セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

鎌倉投信 新井和宏さん×テラ・ルネッサンス 鬼丸昌也さん 「平和と資本主義の未来は『個人』がつくる」・第2回(9/19)

鎌倉投信の運用責任者 新井和宏さんと、認定NPO法人テラ・ルネッサンスの創設者 鬼丸昌也さんの対談企画、前回に続き参加しました。

「持続可能な資本主義」というキーワードで、金融と非営利セクターという別々の立ち位置から、語り合う企画です。

そもそもは、アフリカでの元子ども兵など、紛争被害者の社会復帰支援に取り組む鬼丸さんが、紛争の根本原因とも言える資本主義の負の側面と、それを支える金融や投資、経済人としての個人の役割を、新井さんとの対話を通じて見つめ直してみよう、ということから始まっています。

第1回のレポートはこちら。

2回目の議論のモチーフはこんなところでした。新井さんがESGの話題から切り出したのは少し意外でした。

  • 最近のESG投資(GPIF含め)の流れをどう見る?
  • 企業の技術と軍事利用をどう考えるか?
  • 企業の社会化とNPO・非営利セクターとの関係は?

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鎌倉投信から見たGPIFのESG投資

GPIFがESG投資(環境、社会、ガバナンスに配慮した投資)に乗り出したことから、最近「ESG」がトピックとなっています。

鎌倉投信も、ESG対応について企業からアドバイスを求められるケースが増えたそうです。IRの関心は「ESG指数に採用されたい、だったら『いい会社』を選んでいる鎌倉投信に聞いてみよう」という少し安直なものですが。

GPIFのESG投資は、3つの指数に基づくパッシブ運用です。
例えば、採用3指数のひとつ、「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」はこのような特徴の指数です。

・ESG要因を企業の「リスク」ととらえる 
・時価総額上位500社から選ぶ
・公開情報のみで判断

鎌倉投信もESG投資かのように言う人もいますが、少なくともGPIFの行うESGとは根本的に違うことが分かるでしょう。

鎌倉投信は、いい会社の強みをポジティブにとらえます。時価総額に関わらず小さくてもいい会社、社会に必要とされる会社を組み入れます。そして現場に出向き、経営者、社員と直に話し、その他にもいろんな情報や意見を取材して投資判断します。

新井さんも、ESGが掲げる、サステナビリティや長期の企業価値への着眼の方向性は間違っていないし、関心が高まること自体はいいことと思っています。

ただ、GPIFの取り組みが、ESGの趣旨に合致しているのかどうかはよく見極めないといけません。
企業側も、ESGインデックスに採用されることを目的化するのではなく、自社の長期的な価値向上にとって重要な非財務要因は何なのか、真剣に考えて事業活動に組み込んでいってほしいです。そうでないと、ESGという言葉だけが独り歩きし、気づいたら実体がなかった、ということになってしまいかねないと思います。

企業の技術と軍事利用について

最近、大学での武器研究や、企業の武器輸出の解禁など、企業と「軍事」の関わりがクローズアップされてきました。先日の鎌倉投信の受益者総会での投資先企業とのパネルディスカッションでも話題になりました。

パネルに登壇した3社(アドバネクス、リオン、和井田製作所)のうち、特に、アドバネクスの加藤会長の回答は明確でした。同社は、CSR方針で「武器のための部品製造はしない」としています。

高度な技術を持つ会社ほど、軍事に目を付けられやすいです。アドバネクスの姿勢は他社でも参考になるし、匠の矜持としてどの会社も守り抜くべき部分です。

軍需は、一旦手を染めると、安定して売上は上がるかもしれませんが、国との関係もあってなかなか抜けられません。いわば会社にとっての麻薬です。

新井さんは、「テラ・ルネッサンスのように海外で頑張る人たちが、自国の武器のせいで紛争被害者となる人を見ることはあってはならない」と言われましたが、同感です。

鎌倉投信も、私たちのお金を預かって運用する投資家として、投資先が武器輸出や武器製造に巻き込まれないような方策を検討しています。

なお、欧米に比べて、日本では、NPO/NGOと金融機関や投資家、企業との対話が少ないと言います。鬼丸さんからは、企業を軍事に巻き込ませないために、NPO/NGOと企業が積極的に対話していく必要性も指摘されました。

企業の社会化とNPO・非営利セクターとの関係

社会課題の多様化とともに、本来はNPOなど非営利部門が取り組んでいた社会課題に、企業が取り組む時代になってきました。

例えば鎌倉投信の投資先で障がい者雇用に取り組むエフピコのように、規模の大きい企業がビジネスの中に社会課題解決を取り込んでいけば、NPOが取り組むよりも大きなインパクトを生みます。

鬼丸さんによると、例えば、カンボジアで学校建設を行うNPOにとってのライバルは、今やワタミだそうです。知りませんでした。おそらくこの団体(スクール・エイド・ジャパン)ですね。

このように、企業の「社会化」が進むのはいいことですが、一方で、「社会的事業」を生業としているNPOや非営利セクターは、今まで以上に役割が問われることになります。売上や利益という指標がない分、事業で成果をきちんと出すことが求められます。

一方で、新井さんが指摘したのは、どんな事業も「社会にもたらす付加価値をどうやって最大化するか?」が目的であって「営利か非営利か」は手段にすぎない、ということ。これが逆転してしまうと起業はうまくいきません。

むしろ大事なのは、営利、非営利それぞれが得意なノウハウを出し合って連携、協業したり、企業が社会的観点を、逆に非営利セクターがビジネス的観点を持つこと。それによって、より大きな価値が生まれます。

実際に、民間企業が社外取締役にソーシャルセクターの人を入れたり、NPOが理事に企業の人を入れるケースが増えていくとのこと(後者はすでにかなり多いでしょう)。

鬼丸さんによると、京都府庁では職員をNPOに派遣する制度があるそうです。日本でも、企業と官庁の間での人事交流はありますが(私もサラリーマン時代官庁に出向経験があります)、ここにNPOもより加わるといいと思います。

他にも書ききれないほど興味深い議論がありました。オフレコ話も満載で楽しい会です。

最終回の第3回は、10/17予定です。スペシャルなゲスト、枝廣淳子さんが加わります。ぜひご一緒しましょう。

平和と資本主義の未来は「個人」がつくる〜『持続可能な資本主義』著者・新井氏から学ぶ

以前読んだ枝廣さんと新井さんの対談記事はとてもよかったので、楽しみです。