セルフ・リライアンスという生き方

投資信託を中心にいい会社、いい事業にコツコツ長期投資しています。 社会とつながるソーシャルな投資や寄付も実践中。

鎌倉投信の第8回「結い2101」受益者総会(その2)

2017年9月9日開催の鎌倉投信の8回目の受益者総会、後半のレポートです。

全体のプログラムはこちら。

  • 開会挨拶(鎌倉投信・鎌田恭幸さん)
  • 結い2101 決算・運用報告(鎌倉投信・新井和宏さん)
  • 投資先”いい会社”の経営者講演(堀場製作所・代表取締役会長兼社長・堀場厚さん)

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 以上は前半記事です。

  • 投資先"いい会社"の経営者対談(ハーツユナイテッドグループ・代表取締役社長 CEO・玉塚元一さん × 鎌倉投信・鎌田恭幸さん)
  • パネルディスカッション(和井田製作所 × リオン × アドバネクス) 

ハーツユナイテッドグループ・代表取締役社長 CEO・玉塚元一さん × 鎌倉投信・鎌田恭幸さん対談

今回の総会の目玉ともいえる、ハーツユナイテッドグループ(HUG)の玉塚CEOが登壇されました。玉塚さんは、ファーストリテイリング、ローソンの社長を歴任し著名な方です。今年6月、全く畑違いのIT業界、HUGの社長に就任し話題になりました。

ローソン玉塚氏、「超スピード転職」の内幕 | 東洋経済オンライン

HUGについて。鎌倉投信は、デバッグ技術というITの「匠」の視点と同時に、多様な人財が輝ける「人」の視点でも「いい会社」と考えて投資しています。

この会社は現代版の匠。ハーツユナイテッドグループの中核会社であるデジタルハーツはシステムの不具合をチェックする専門の会社です。

デジタルハーツは、「そんなことまで見ないよ」と外国人がびっくりする日本人の細やかさを利用した匠な会社です。さらに、ニート・フリーターを活用して「発売前のゲームを徹底的にチェックさせる」ビジネスモデルも時代にマッチしていて、ニート・フリーターや引きこもり対策としても重要な役割を果たしています。
鎌倉投信「THE COMPANY FINDER」より)

HUGに移籍して間もないタイミングで、玉塚さんの話を聞けるのは貴重な機会でした。

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(以下、敬称略)

鎌田:まず、ハーツユナイテッドグループがどんな会社か教えてください。

玉塚:創業者は宮澤栄一さん(※現取締役会長。第3回の受益者総会に登壇)。ゲームソフトのデバックを中心に手がけ創業16年。全国13ヶ所、海外4ヶ所(※2017年3月期株主通信より)に拠点(ラボ)があり、デバックを手がける検査員(テスター)は約8,000人。
最近は、ゲームだけでなく、IoT、AI、セキュリティ関係など、「非ゲーム」領域の不具合の診断業務も増えている。

やはり人手不足は課題。製造業と比べて、サービス業、特にIT関係は人が全く足りていない。非ゲームの領域でも、プログラマーのような「つくる」人だけでなく、それをチェックするテスターのような仕事がもっとたくさん必要になる。

HUGは、優秀なテスターを採用し育てるノウハウや仕組みがすでにある。それを活かして業界全体で今の8,000人を10万人に増やしたい。

鎌田:サイバー戦争ではバグが狙われる、というように、デバックの技術は世界的に重要。もしHUGがアメリカで上場したら10倍の時価が付いたとも言われるぐらい、海外からも注目されている。

鎌田:次に、玉塚さんの生い立ち、今までの歩みを教えてください。

玉塚:自分は「壁にとことん向き合う」「逃げるのは嫌い」な性格。若い頃に打ち込んだラグビーを通じてそれを学んだ。ラグビーの経験で人生が大きく変わった。
※玉塚さんは、慶応のラグビー部でフランカーとして活躍。84年度の大学選手権決勝で、平尾誠二、大八木淳史、というスタープレイヤーを擁する史上最強軍団同志社に、スローフォワード判定による「幻の同点トライ」で惜敗した名勝負のメンバーでした。

