従来のファッションが富や権力の象徴だとすれば、ユニクロのLifeWearは平等の象徴とも言えます。とても納得しました。
柳井さんは「服の民主主義」という言葉も使っています。このような「衣」の民主化は、どんなアパレルメーカーにもできる芸当ではありません。普段着としての機能性向上につぎ込まれる莫大な経営資源と蓄積した開発力、圧倒的な規模の経済によって、ユニクロでしか提供できない価格と品質を実現しています。
最近、企業のパーパス(存在意義)についての本を読んでいます。ファストリの基本理念は「服を変え、世界を変え、常識を変えていく」ですが、その根本には「服を通して平和を実現する」というパーパスがあるのかも、と思いました。「平和」というキーワードでユニクロを見たことはなかったので、今回のレポートはとても参考になりました。
ある企業1社をとっても、投資家によって様々な着眼点があります。私の積み立てているファンドの中では、「おおぶねJAPAN」も同じくファストリに投資していますが、視点はもちろん違います。同じスパークスという運用会社の中でも、ファンドマネージャーによって考え方は異なるでしょう。多様な視点を知ることを通じて、企業への理解を深めることができるのも、アクティブファンドに投資する大きな意義のひとつだと思います。