コモンズ投信の「コモンズSEEDCap」の今年の最終候補者3人と、渋澤健さんの対談イベントに参加しました。
コモンズSEEDCapは、コモンズ30ファンドの信託報酬の1%を寄付する、コモンズ投信創業時から続く寄付プログラムです。第1回の寄付額はわずか4万円でしたが、今年は73万円にまで増えました。
個人的にも、過去にSEEDCapの応援先に選ばれた団体(かものはしプロジェクト、3keys)のサポーターになったりと、ソーシャルセクターに関わるきっかけになりました。
今年の候補者は次の3人の方々です。
・一般社団法人more trees 事務局長 水谷伸吉さん
・認定NPO法人Homedoor 理事長 川口加奈さん
・NPO法人Afrimedico 代表理事 町井恵理さん
●一般社団法人more trees 水谷伸吉さん
more treesは、森林保全や国内の木材の利用促進、林業を中心とした地域づくりを行う団体です。坂本龍一さんが中心になって立ち上げました。
世界では、現在1秒にサッカー場一つ分の森林が失われています。この原因の一つが、われわれの生活に深く関わるパーム油や、コピー用紙生産のための森林伐採です。
途上国の森林が失われる一方、国内の森はというと、このようにして伐採された安い輸入木材に市場を奪われ衰退し、林業の担い手は減り、戦後の植林で伐期齢を迎えた木が間伐されず、森は荒れています。
この矛盾を解決するため、海外での植林や森林保全とともに、国内の人工林の間伐や、木材の付加価値を高める商品化などを行っています。
木材は、加工されたり紙になってしまうと、基本的に出どころが分かりません。植えるだけでなく、合法木材の利用推進も行っています。
以前、六本木のミッドタウンで、建築家・隈研吾さんとコラボしたつみ木プロジェクトを見ました。森について知るには、木を身近に感じることが第一歩だと思います。
●認定NPO法人Homedoor 川口加奈さん
Homedoorは、大坂を拠点に、ホームレスの人たちの就労支援・生活支援を行うNPOです。
川口さんの話をお聞きするのは3回目です。最初は2014年の「コモンズ社会起業家フォーラム」、2回目は2015年の日経ソーシャルイニシアチブの表彰式です。今は認定NPOにもなり、事業はその頃より拡大しています。
14歳で炊き出しに参加したという川口さん。19歳で起業し、ホームレスの“おっちゃん”達の特技、自転車修理に注目し、シェアサイクル事業(HUBchari)を始めました。
今は、「&ハウス」(アンドハウス)という路上脱出支援のためのコミュニティスペースを立ち上げたり、就労支援から生活・住宅面のサポートまで手がけます。
川口さんは若いのに、あるいは若いからこそ、とても真っ直ぐな想いが伝わってきて、聴いていてとても心をつかまされます。川口さんは、ホームレスに対する自己責任論や偏見をなくし、みんなが自分ゴトとして考えてもらえる社会を目指しています。いわゆる弱者やマイノリティーと呼ばれる人たちとの関わり方に共通する大切な考え方だと感じました。
●NPO法人Afrimedico 町井恵理さん
町井さんのAfrimedicoは、アフリカのタンザニアで、日本の置き薬をモデルにしたアフリカ版置き薬事業に取り組むNPOです。
ビジネスの発想を取り入れて、アフリカの基礎医療の改善を目指す取り組みに斬新さを感じて、Readyforのクラウドファンディングも応援しました。
先日は、浜松町のアフリカ料理のお店で、二周年の報告会にも参加。
(関連記事)NPO法人AfriMedicoの二周年記念&タンザニア置き薬進捗報告会
2015年の設立から、2年間の調査と準備を経て、いよいよ先日、タンザニアのブワマ村で置き薬ステーションが稼働開始しました。
そもそも置き薬という文化のない現地の事情もふまえ、置き薬は各家庭ではなく、村に設置したステーションで管理します。置き薬ステーションは、健康相談などセルフメディケーションの啓蒙拠点にもなります。
認可の問題もあり、今は現地の薬を使っていますが、ゆくゆくは日本の薬を置くことを目指します。
●渋澤さんとのトーク
後半は、コモンズ渋澤さんが進行役でのトークセッションでした。
(Q)社会起業家はいい意味で「勘違いを起こした人」。どうして今の事業をやらなきゃ!と思ったのか?そのきっかけは?