新卒で旭硝子に入った。「海外で働きたい」とずっと思っていて、27歳の時にシンガポールに赴任し、小さな組織のリーダーを務めた頃から、経営に興味を持つようになった。
その後、アメリカにMBAを取るために留学。現地の若いアントレプレナーたちの姿に衝撃を受け、「自分も経営をやってみたい」という思いが強くなった。

MBAを取った後、IBMに入り、コンサルタントとして98年にユニクロの柳井さんと会った。柳井さんの示した、従来のアパレルの常識を変える、ベーシックなアイテムに特化した製造小売り(SPA)のモデルにショックを受け、ファーストリテイリング(当時は宇部)に飛び込んだ。

その後のユニクロは急激に成長したが、店舗、物流、人・・全ての面で急成長に組織が追い付かず、一気に停滞期を迎えた。そんな中の2002年に社長に就任した。

ファーストリテイリングの社長就任後は、「もう一度お客さんの声を聞こう」と、主婦、女子高生、サラリーマン・・・と消費者インタビューを徹底的にやり、「ベーシックで品質のいいアイテム」という基本に立ち返った。

鎌田この消費者インタビューの話もそうだが、ファーストリテイリング、ローソン時代の玉塚さんに共通するのは、「徹底した現場主義」だと思う。

鎌田:HUGに入社した経緯、創業者の宮澤さんとの出会いは?

玉塚:ローソンが三菱商事にTOBされ子会社となった頃、とある方に、とても面白い、しかし悩んでいる経営者がいると(創業者の)宮澤さんを紹介された。
宮澤さんは、本当にビジョナリーで、とても魅力的な人。彼の大きなビジョンを実現してくれる人が欲しいという熱意に魅かれた。柳井さん、新浪さん、と向き合ってきて、次に向き合うべきが宮澤さんと思っている。

HUGの社会的な役割について。HUGがテスターとして採用するのは、いわゆるオタクや、ドラクエ11を発売前にプレイできることに喜びを見出すゲーマーと呼ばれる人たちも多い。
一方、今はニートやフリーターが350万人いるとも言われている。彼らは比較的高学歴で、かつ家も貧困ではない。彼らが社会とのつながりを持てる、社会に出て活躍できるロールモデルをHUGは作りたい。この350万人の人たちが活躍してくれたら、日本にとってすごいこと。

鎌田:デジタルハーツは、Xboxのデバッグ受注で急成長したが、マイクロソフトの社員より当社の方が10倍バグを見つけた、という(テスターの技術レベルの高さを示す)話もある。

玉塚:デバックに求められる「重箱の隅をつつく」細かい作業は、本来日本人のDNAに備わっている。今までの経験値や、テスターの教育ノウハウが蓄積されてきているので、<DNA × 教育 × 技術> で成長していきたい。

HUGの仕事は「黒子」かもしれないが、今後圧倒的にニーズがあるし、もっと社会から求められる会社になる。多様な人財が活躍できるプラットフォームになり得る。

<質疑応答>

(Q)「人を育てる」うえで大切なことは?

玉塚人間は大きく「自立型」と「依存型」に分かれる。「自立型」は、自分に矢印をむけられる(自分ゴトとして考えられる)人。「依存型」は、外に矢印が向いている(すぐ他人や環境のせいにする)人。
「自分がオーナーシップをもって解決する」ということを理解した「自立型」の人をどれだけ増やせるかどうかだと思う。

(Q)HUGの宮澤さんが、玉塚さんを選んだ理由は何だと思うか?

