セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

「いい会社」のつくり方・WIREDトークイベント(鎌倉投信・新井和宏さん × 日本環境設計・岩元美智彦さん)

鎌倉投信の運用責任者・新井和宏さんと、投資先である、お台場でデロリアンを走らせた日本環境設計・岩元美智彦さんのトークに参加しました。
先日の『WIRED』VOL.23では語られなかった「いい会社」論がたっぷり聞けました。

6/28、トークセッション緊急開催!「いい会社」のつくり方を、新井和宏(鎌倉投信)・岩元美智彦(日本環境設計)に訊く



鎌倉投信を理解するには、鎌倉投信の考える「いい会社」を理解することが欠かせません。対談では、そのヒントがたくさん出てきました。

●「いい会社」とは? どうやって探しているのか?

・漢字の「良い」ではなく、ひらがなの「いい」会社なのがポイント。「いい」は数字で測れない人間の感性の部分。「会社」を「人」に置き換えると分かりやすい。

・その会社にかかわる人みんなが「あの会社はいい会社」と言う会社がいい会社。言い換えれば、会社にかかわる全てのステークホルダー(地球環境も含めて)みんなを幸せにするのが「いい会社」

・いい会社は、社会から必要とされるので永続性がある。社会課題に対してどのような考え方で向き合っているのかを見極める。

本当の「いい会社」を探すには、化粧していない素の姿を知る必要がある。アナリストレポートを見たりIRに会っても本当の姿は分からない。業界団体の集まりに潜入する、社長不在の日に現場の社員に会いに行く、来客用ではなくて工場の社員用のトイレに入る、お店にお客として行く、転職サイトの口コミを見る・・・
などあらゆることをやり、多面的に情報を集める。

・最近は、いい会社の経営者が「いい会社候補」を紹介してくれるので、情報が勝手に集まるようになってきた。

・実際に投資する場合には、(新井さんの)独断で決めているわけではない。社員全員の賛成がなければ投資しない。

→ 「いい会社クラスタ」「鎌倉投信クラスタ」は、受益者としても感じます。鎌倉投信が触媒になって、投資先のリーダー同士がいいつながりを作り、相互に高め合ってさらなる変革につなげています。




●鎌倉投信から見た日本環境設計

・環境ビジネス=技術力と思いがちだが、鎌倉投信は技術は評価しない。それはどんな優れた技術も必ず次なる技術に塗り替えられるから。

・技術ではなく、仕組み(ビジネスモデル)、経営者の想い、イノベーションを起こす原動力、の3つの要素がとても大事。

・いい経営者と普通の経営者の違いは「覚悟」。いい経営者は決して言い訳せず「何とかする」。

ベンチャーは、モノもカネもなく、「人」しかいない。だから「何をやるか」よりも「誰がやるのか」がポイント

・日本環境設計のことを「技術の会社」と考えると誤解する。消費者、小売業者を巻き込んだリサイクルの「商社」であり、原材料や2次製品をつくる「メーカー」でもある。

→ 優れた技術は大事です。でも、鎌倉投信が日本環境設計に投資したのは、古着をバイオエタノールに変えられる技術力ではなく、消費者参加型の回収モデルの素晴らしさと、多くの大企業を巻き込んで業界横断的なリサイクルネットワークを作った岩元社長の行動力に注目したからこそ、と改めて分かりました。
岩元社長の「技術はカートリッジ」にすぎない、という言葉は印象的でした。

●社会性と事業性

・社会的にいくらよい事業でも、利益が出せなければ持続しないし「きれいごと」で終わってしまう。

・大事なのは、社会性と事業性のバランスをどう取っているか。「利益が第一」という考え方は順番が間違っている。モノが飽和し、課題先進国の日本では、短期的な利益優先ではなく、社会性の強い会社が長期的には残っていく(目的としての効率ではなく結果としての長期効率)。だからそういう会社に投資をしている。

●鎌倉投信の今後

・「結い2101」の残高は230億、年度ベースで黒字化もし、「いい会社」のリスト化はかなりできてきた。

・次のフェーズとしては、今15,000人の顧客が10万人、20万人と増えれば、いい会社を「社会が選ぶ」仕組みができると思っている。そして、会社だけでなく、NPOへの寄付を通じて「いいNPO」のリスト化も考えている。

→ NPOへの寄付という話にはつい反応してしまいました。きちんと社会課題を解決しているNPOにお金がまわるべきなのはその通りで、企業だけでなくNPOを支える金融、はあるべき方向性だと思います。

●Bコーポレーションについて

・Bコープは、社会全体を底上げしていく意味ではいい取り組みだが、鎌倉投信が同じようなこと(企業の社会性認証)をやるつもりはない。

・会社は100社100様。経営論や他社の真似をしてもうまくいかない。全ての会社にはそれぞれのあるべき「いい会社」の形がある。

「いい会社」は「外れ値」で、何かの要素が飛びぬけて優れている。なので、Bコープのような数字での画一的な評価には限界も感じる。鎌倉投信は、今までどおり「とがった会社」を選んでいきたい。

→ WIREDの特集の中で、アメリカのBコープを取り上げていたことからこの話になったのですが、新井さんはおそらくこう言うだろうなと思うとおりの回答でした。代表の鎌田さんも同じことを言っています。ただし、新井さんは決してBコープを否定しているわけではないとも言っていました。


ひさびさに新井さんの熱いトークが展開して面白かったです。岩元さんにももっと時間をあげたいぐらいでした。

いい会社は数字では語れない、というと誤解されますが、鎌倉投信は、ファンド(結い2101)の運用成果(目標リターンやリスク)についてはきちんと数値目標を掲げています。日々の運用(売り買い)やリスクコントロールについてもルール化され、恣意的な要素は徹底的に排除されています。

投資先の評価を客観化・数値化できないのか的な意見が、以前の受益者総会でもあった記憶があります。
もちろん、Bコープのような点数付けや、SROIのような社会的インパクト評価も、社会的企業を育てるために大事です。でも、鎌倉投信には、今のやり方が合っているし、とことん貫いてもらいたいと思います。