セルフ・リライアンスという生き方

自分も社会も豊かにできるお金の使い方について。日々の投資や寄付の記録を綴ります。

「ESG投資に向けた企業情報開示~統合報告とエンゲージメントのために~」(エコプロダクツ2015 自然資本セミナー)(その2)

三井住友信託銀行(自然資本研究会)のESGセミナーの後半です。
後半は、三井住友信託銀行リサーチ運用部のシニアアナリスト、稲葉章代氏の講演内容です。

前半はこちら。


◎ESGインテグレーションへの取り組み(稲葉氏)

<三井住友信託銀行の運用体制>
・アナリスト22名、FM23名。バリュー、グロース、SRI、ロング/ショートなど何でもやっている。預かり資産残高は、パッシブが8兆円、アクティブ(国内株式)が2兆円。主にアクティブ運用の中で、ESGに積極的に取り組んでいる。

・責任投資は、2003年に年金向けSRIファンド第1号を運用開始したのが最初で実績は比較的長い。SRIファンドでは、日本総研のCSRアンケートを活用したポジティブスクリーニングで投資ユニバースを決定している。
当初は、CSR優良企業=大型銘柄の割合が高くなりすぎたので、最近は、成長性など別の要素も考慮して、中小小型株にも銘柄の幅を広げている。

※公募投信では「SRI・ジャパン・オープン」が該当します。

<ESGの具体的な手法>
・ESGの取り組みは、エンゲージメント、ESGインテグレーション、議決権行使を3本柱。投資先の持続的成長と中長期リターンの向上を目指している。
社内では、「SSC(スチュワードシップコード)エンゲージメント会議」「ESGモニタリング会議」「議決権行使会議」「SRIユニバース選定会議」を定期的に開催している。


三井住友トラストのCSRレポート「責任投資2015」より転載、クリックで拡大)

・一般の運用会社では、アナリストとESG担当者が別だったりするが、三井住友信託では、セクター別のアナリストがESGやエンゲージメントもあわせて担当するのが特徴。
アナリストと投資先との接触は年間9,400社。通常の取材ベースから、説明会等の参加、経営者との対話(年間300件)などさまざま。

・具体的には、「顧客価値」「成長持続性」「リスク要因」を柱にした「事業基盤評価」をもとに、各企業のESGスコアを算定する。
ESGスコアは、ファンドマネージャーにフィードバックして投資判断に生かす。部内での評価の統一性を保つため、社内の相互チェックや検証も行っている。



<ESGのメリット>
・ESGなど非財務情報をきちんと評価しようとすれば、従来よりも投資先企業を深く分析する必要があるので、運用能力の向上につながる。
個々のアナリストがバラバラに持っていた暗黙知を、ESGスコアによって「見える化」し、「組織知」に変えていく。FMから見ても、統一したESG評価があれば、短期的な株価下落や業績悪化局面でも、中長期的観点から積極的に買いやすい。

<スチュワードシップ・コードとESG>
・スチュワードシップ・コードの導入で、投資家と企業の間の「目的をもった建設的な対話」がより重要になった。運用会社側も、対話の幅を広げないと、年金基金など投資家からアセットマネージャーとして選んでもらえなくなる。日本でも、ESGをテーマにしたエンゲージメントは増えつつあるが、どこまできちんとやっているかはピンきり。「運用プロセスにしっかり組み込む」ことが大切。


三井住友信託は、「自然資本研究会」を立ち上げたり、CSO(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)を置くなど、運用会社の中では責任投資分野に力を入れている印象を持ちました。

ただ、現場ではまだまだ試行錯誤の連続だそうです。「中長期的なリターンが向上するはずと“信じて”やっている」とも言われていました。

先日紹介した「フェア・ファイナンス・ガイド日本版」でも、信託銀行では唯一三井住友トラストが入っていますし、アクティブ運用だけでなく、パッシブ運用でも、対人地雷やクラスター爆弾の製造企業にエンゲージメントを行っているそうです。

こうしたESGや責任投資への取り組みの程度も、運用会社を選ぶ一つの基準になりえると思います。
専門的なセミナーでしたが、運用会社の人から直接話を聞けて、理解が深まりました。