セルフ・リライアンスという生き方

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企業と経営者の本質を見極める難しさ~鎌倉投信が全売却したテラの問題

鎌倉投信が昨年12月の運用報告でテラ(2191)を全部売却したと伝えました。

テラは、樹状細胞ワクチンを使ったがんの免疫療法の普及開発を行っている医療ベンチャーです。
鎌倉投信は、2013年から投資していました。また、ひふみ投信も以前から投資しており、2017年にはファンドとして第三者割当増資を引き受け話題になりました。 

そのテラが、去年の8月に、当時代表取締役だった矢崎雄一郎氏による安値での大量株式売却や、緊密先の医療法人との不透明な関係に起因していた不適切取引が明るみになり、四半期決算延期の事態に陥りました。インサイダー疑惑や上場廃止は免れたものの、株価は低迷しました。
鎌倉投信が全売却に至ったのもこの件がきっかけです。

レオスは投資先としてテラをもともと推しており、会社見学もやったりしていましたし、鎌倉投信が投資したということもあって、以前矢崎前社長の講演を聞いたことがあります。その時はもちろん、優秀な医師で経営者という印象しか持ちませんでした。

不祥事から半年近く経って今さら感ありますが、全売却に至った理由を理解するためにも、一連の問題について、昨年9月の第三者委員会の調査報告書を読んでみました。

第三者委員会の調査報告書受領に関するお知らせ(PDF)

約70ページで読み応えがあります。矢崎氏の金策に走る姿と、テラのガバナンス無視のずさんさが生々しいので、鎌倉投信やひふみ投信の受益者さんにはぜひ読んでほしいと思います。

報告書で問題が指摘されている主な取引です。当事者が多く複雑ですが、収益低迷の中で上場廃止を何としても回避し、さらにワクチン承認のための開発資金を調達するため、何でもありの状態になっていたことが分かります。

・矢崎氏の持株の低廉大量売却とダミー会社を使った緊密先医療法人への迂回融資(2017年)
・矢崎前社長による金商法違反&社内規定違反の再度の株式売却(2018年)
・取締役会無視の不透明な増資スキームとFA選定問題(2018年)

これらは全て、矢崎前社長の事実上コントロール下にあり、創業来の緊密取引先であった医療法人の資金繰りを助ける目的がきっかけになっており、矢崎氏と同法人の不透明な関係性を表にできなかった事情が背景にあります。

第三者委員会の聴取の直前に矢崎氏がLINEを削除したりと、解明できていない部分も多く、闇が深いです。

テラがこうなってしまった理由について、第三者委員会の結論です。主なものを3つ。
・矢崎氏のコンプライアンス意識の欠如
・ガバナンスの脆弱性
・緊密先医療法人との関係の不透明性
矢崎氏は上場企業の代表者の資格はない、と言葉強く批判しています。

その後、矢崎氏はインサイダーなどの罪に問われたりすることはなく、テラも結局上場維持基準をクリアし今に至ります。多くの人の命を救えるかもしれない素晴らしい技術を持っているとしても、これだけ投資家やステークホルダーを軽視し続けた会社が市場に居続けていいのか、と素朴に感じました。矢崎氏は代表から降りましたが、取締役には留まっています。これも疑問で、鎌倉投信の売却も当然です。

巨額の資金調達や関係する医療機関との資金の流れなど、会社経営に重大な影響を及ぼす決定事項について、(形式的瑕疵はともかく、)実質的に牽制機能を働かせながら十分な議論がなされていたとは判断できず、「いい会社」を目指す、とするうえで必要不可欠である、意思決定に至る企業体質そのものへの反省とその改善策の明示はなかったと考えます。
(結いだより 12月5日号)

そして、アクティブファンドを保有している個人としては残念ですが、運用会社が、経営者や会社の本質を見極めるには限界もあることをつくづく感じました。報告書を読めば読むほど、特に、一連の問題の端緒となった矢崎氏と医療法人(医創会)との怪しい関係は、業界内をきちんと取材すればうすうす分かったのでは?と思ってしまいますが、起こった事象を後から見返せば言えるのであって、そんな簡単なものではないのでしょうね。

もちろん、投信はこういう企業が1社出てもポートフォリオがあまり痛まないのがいいところではあるのですが。(レオスはひふみ投信の決算(昨年10月1日)時点ではマザーファンドの0.1%程度保有していますが、現在どうなっているかは分かりません)

鎌倉投信やレオスには、こうした投資先ができるだけ出てこないよう、投資する前の調査はもちろん、投資した後の投資先のモニタリングや経営者との対話をさらに深化させるべく、反省すべきは反省し今後の糧にしてほしいです。