セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

IKEUCHI ORGANIC新社長 阿部哲也さん×新井和宏さん(鎌倉投信・いい会社訪問)

先週末は、結い2101の投資先企業、IKEUCHI ORGANICの東京ストア(南青山)で、鎌倉投信のイベントでした。
昨年、前社長の池内計司さんから社長を引き継いだ阿部哲也・新社長と、鎌倉投信・新井さんのトークセッション。

以前、夫婦で阿部さんのタオル洗濯セミナーに参加して、阿部さんの話をお聞きしたのですが、経営者としての阿部さんの話を聞くのは初めてでした。



IKEUCHI ORGANICって?という方は、朝日新聞のSDGs特集で紹介された、この映像が素晴らしいのでぜひご覧ください。
「風で織るタオル」、環境も品質も 取引先倒産が転機に

●阿部さんとIKEUCHI ORGANIC

阿部さんがIKEUCHIに入ったのは2009年。前職のカジュアルウェア小売業が民事再生となってしまい、就職活動中に、エコプロダクツに出展していた当時の池内タオルでアルバイトをしたのがきっかけでした。

阿部さんは池内さんに「拾ってもらった」と言いますが、もともとアパレル業界で働いてる中で、大量生産・大量廃棄のシステムには漠然と疑問を感じていたそうです。

こちらの記事でも紹介されています。
矛盾が少ない会社で働くということ(前編)|FACTORY|IKEUCHI ORGANIC 株式会社

●社長という仕事

社名のとおり、池内さんカラーが濃い会社だけに、社長の交代は社内的にも社外的にも大きなイベントです。

池内さんは、もとから身内に社長を引き継ぐ気はなかったようです。
ただ、阿部さん本人に、「次を頼む」と社長を継ぐ意思を直接伝えたのは、池内さんが、体調を崩して入院していた病院で、実際に交代する直前のことでした。

社長となった阿部さんが、日々リアルに感じることは「指示してくれる人がいない」ことの辛さ。
経営者の気持ちはなってみなければ分からない、と言いますが、まさに、初めて気づくことの連続だそうです。

自分も独立しているので、「指示してくれる人がいない」のは同じですが、社員もいないしお金も借りていません。
その大変さは想像できません。

阿部さんは、大久保寛司さんが講師を務める「本気でいい会社を目指す経営塾」にも参加し、徹底的に自分を見つめ直しました。それを機に、「人の話に耳を傾けていなかった」ことに気づかされ、社長となった今は「社員のみんなの話を聞く」ことに意識を向けています。

池内さんと阿部さんのインタビュー記事。
オーガニックな会社を経営するヒト(前編)|FACTORY|IKEUCHI ORGANIC 株式会社

●池内代表との役割分担

社長を阿部さんに譲った池内さんは、現在は「代表」の立場です。阿部さんから見ても、池内さんはなくてはならないIKEUCHI ORGANICの「アイコン」です。

池内さんは現在、IKEUCHIの「ものづくり」に注力しています。ご本人的には「マネジメントはあまり好きではない」そうです。今は大好きなものづくりに邁進しています。

阿部さんは社長として、管理部門、マネジメント全体をカバーします。もともと阿部さんは法人営業や小売、店舗まわりも統括していたので、そちらも引き続き担当されるのかと思います。

上の記事の中で、こんな阿部さんの言葉があります。
池内さんの発想と、会社全体、そして顧客のベクトルを高い次元で統合していく役割が阿部さんの社長像だと思います。

正しいことを正しい言葉でお客様に伝えるためには、池内代表が言っていることと、中で起こっていることと、外で起こっていることが乖離しているのでその乖離を埋めていく作業ですね。乖離はどうしても起こることだと思うんです。外のお客様から見る我々のあるべき姿を近づけていく作業、それをしないとダメだなというか、それをやらないと本当のブランドの永続にはならないとおもっています。


新社長は創業者一族以外から抜擢!(中編))より





●社員からみた阿部社長

マーケティング担当のある社員さんによる阿部社長評は、「社員の声をとにかくよく聴いてくれる」。今治の本社に出張した際には、現場の全社員と面談する機会をつくっています。
そして、「リスクを取ることに寛容」。チャレンジしやすい環境をつくっています。

この社員さんは、鎌倉投信の受益者でもあり、鎌倉投信を通じてIKEUCHI ORGANICのことを知り、某大手外資系企業を辞めて転職までしてしまった方です。
上のインタビュー記事のほか、こんな記事も書かれています。

長く愛されるモノづくり - ほぼ日の塾 発表の広場

●これからのIKEUCHI ORGANIC

最後に阿部さんが語った抱負です。

「普通のことを普通にやり続けていくこと」

「お客様から見た会社は変わらなくても、中身は常に変わり続けること」

「IKEUCHI ORGANICという会社を永続させ、サプライチェーンを変えていくこと」

阿部さんの実直な人となりが伝わってくるいい会でした。池内さんがトップダウンだとすれば、阿部さんは「一緒にやろうよ」というタイプの方ですね。

池内さんが長年培ったDNAが、阿部さんと社員さんの下でさらに進化し、次世代へと受け継がれていくのを、ユーザーとして応援します。

他にも、IKEUCHIの商品はどうして生成りじゃなくて染色するの?という「オーガニック」の基本的な考え方のおさらいや、最近の商品開発、今後の事業展開(タオルのメンテナンス)の話題もありました。

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鎌倉投信・新井さんは、IKEUCHI ORGANICとも定期的にミーティングしているそうですが、受益者に対して、投資先企業の経営者が、通りいっぺんの話ではなく、本音ベースで語ってくれるのは鎌倉投信ならではと思います。

運用会社と投資先が、形式的な対話ではなく、深い関係性で結ばれ、お互いに信頼し合っている、そして言うべきことは言う、こんな関係性こそ、投資家と企業の理想的な関係じゃないでしょうか。