セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

「ポバティー・インク あなたの寄付の不都合な真実」上映会(恵比寿ソーシャル映画祭)

寄付月間と「恵比寿ソーシャル映画祭」のコラボ企画で、久しぶりに映画を観てきました。
ポバティー・インク」は、途上国に対する寄付や援助の負の側面を描いたドキュメンタリーです。

【寄付月間2016:公式認定企画】恵比寿ソーシャル映画祭 Vol.6を12/07(水)に開催致します

「ポバティー・インク」、直訳すると「貧困株式会社」です。
映画では、ハイチやアフリカを舞台に、先進国の押しつけ援助がむしろ現地の自立を阻害し、「貧困産業」化している現状が、支援されている側の声に基づきシニカルに描かれています。

●途上国への先入観が生む「押しつけ援助」

映画ではこんなケースが取り上げられています。
・アメリカが補助金を使って安いコメを大量に送り込んだハイチでは、国内のコメ農業が崩壊。仕事を失った農民が都会に出てスラムを形成、むしろ貧困を生んだ。
・ハイチの大地震後にNGOが送った太陽光パネルのせいで、現地の太陽光パネルメーカーの売上が激減。
・大量に送られてきた古着のせいで、ケニアでもともと盛んだった国内産のコットンによる繊維産業が崩壊。

これらは、援助で自立を促すどころか、「援助への依存」を生みました。
背景にあるのは、「途上国は貧しくてかわいそう」「彼らは自力では自立できない」、だから助けてあげないといけないという、先進国側の固定的な先入観です。

また、大きなドナーやNGOにとっては、途上国が成長して援助卒業すれば、仕事がなくなるわけで、本当は自立して欲しくないと考えている、とも指摘しています。少し穿った見方かもしれませんが、「援助のための援助」として援助自体が自己目的化しているとの批判は分からないではありません。

先日のテラ・ルネッサンスのイベントでも、理事長の小川さんがアフリカ援助の「パターナリズム」として指摘していました。


●魚をあげるのではなく魚の釣り方を教える

では、ハイチやアフリカの人達の自立をサポートするにはどうすべきなのか?
この映画は、「援助が100%ダメ」とは言っていません。
モノやお金をただ与える援助ではなく、きちんと仕事ができ、お金が稼げるようになるためのサポートこそ大事だと言っています。

「魚をあげるのではなく、釣り竿をあげて、魚の取り方を教える」という喩えは分かりやすいです。もっと進めば「釣り竿の作り方を教える」ことだと思います。

映画に出てくる、ハイチ パートナーズ・ワールドワイドのダニエルさんが言うとおり、「一生施しを受けたいと思っている人」はおそらくいません。どんなに貧しくても、仕事やビジネスを通じて人の役に立ち、稼いだお金で子どもを養い、学校に行かせたいと思っています。

しかし、多くの途上国と言われる国々では、何かビジネスを始めようと思っても、私的財産権が確立していないので店が持てない、担保が出せず融資が受けられない、登記ができない、事業を始める手続きが異常に煩雑(さらに行政の汚職も横行)・・・、といくつもの壁があります。
特に融資は、小規模なマイクロファイナンスはあっても、もう一段上の中小企業に対する金融がほとんどなく、事業を成長させることができません。(ミッシング・ミドルという言葉も出ました)

なので、先進国がやるべき支援は、モノやお金をあげ続けて依存を生むような援助ではなく、公正な社会制度や金融、貿易、市場から人々を排除せずに、誰もがアクセスできるような状態を作るサポート、言い換えれば「法の支配」を確立するための支援だと結論づけています。

●寄付の影響を考えてみる

なかなか深い映画でした。
市場経済に基づかない寄付や援助がマーケットを歪めているとの指摘や、途上国での公正な市場・社会システムの重要性を説いている部分は、やや市場主義的な色合いが強いです。

ただ、何十年も多額の援助をアフリカや途上国につぎ込んでも、貧困が解決していない現状は、従来型の援助の失敗を示していますし、人は助けられるのではなく、自立したい存在だというのは本質だと思います。

自分も、いくつかの国際機関やNGO、NPOに寄付をしています。最近は少額ですが、KIVAで途上国の事業者に融資もしたりしています。
自分としては、長期的に自立をサポートしているような団体を選んでいるつもりですが、特に国際機関や大手のNGOは、活動が多岐にわたるので、彼らが出している情報以外についても活動内容をチェックしてみようと思いました。

応援しているテラ・ルネッサンスやかものはしプロジェクトのように、「課題が解決して団体が解散することが目標」と言い切れる団体かどうかも、寄付先を選ぶ一つの目安かもしれません。

寄付=100%よいこと、ではなく、その寄付をしたことで相手にどんな影響があるか、常に考えることが大事というのが一番の気づきでした。