セルフ・リライアンスという生き方

自立した個人として豊かに生きる。長期投資のメモ。

「投資信託をもうちょっと身近に感じてみよう」勉強会・第1回(三井住友アセットマネジメント・木村忠央さん)

「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ」のスピンオフ勉強会に参加しました。ファンドマネージャーから直接話を聴き、運用会社の価値観を知ろうという企画です。

第1回のゲストは、三井住友アセットマネジメント(SMAM)で、「三井住友・中小型株ファンド」などを運用する木村忠央さん。

絶対的な目標株価設定と「相場に流されない」運用

3年後までの業績予想に基づく収益還元ベースの「絶対的な」目標株価を設定し、マイナス20%で買い、プラス20%で売るというルールを徹底しています。相場に流されないために運用方針を仕組み化して日々の運用に組み込んでいます。

PERのような相対的バリュエーションでは、相場が過熱するとつい目標株価を上げたくなります。木村さんは、目先のリターンを追って運用方針を見失い、失敗したファンドマネージャーをたくさん見てきました。その経験が今のルール化につながっています。

※収益還元による評価は、割引率の設定次第で目標株価が大きく変わります。その点を質問したところ、一般的なβに基づく方法ではなく、各社のビジネスモデル、健全性、経営者など5つの要素で算定する割引率モデル(リスクプレミアムを積み上げるイメージかなと思いました)を用い、できるだけ恣意性を排除しているそうです。

会社選びは「四季報」で

アクティブファンドの目論見書によくあるような、ありきたりな銘柄選定プロセス(1次スクリーニング→詳細調査→投資ユニバース・・・)は、木村さんは取りません。

スクリーニングを否定はしていませんが、過去実績よりも成長性重視の中小型株の場合、有望企業を見落とす可能性があり逆効果です。

どうやって企業を選ぶのか?と言えば、「ありとあらゆる」方法で情報を集めますが、木村さんが特に重視しているのが会社四季報。
四季報は3冊買って、会社、移動中、トイレの中でも隅々まで目を通しています。四季報を全て頭に入れていると、何か情報が入ってきたときに、「これとあの会社のビジネスはつながるかも」という瞬発力がつくそうです。目をつけた会社は徹底的に取材し、投資候補になっていきます。

3年先、5年先を見ているので、共通要素としては景気や為替に影響されにくい事業、参入障壁が高い事業を手がけ長期的に競争力がある企業が選定されているようです。サービス業、小売・卸売業の比重が高くなっています。

等金額ポートフォリオ

当ファンドの大きな特徴の一つが、「等金額ポートフォリオ」です。
現在の組入銘柄数は77銘柄で、流動性等による多少のウェイト付はあるものの、原則1.5%ずつ均等に保有します。

「どの銘柄がいつ上がるかなんて分からない」と木村さんは言います。だからこそ、全銘柄同じ割合です。
これは、四季報の話にも通じますが、規模、知名度、時価総額などに関係なく、全ての会社を公平に評価して投資しているとも言えます。

2003年の設定以降の平均売買回転率は0.17と低く、平均保有期間は5年以上と長めです。



運用ポリシーにこだわる作り手

運用方針の明確さと、「これしかやらない」「これだけをやり続ける」確固としたポリシーが伝わってきました。話もお上手で、大手系にも魅力的なファンドマネージャーがいるんだなと、認識を新たにしました。
個人的にも持ってみたいファンドです。

三井住友・中小型株ファンドよりも後輩の独立系と比較するのは申し訳ないのですが、中小型株への着眼は、ひふみ投信(レオス)の藤野さんにも通じますし、等金額ポートフォリオや運用のルール化、回転率の低さといった部分は、鎌倉投信とも共通する部分があって面白いと思いました。

今日のひとこと:「運用会社はパフォーマンスを売っているわけではない。運用ポリシーを売っている。」は木村語録としてぜひ残したいです。