玉塚:「直感」だと思う。ローソンを辞めたら、全く違う業界に行きたいと思っていた。人には「挑戦するリスク」と「挑戦しないリスク」がある。自分は「挑戦しないリスク」の方が大きいと思ったし、「挑戦するリスク」を取った方が成長できると思った。

鎌田:玉塚さんは「人を公平に評価する」「人が好き」な人。だから宮澤さんが玉塚さんを選んだのではないかと思う。

スマートな雰囲気と華麗な経歴から、メディアで見ると、どちらかというと近寄りがたいイメージでしたが、実際の玉塚さんは、超熱く語るエネルギッシュな方で、むしろ親しみやすさを感じました。イメージと実際は違うものです。HUGをどうかじ取りされるのか期待しています。

パネルディスカッション(和井田製作所 × リオン × アドバネクス) 

最後のパートは、「匠」な投資先企業3社の経営者と、鎌倉投信新井さんのパネルディスカッションでした。登壇者は次の方々。

・(株)和井田製作所 代表取締役会長兼社長 和井田光生さん
・リオン(株) 代表取締役社長 清水健一さん
・(株)アドバネクス 代表取締役会長 加藤雄一さん

まず、映像や資料で、各社の概要を説明頂きました。

和井田製作所

和井田製作所は、飛騨高山に本社を置く、工作機械(研削盤)のメーカーです。研削盤は、金型部品や切削工具をつくるために不可欠で、日本のものづくりを縁の下で支える存在です。機械で削った後、手仕事でミクロン単位の精度でならしていく職人技も紹介されました。一緒に登壇したアドバネクスの工場でも、和井田の研削盤が活躍しています。

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リオン

リオンは、補聴器のトップメーカー。もともと音響や物理を研究する「小林理学研究所」から始まりました。リオンの由来は理学の「リ」と音響の「オン」です。補聴器以外にも、スーパーカミオカンデの液中微粒子計など、さまざまな製品を作っています。
新井さんが会社訪問した際、売上や利益ではなく、経営理念やどう社会に役立っているのか、ということばかり聞いてくるので、清水社長は「ファンドマネージャーらしくない変わった人だな・・」と思ったそうです。
NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」でも、新井さんがリオンの若手社員に、仕事のやりがいや誇りについて尋ねるシーンがありました。清水社長としてはドキドキだったそうですが、あのシーンを経て、無事投資先に加わりました。

アドバネクス

アドバネクスは、精密ばねをはじめとする金属加工部品メーカー。最近新しく結い2101の投資先に加わりました。かつての社名は「加藤スプリング製作所」で、現在の加藤雄一会長は3代目です。
ニッチな分野で、時代ごとに「世界トップ」の製品を生み出してきました。海外進出も積極的で、輸出に頼らず現地生産するスタイルを取っています。精密ばねは、顧客ごとにカスタマイズする受注生産がメインですが、今後は汎用の規格品市場を開拓していこうとしています。

3社とも、ニッチだけれど世界で必ず必要とされるトップクラスの技術力と、開発力を持った会社です。

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(左から新井さん、アドバネクス加藤会長、リオン清水社長、和井田社長)

(以下、敬称略)

新井:(和井田社長に)高山という地方で、若い人をどう集めているのか。

和井田:地元の工業高校から推薦で採用したりしている。高山で機械を作っている製造業はうち1社なので、採用環境は実は恵まれている。高山は、緑や水がきれいで、清らかな精神が持てるので、ものづくりにはとても適した場所

新井:ニッチな企業には地方都市は適している。和井田の社員さんは、職場と家が近いのでお昼は家で食べているとか。

新井:(リオン清水社長に)補聴器はユーザー個々に対応する必要がある製品と聞くが?

清水:補聴器は、作る工程だけでなく、ひとりひとりの耳に合わせる「フィッティング」の部分で匠の技術が求められる。耳の形はさまざまだし、聞こえにくい音質、周波数や音量も個人毎に違う。なので、補聴器はオーダーメイド、対面販売の極みの製品。
小さい補聴器の中に、マイク、アンプ、イヤホン、電池が全て入っているが、こういった部品も耳に合わせて配置する。

新井:(アドバネクス加藤会長に)紹介映像の中で、機械を社員さんが磨いているシーンがあったが?