(水谷さん)
学生の頃、ボルネオの熱帯雨林のスタディツアーに参加した。そこで、ジャングルが禿山になるほど伐採しまくっている現実を見た。とは言っても、同時にそれが現地の雇用を生んでいる面もあり、一方的に「伐採するな!」と言えない難しさも感じたこと。
(川口さん)
同じ学校に通う友達が、親から「(釜ヶ崎がある)新今宮乗り換えは危ないからやめなさい」と言われていて、「新今宮には何かある」と思って、ホームレスに興味をもち、炊き出しボランティアに参加したこと。
(町井さん)
ニジェールでボランティアをしている時、ある村の母親から、子どもの薬を買うために200円欲しいと言われたけれど、あげなかった。再度その村を訪問した時にはその子は亡くなっていた。かといって、ただお金をあげればよかったという問題でもない。根本的な解決につながる「持続可能な仕組みづくり」が必要とその時に感じた。
(Q)世間の常識が「違う」と感じること、なかなか伝わらないと思っていることは?
(水谷さん)
日本人は木を植えること(植林)がいいこと、木を切るのは悪いこと、というメンタリティーがある。これを変えないといけない。
(川口さん)
「ホームレスは怠けている」「自己責任」という考え方。でも、例えばあるオッチャンは、1日10時間空き缶集めしている。結構働いているのに1日1,000円しか稼げない。また、大阪市では年に200人以上が凍死というデータもある。実態が知られていない。
(町井さん)
置き薬は、薬を提供できるだけでなく、病気の予防(セルフメディケーション)のための教育の効果もあるということ。
(Q)事業を進めるには共感だけでなく「共助」が大切。今一番不足している、補ってもらいたい部分は?
(水谷さん)
発信力がまだ不足している。事実を知れば、消費行動は少しずつ変わるはずなので、事実を伝える力をもっとつけたい。
(川口さん)
支援したおっちゃんが、「あそこに行けば何とかなる」と、別のおっちゃんを連れてきてくれる。支援した人が自分たちの活動をサポートしてくれているのが「共助」だと思う。
(町井さん)
日本の製薬会社とのパートナーシップ。日本企業は、アフリカをフロンティアのさらにその先のマーケットと思っていて、まだアジアに重点を置いている。未開拓の市場だからこそ、アフリカは日本企業が先行者になるチャンス。
他にも、参加者からの質疑応答に皆さん丁寧に答えてくれました。
最後のまとめとして、コモンズ投信の馬越さんから、大事な質問でした。
(Q)寄付を受け取る立場からみた「寄付」の意味は?
(水谷さん)
寄付は血液のようなもの。持続可能な活動のためには不可欠。ソーシャルセクターで優秀な人材を確保し、成果を挙げるためにもとても大切なもの。
(川口さん)
寄付者はHomedoorを一緒に運営してくれる「仲間」。寄付者がHomedoorのことを「ウチの団体」と言ってくれたのがとてもうれしかった。
(町井さん)
以前は、お金は「無機質」なものと思っていた。なので、他人からお金をもらうのは正直イヤだった。しかし、クラウドファンディングを通じてそれが変わった。寄付は「愛のあるお金」になった。お金がパワーになることがとてもよく分かった。
3人の回答には、寄付の本質が込められていると思います。
寄付は社会課題を解決するための血液であり、寄付者は事業を一緒に進める仲間です。そして、寄付は意志あるお金です。町井さんの「愛のあるお金」という言葉にはちょっと感動しました。
今年は、環境問題、ホームレス支援、アフリカ、と全く異なる3つで迷いましたが、以前クラウドファンディングでも応援したAfrimedico・町井恵理さんを推薦しようと思います。
6月末に、私たち受益者からの推薦意見も参考に、応援先が決定します。
今年から、フォーム形式で簡単に推薦できるようになったので(コモンズからメールで案内がきています)、受益者の方はぜひ推薦に参加されてはいかがでしょう?(6/28締切です)