セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

tsumiki証券は新しい証券会社のモデルになるか

丸井グループが設立したつみたて専門の証券会社、tsumiki証券が8月31日にスタートしました。

すでにあちこちで取り上げられていますが、かなりユニークな証券会社です。

・投資信託の「つみたて」に特化
・当初の品揃えは独立系投信4本のみ
・エポスカード会員のみ口座開設できる
・投信購入はクレジットカード決済

tsumiki証券については、クレジットカード払いによるポイント還元に着目する人も多いですが、本質は別の部分にあると思います。

それは、tsumiki証券のビジョンやビジネスモデルそのものの、従来の証券会社とは根本的に違う革新性です。端的には、「つみたてを通じた長期投資が普通の人にとって当たり前になる社会」を真剣に作ろうとしていることです。

つみたて投資に特化

一般的な証券会社の個人向け業務は、超ざっくり言うと株や投信を売り買いさせて手数料を稼ぐモデルです。

一方、tsumiki証券が取り扱う投資信託はノーロードで、しかも積立購入のみです。顧客がコツコツ長期で積立投資を続け、じっくり残高が増えていくことでしか、信託報酬の一部を受け取るtsumikiの利益は出ません。

もちろん、丸井グループ全体で、本業のカードや小売の長期的な成長を見据えた上での証券事業参入ですが、だとしても、つみたて特化は、若い層に長期の資産形成を普及させるための本気の決断だと思います。

品ぞろえの絞り込み

大手の証券会社は、流行りやテーマの商品、自社系列の投信会社が出した商品などを次から次へと品ぞろえします。まだまだ売り手目線で、顧客本位とは言えない部分が多いです。

一方のtsumiki証券の当初の品ぞろえは、6,000本以上もの投資信託から厳選した、たった4本のみです(セゾンバンガードGBF、セゾン資産形成の達人F、コモンズ30、ひふみプラス)。
COO・仲木威雄さんは、今後増やすとしても10本までと明言しています。初めての人にとって、この「シンプルさ」「選びやすさ」はとても大事です。

丸井流の投信販売「小売り感覚&お客さま目線で安心を」 tsumiki証券の仲木COO | 資産運用研究所 | QUICK Money World

品ぞろえだけでなく、Webサイト一つとっても、初心者にできるだけ分かりやすく、親しみやすくを追求しています。

商品選びは「顔の見える運用」を重視

コツコツ投資を継続するには、運用会社の「顔が見える」ことが大事という考え方です。運用会社としっかり対話できれば、自分が投資信託を通じて何に投資しているのか理解できますし、相場環境が悪い時でも投資を継続する動機づけになるので、積立投資の長期的な成果が出やすくなります。

この「顔の見える運用」「対話力」「運用会社との理念の共有」は、投信を扱う金融機関に求められるとても重要なポイントだと思っています。同社のフィデューシャリー・デューティーとして盛り込まれていますが、正面切って宣言してくれるのはうれしいです。

お客さまに安心してつみたてを行っていただくために|tsumiki証券

 

丸井は、収入や世代を問わずすべての人に金融サービスを提供する=ファイナンシャルインクルージョン(金融包摂)を掲げています。tsumiki証券はそのひとつの形です。

さんざん「貯蓄から投資へ」と叫ばれてきましたが、既存の金融業界主導ではなかなか変わりませんでした。今のように相場がいいと「儲かりそう」と投資熱が高まりますが、また崩れると一気にしぼみます。

若年層中心に、投資未経験の人や普通の社会人が、短期的に「儲かった」「損した」という投資ではなく、コツコツ、ゆっくりとした資産形成を生活の一部に取り入れていけるようにするために、既存の金融の枠にはないtsumiki証券のような視点が求められているかもしれません。

生活者に一番近い小売業の視点が、真っ当な金融を大衆化するのかも、と期待を持ちます。

CEO・寒竹明日美さんのブログより。

今回、新たに夢ができました。
30年くらい経って、私がおばあちゃんになって。レストランで隣の席に座った方が楽しそうに「tsumikiでつみたてやっててよかったー」と話してるのを、にんまりしながら聞くことです。
まっすぐ・きよらかな経営をしていきます。

創業にあたって - tsumiki blog

ぜひ、そんな風景をあちこちに生んでもらいたいです。