加藤:古い機械を大切にメンテしながら長く使っているので、他社の見学者に驚かれる。錆びた車でも普通に走れるように、汚れた機械でも性能には関係ないが、汚い機械を使っていると結果としてミスも起こりやすい。いい機械を健全な気持ちで使わないといい製品は作れない。
製造業では普通「不良率」を下げることを目標にするが、アドバネクスは不良率ではなく「良品率」という言葉を使う。「ザ・シークレット」という本で「意識がフォーカスしたことが実現する」という考え方がある。「不良品を出さないようにしよう、しよう」とマイナス面にフォーカスすると実際に不良率が高まってしまう。そうではなく、「良品を出そう」とプラスの方に意識を向けるため、良品率という言葉を使っている。

→「ザ・シークレット」は私も愛読していました。引き寄せの法則を書いたベストセラーです。スピリチュアルな話を、匠な会社の経営者が引き合いに出すのは意外でしたが、ものづくりも結局人の心、意識次第なんでしょうね。

新井:映像で出てきた「世界一マーク」について教えてください。

加藤:ニッチでも「小さな世界一」に目を向け、世界一の製品をつくる機械に世界一マークを付けている(150個ぐらい)。社員に誇りを持ってもらう取り組み。

新井:アドバネクスはどうやって海外現地法人を信頼して、任せている?

加藤:ただ相手を「信頼」し、まかせるだけの簡単なこと。自分が相手を信頼すれば、相手の信頼も返ってくる。海外拠点の責任者は大半が現地の人。彼らの報酬は日本の本社ではなく、自分で決めることができる。
日本企業は、現地のことが分からないのに、現地をコントロールしようとする。本社はコントロールセンターではなく、サポーティングセンターであるべき

新井:(和井田さんに)「お金にならない仕事は和井田にやらせておけばいい」と業界で言われていると聞いたが?

和井田自分の仕事が社会の役に立っているというプライドを社員が持てることが大事。その結果として少しの利益が出て、企業が永続できればいい。

最後に、新井さんより、新井さんの横浜国立大の社会起業論クラスで学び、今年リオンに入社した新卒社員さんからの手紙が紹介されるサプライズがありました。

<質疑応答>

(Q)他人を信頼するうえで、何を一番見ているか。

和井田:誠意を持ってハートで人と向き合うことが大事。

清水:目は心の窓と言う。面接でホンネを言ってくれない学生に対しては、相手の目を見るようにしている。

加藤:信頼するしないの判断基準云々よりも、ひとりひとりに興味を持つこと、相手が何を欲しているのかを知ろうとすること、相手の人生を大切にすることが大事だと思う。

(Q)最近、科学技術の軍事利用が話題になっているが、各社どういう方針か。

和井田:工作機械は輸出に経産省の許可が必要。核兵器やミサイル向けはもちろん、通常兵器向けの製品もつくらない。

清水:例えばリオンでは「加速度ピックアップ」という製品がある。この技術がミサイル制御にも使われたりするので、一定の性能の製品には輸出規制がある。

加藤 アドバネクスのCSR方針の中で、よりよい世界の実現のために、武器のための部品製造はしないことを明確にうたっている。

新井:最近の武器輸出解禁の動きは注意深く見ている。匠な、いい会社が、軍事に巻き込まれないようにするため、鎌倉投信としてはそういう恐れがあれば「モノ言う株主」になって止めたい。

第8回受益者総会を終えて

今回の総会は、ものづくりを通して社会に貢献している企業と経営者に触れることができました。企業展示でも、日常生活であまり意識しない、縁の下の力持ち的な素材系の企業も参加していて、投資先を身近に感じられたと思います。

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自分は第5回から参加していますが、今回の「匠」の切り口は初めてで中味の濃い総会でした。目玉だった堀場さん、玉塚さんのパートはとても面白かったですが、個人的には、アドバネクスの加藤会長の経営論には感銘を受けました。機会があればまた話を聞いてみたいです。

鎌倉投信の社員さん、運営ボランティアの方々の尽力で、進行、内容ともに素晴らしい受益者総会でした。ありがとうございました。来年の総会はまた横浜に戻ってきます。

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(日本環境設計の岩元会長がデロリアンを京都まで運んできてくれました)

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